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徳之島におけるさとうきび機械化の現状と課題

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最終更新日:2016年8月10日

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徳之島におけるさとうきび機械化の現状と課題

2016年8月

元鹿児島大学農学部教授 宮部 芳照
 

【要約】

 徳之島は奄美群島最大の耕地面積を有し、さとうきびを中心にした畜産、園芸作物などとの複合経営も多い。また、ハーベスタによる収穫面積割合は約94%で県内で最も高い地域である。機械化に関しては、機械の改良・開発に対する農家の要望や後継者・担い手の育成、規模拡大・農地集積、受託組織の育成と受託作業の分業化、管理作業の遅れによる単収低下、機械稼働率の向上と機械費の低減、採苗・調苗を含む植え付け作業の機械化、労働力分散に対応した栽培体系の確立などの課題が山積しており、これらについて今後の在るべき方向を検討した。
 

はじめに

 前月号の喜界島におけるさとうきび機械化の現状と課題についての報告に続き、今回は徳之島のさとうきび機械化に関する現地調査を基に、現地が抱える機械化の問題点を探り、今後の機械化体系の在り方や課題について報告する。
 

1. 徳之島の農業の概要

 徳之島は鹿児島市から南南西約492キロメートルに位置し、島の周囲約89キロメートル、総面積約2万4800ヘクタールの奄美群島の中で奄美大島に次ぐ大きさの島であり、徳之島町、天城町、伊仙町の3町からなっている。また、耕地面積は約6890ヘクタールで群島最大の島であり、年間平均気温約22度、降水量約1900ミリメートル、日照時間約1800時間の四季を通じて温暖な亜熱帯性気候で花崗岩と隆起珊瑚礁を基盤にしている。農家一戸当たりの耕地面積は約250アールであり、島中央の山岳部の裾野に平野が広がっている。栽培作目はさとうきびを中心にばれいしょ、カボチャなどの野菜やマンゴー、畜産(肉用牛)などとの複合経営が行われており、県から平成24年5月にばれいしょが「かごしまブランド産地」に指定された。

 さとうきびの収穫面積は平成25/26年期で約3200ヘクタール、栽培農家数約3100戸、生産量約14万4000トンで10アール当たり収量約4.5トンである。栽培型別の作付面積の構成比は株出し70.7%、春植え20.5%、夏植え6.8%であり、品種別の収穫面積の構成比はNiF8が49.2%、Ni23が25.9%、Ni22が12.0%、Ni17が5.0%、その他7.9%である。また、25/26年期のハーベスタの稼働台数は156台(保有台数169台)であり、その他の主な栽培・管理機械の稼働台数はプラウ116台、マニュアスプレッダ42台、プランタ60台、ブームスプレーヤ34台、カセットロータ111台、株揃え機85台、株出し管理機25台、心土破砕機45台である。なお、ハーベスタによる収穫が全収穫面積に占める割合(機械収穫率)は約94%で県内で最も高い。
 

2. 機械化の現状と課題

(1)ほ場基盤整備およびかんがい施設の整備状況
 基盤整備の計画面積5480ヘクタールのうち80.1%に当たる4389ヘクタールの整備が進んでおり、さとうきび収穫面積は耕地面積の約55%を占めている。平成27年度から徳之島ダムの一部通水が始まり、33年度を目標に全面通水(受益面積は3451ヘクタールで全耕地面積の約50%)の予定である。徳之島ダムによる畑地かんがい施設の有効活用によって夏場の干ばつ対策、台風時の塩害対策などの気象災害に強い生産基盤の整備が進んでおり、畑地かんがい用水の活用は単収向上に大きくつながることが期待されている。このように畑地かんがいの整備に併せた面的整備も着実に進んでいるが、整備済みほ場でも区画面積の狭い傾斜地が点在している。なお、畑地かんがい未整備地区には散水車などによるかん水対策が必要である。

(2)機械の改良・開発などに関する要望と課題
 機械の改良や開発についての農家からの要望や課題などは以下の通りである。

 (1)機械コストの低減のために、小型で汎用(はんよう)性のある高性能管理作業機の開発を望む声が多い。

 (2)植え付け作業の省力化のために、ハーベスタ採苗茎を使用して、畦立てから植え付け、施肥・施薬、覆土まで一工程で作業できる高性能なビレットプランタの開発が望まれている。 

 (3)半履帯トラクタに装着して、精度の高い株揃え作業ができる株出し管理機の導入を望む農家が多い。

 (4)中耕・培土、除草、防除作業などの中間管理作業を組み合わせた、いわゆる機械の複合化をさらに進めた作業機の研究開発が望まれている。

 (5)V字型深植え作業機の開発および1芽苗用の高性能な自動補植機の開発を望む農家が多い。

 (6)半自動型2芽苗投入式プランタでは、補助者による苗の投入(苗箱から苗を取り出し、植え付け溝へ苗を投入する作業)の自動化が強く望まれている。

 (7)全茎式および2芽苗投入式プランタは最低でも2人の作業者が必要であり、特にビレットプランタによる作業は採苗作業の労働負担の面から大規模なハーベスタ農家のみの利用になりかねないという声がある。30〜40馬力級トラクタ用で1人でも作業可能な植え付け機の開発を望む農家が多い。

 (8)現在、全茎式プランタの採苗作業はほとんどが人力であり、多くの時間を要している。刈り取り、採苗作業を含めた植え付け作業能率は一日当たり約10アールであり、また夏植え時期の採苗作業の労働負担はさらに大きい。今後、規模拡大などにより人力確保が困難になった場合、採苗・調苗作業の省力化・機械化は不可欠であり、採苗から植え付けまでの機械化一貫作業体系の確立は急務である。

 (9)将来、規模拡大が進んだ経営体では、労働力確保の面から、「ハーベスタ採苗+ビレットプランタによる植え付け」への作業体系に徐々に移行していくものと予想される。

 (10)現在稼働しているハーベスタは導入後、10年以上経過した機種が多く、今後更新時期を迎えることになるが、更新費用の準備がほとんどされてない農家が多い。
 

 

 

 

(3)機械の稼働時間、作業能率
ア.トラクタ作業

 トラクタの稼働時間および作業能率は馬力、作付け規模、ほ場区画・形状、土壌条件、対象作物などに大きく左右される。徳之島におけるトラクタ作業は個人から法人までの経営体の規模によって小型から大型までの15〜100馬力級の機種が導入されており、年間の平均実稼働時間は約200〜500時間(15〜30馬力級では約300時間)である。これは平均的な稲作農家の200〜400時間に比べるとやや長い。また、平均作業能率はロータリ耕(65馬力級トラクタ、耕幅240センチメートル)で1時間当たり0.3ヘクタールであり、これは平均的な水田、畑作農家の同0.4〜0.5ヘクタールに比べると土壌条件などの差が影響しており、やや低い値である。

イ.ハーベスタ作業
 ハーベスタの稼働時間および作業能率はトラクタ作業の場合に加えて作物の倒伏状態、単収などの生育状況にも左右されるが、徳之島の場合、年間の平均実稼働時間は500〜1000時間(小型ハーベスタで平均600時間程度)である。これは平均的な稲作農家の米麦コンバイン(刈り幅2.0メートル)の年間の平均実稼働時間50〜80時間からすると、収穫期間の長さ、作物形状などの違いにより大幅に長い。また、平均作業能率は1時間当たり0.05〜0.08ヘクタールであり、同じく稲作農家の同0.4ヘクタールからすると、ほ場区画・形状、作物形状などの差により大幅に低いといえる。

ウ.その他の機械作業
 植え付け作業では全茎式プランタ(1畦用)の平均作業能率は1時間当たり0.10〜0.15ヘクタールであるが、刈り取り、ハカマ落としなどの採苗・調苗作業を入れると1日当たり約0.1ヘクタールになり、植え付け前の準備作業に多くの時間を要していることが分かる。防除作業ではブームスプレーヤ(散布幅4.2メートル)の平均作業能率は1時間当たり0.5ヘクタールであり、また株出し管理機の作業能率は同0.2〜0.3ヘクタールである。これらの作業能率は一般的な水田・畑作における防除作業や中間管理作業と同程度といえる。
 

 

 

 

(4)機械費
 徳之島におけるさとうきび作の場合、耕うんから中間管理、収穫作業までの各種の機械(トラクタ、プランタ、株出し管理機、ハーベスタなど)に係る機械費(償却費や燃料費、修理費などの維持管理費を含む)は全生産費(機械費、肥料費、農薬費、種苗費、労働費、収穫費など)の中で約3〜4割を占めている。特に、導入後10年程度経過したハーベスタの修理費に年間70〜120万円(オーバーホールには300万円程度)掛けている農家もある。一般にわが国の平均的な稲作農家の場合、全生産費のうち機械費の占める割合は約20%程度と言われているのに対して、機械の性能、対象作物の性状、土壌条件などの違いで単純な比較はできないが、約1.5〜2.0倍程度高い。これらの機械費の低減は全生産費の削減にとって大きな要素になるものであり、そのためには各種機械のメンテナンスを徹底させることによる修理費の低減、長寿命化のための機械補修、ほ場整備や共同利用による機械稼働率の向上、機械の汎用化、機械リースの在り方、さらには機械構造の単純化、耐久性の向上、機械製造コストの低減など取り組むべき課題は山積している。

(5)受委託作業
  (1)受託作業面積が全作業面積の約3〜4割を占める農家・組織が多い。なかには35〜40戸を対象にし、受託面積が7〜8割を占める農家もある。委託農家は60〜70歳代が多い。

 (2)個人農家あるいは組織構成員の持つ作業面積は増えつつあり、受託農家・組織の負担が大きくなっている。自作ほ場の収穫作業にも追われ、管理作業の遅れや雨天時に無理をしながら収穫作業を行っている農家もあり、これが単収低下の原因につながっている。
 
 (3)収穫、管理作業の他に植え付けまで含めた作業を委託希望する農家も多いが、現状以上に受託面積を増やせない農家・組織が多いのも現実である。しかし、今後はさらなる受託面積の確保、拡大が必要になってくる。

 (4)収穫、管理作業および植え付け作業時期の重なりやオペレータ不足による受託作業の遅れが出ているところが多い。オペレータおよび機械の保守管理のできる人材の育成が急務であると同時に制度資金を活用して老朽化した農業機械の更新も必要である。

 (5)現在、ハーベスタ受託作業の料金設定は単収や作業効率の程度などによるほ場条件の良否によって、A、B、C、Dの4ランクに格付けされているが、これらの設定条件の見直しが必要になってきている。

 (6)製糖工場の1日当たりの原料処理量を確保するために、受託農家・組織の負担はますます増大している。受託面積の拡大に限界がある現状とはいえ、今後は収穫、株出し管理、植え付け作業の分業化とオペレータの確保は早急に実施、推進されるべき課題である。この受託作業の分業化はアタッチメント交換の不要などによる機械作業の効率化や確実な適期作業の実施につながる。

 (7)分業化に加えて、特に株出し管理と植え付け作業を行う受託組織の育成は急務である。そのためには、例えば株出し管理、植え付け作業の時期は自給飼料の収穫作業がなく、畜産農家が保有するトラクタに余力があるため、これを活用した受託作業など考えられる。

 (8)高齢化が進む中で意欲ある担い手、後継者の育成はもちろん必要であるが、さとうきび作振興のためには、年間を通して安定経営の可能な受託組織の育成は欠かすことができない。そのためには、業務の多様化および受託作業の効率化が重要である。

(6)規模拡大および農地集積
 (1)高齢化、後継者不足の中で経営の安定化を図るためには規模拡大、農地集積による機械化の推進が不可欠である。また、規模拡大は担い手、新規参入者のための経営安定につながる。しかしながら、受託作業制度が徐々に浸透してきていることもあり、農地集積・集約化が思うように進まないのも事実である。高齢化などに伴う離農者の農地は主に地縁・血縁者へ貸与する傾向が強く、また古来代々引き継いできた農地に対する農家の強い思いや登記上の所有者死亡による相続未登録農地の存在なども農地集積の大きな障害になっている。権利関係の複雑な農地貸借の簡素化のために実効性のある制度改正が急がれる。
 
 (2)規模拡大、農地集積を図るには農地中間管理事業を積極的に利用する必要があり、また農地中間管理機構の果たす役割は大きい。なお、機械作業の効率性を高めるためには、現在の一筆30アールの基準区画面積ではやや狭いと考える。

 (3)規模拡大の進捗状況は担い手農家の確保状況によって地域差が出ているが、今後は全島的に農地集積を進め、大規模農業法人の創出とこれら法人と連携した地域営農体制の確立が必要である。

 (4)今後、より一層の生産性向上を追求し、競争力強化を図るためには規模拡大、農地集積による大規模経営化は必然的な方向であるが、同時に現存する小・中規模経営農家の作業体系を支える農地施策も必要である。農地状況や営農形態もいろいろ在る中で、これらの農家の存在が地域活動の中核を担っている例も少なくない。

(7)機械の共同利用
 (1)機械の稼働率向上と機械コストの削減を図る大きな要素として、機械の共同利用と共同作業は欠かすことができない。
 
 (2)多くの営農集団ではハーベスタ作業による機械の共同利用は進んでいるが、他の作業については機械の使用時期の競合などにより、未だ進まないのが現状である。

 (3)効率的生産の難しい小規模農家は可能な範囲で集落単位の共同体を形成し、各種機械やかんがい施設などの共同利用、共同作業を進めることによって生産性向上を図る必要がある。

 (4)後継者不足に悩む農家は地域の農業法人と連携した機械の共同利用を進め、また共同利用意識を高めることも重要である。
 
 (5)作業に余力のある各種機械の島を越えた共同利用も考える必要がある。

 (6)機械の共同利用、共同作業で生まれた余剰労働力は他の農作物栽培などに向け、収益性の向上と経営安定につなげる工夫が必要であろう。

  

(8)後継者、担い手の育成
 (1)比較的に後継者が確保されている地域もあるが、全島的に後継者、担い手の不足は深刻である。一農家で労働力を補うために、県外から男性作業員(1人)を2〜3年契約、1日8時間勤務で雇用しているところもある。

 (2)高齢化により生産者の減少が進みつつある集落は、意欲ある担い手を中心にした集落営農体制を早急に進める必要がある。

 (3)現在、島内に営農集団が75組織存在しているが、ほとんどがハーベスタ導入による営農集団であり、これらの多くの集団は高齢、兼業農家の収穫、管理作業を受託しながら地域のリーダー的存在として活躍している。例えば、平成27年に設立された「徳之島さとうきび新ジャンプ会」は大規模な経営組織や担い手の育成、確保などに積極的に取り組んでいる。

 (4)さとうきびと畜産、園芸作物などとの複合経営を視野に入れた後継者、担い手の育成を行っていくことが必要である。夏場の換金作物の導入など、さとうきびを中心にした金銭的に魅力ある経営が必要であり、これがオペレータなどの年間雇用と生産者の所得向上につながることになる。

(9)機械化体系に対応した栽培法など
 (1)現在の基準畦幅1.20メートルを1.10〜1.15メートルに狭くとり、茎数増加(10アール当たり約3〜4畦分位の増加)による単収アップを狙う農家がある。機械作業の中でも、特に栽培管理やハーベスタ作業にあまり支障なく作業ができるということで作付けを行っているが検討を要する。

 (2)長年の念願であり、年月を要する難しい課題であるが、栽培管理、収穫時期の作業分散可能な品種の開発が切に望まれる。

 (3)適期管理、適期植え付け作業の徹底は農作業の基本であり、これらの遅れが初期生育の遅れ、単収低下の大きな要因になっているのは明白である。昨今、栽培管理が不十分なほ場が多く見られるのは、ハーベスタ作業が主流になったことが主な原因であるとする旨もあるが、これは理由にならない。高齢化を含む人手不足、作業の競合によって多くの農家の管理、植え付け作業の遅れと不履行が管理不徹底を招いている主な原因である。適期作業の履行は機械の作業効率の向上にもつながり、機械操作もしやすい。農家の適期作業に対する意識の向上と作業の徹底および健全な受託組織の育成、オペレータの育成は急がねばならない。

 (4)培土作業による倒伏防止が機械収穫ロスの低減に大きくつながるが、株出し茎のハーベスタ収穫作業の場合は、機械操作の面からすると、高培土よりむしろ平たん培土、深植え栽培の方が収穫茎の回収もよく、機械操作がしやすいという農家がある。

 (5)単収低下の防止と規模拡大を図るためには、慣行の収穫作業と株出し管理、春植え時期の競合を避け、奄美地域における栽培体系として「夏植え+株出し体系」への移行を早急に進めるべきでる。これにより労働力の分散と機械使用時期の分散による機械の稼働率アップにつながる。また、降雨が少ない時期の夏植えは作業能率の向上と畑地かんがいを利用することによって発芽率の安定が得られ、気象災害の軽減による生産性の安定にもつながる。現在、徳之島支場においては夏植え後の多回株出し栽培技術の確立に向けた試験が鋭意行われている。

 

 

(10)その他
 (1)メリクロン苗・1芽苗の安定供給を図り、新植 用・補植用苗への活用促進と早期採苗体系の確立が強く望まれる。
 
 (2)ほ場条件、栽培型に適した奨励品種の植え付けとハーベスタ収穫作業体系を前提にした品種の選択が必要である。

 (3)新しい夏植え面積の拡大と同時に、特に夏植えほ場の土作りの推進が必要である。

 (4)多岐の病害虫被害や獣被害に対しては、継続した総合的対策を徹底的に行う必要がある。また、外来雑種(リニアグラス)対策も急務である。

 (5)現在、ハーベスタ収穫による作業能率の向上で5ヘクタール以上の大規模経営体が84戸(平成17年に比べて約2倍強)に増えたが、今後は採苗・調苗作業を含む植え付け機械化作業体系の確立が急がれる。また、採苗ほ場の確保と補植作業の徹底も必要である。

 (6)農業の基本である「土作り」に対する農家の意識をさらに高めること。堆肥の連用、緑肥作物のすき込みなどの有機物の投入は土作りに不可欠であるが、化学肥料のみを施用する農家が多く、一般的に堆肥の施用が少ないのが現状である。過剰な化学肥料の施用を避け、有機質肥料の施用や側条などの部分施肥による環境に優しい土作りにも心掛けるべきである。また、緑肥作物の投入効果は雑草抑制、連作障害、表土流出の防止、土壌の物理性の改善に大きな効果があり、単収向上につながる。特に、新植時の堆肥の投入、ハカマのすき込み、夏植え前の緑肥作物の栽培は地力増強に効果が大きく、モアーによる裁断やプラウによるすき込みでさらに効果が高められる。

 (7)行政を含む関係者一丸となった集落単位の土壌診断分析と適正な施肥設計に基づく土作りの推進によって単収向上を図る必要がある(現在、土壌診断分析には迅速性と精度が飛躍的に向上した装置が実用化している)。

 (8)平成27年まで農業法人が各地域に配置していた担当員制度が諸事情により廃止されたが、今後の効率的な機械化の進展のためには再考の必要がある。また、燃料、肥料、農薬などの農業資材価格の高騰が生産農家の大きな経営負担になっているのは確かであり、相応な対策が必要であろう。

 (9)経営形態の選択として、20ヘクタール以上の規模拡大と資金や労働力の確保が可能であれば法人格の取得と大型機械の導入も必要になるが、経営面積が7〜8ヘクタール程度の規模であれば小・中型機械化体系を取り入れた経営形態で十分であると考える。その際は、より綿密な小・中型機械化体系指針の作成と大型機械に偏らない補助事業の実施が必要である。

 (10)徳之島町にあるTMRセンター(混合飼料製造施設)で大型牧草用収穫機械(最大刈り幅、約6〜8メートル)が導入されているが、将来、大規模なさとうきび収穫機械を新たに開発する際に参考になる機械であると感じた。

 

 

 

おわりに

 南西諸島のさとうきびの機械化は、必ずしも効率的な機械利用がなされているとは思えない。今回のTPP大枠合意は甘味資源作物にあまり影響ないと言われているが、将来にわたって果たしてそうであろうか。TPPの先にあるものは何なのか。今こそ、今後のTPPを視野に入れた機械の効率的な利用ができる機械化体系や栽培体系の在り方について検討する必要がある。

 そこで、1.5日の短期間であったが、今回は徳之島のさとうきび栽培・機械化の現状を調べ、問題点を探るために歩いた。以下に、今回、特に指摘したいことを列挙しておくと、(1)受託農家・組織の作業負担増による管理作業の遅れが単収低下につながる問題解決への早急な施策が必要である。(2)受託農家・組織の育成と受託作業の分業化(特に、収穫、株出し管理、植え付け作業の分業化による適期作業の推進)は不可欠である。(3)小規模農家同士の共同体化の推進および法人との連携による機械・施設の共同利用、共同作業が必要である。(4)高齢化、後継者不足の中で意欲ある担い手農家への農地集積と規模拡大による生産性、収益性の向上を図ること。(5)集落営農による高性能機械の共有化と機械稼働率の向上を図ること。(6)現存する小・中型機械化作業体系への支援策も必要である。(7)島内の各種機械の保有台数が全体的に多い。特に、耕種機械が多く、機械の共有化施策が必要である。(8)機械化作業体系に対応した栽培法(例えば、栽培管理および収穫時期の分散化が必要であり、奄美地域においては夏植え+株出し作業体系の推進など)によって機械稼働率の向上と安定生産につなげること。(9)大規模化に向けて、採苗・調苗作業の機械化と植え付け機械化作業体系の確立は必須である。同時に補植作業の徹底が必要である。(10)病害虫、獣被害に対しては、官民一体となった総合的かつ継続的な対策の推進が必要である。(11)さとうきびを中心にした畜産、園芸作物との複合経営による金銭的に魅力ある農業の創出が必要である。(12)土壌診断分析による施肥設計に基づく土作りと適期管理作業の徹底は単収向上の基本である。(13)製糖工場の老朽化した機械・施設類の更新。以上、解決・実行すべき課題は山積している。

 将来のさとうきび農業の振興のためには、これらの課題を一歩ずつ着実に解決し、低コスト化を図りながら生産性の向上と収益性向上を目指す以外にない。その際、TPPへの対応のみならず、各地域の特性を考慮した施策が必要である。

 一方で、現実のさとうきび政策をみると、外国産と国内産砂糖の内外価格差(外国産は国内産の約3分の1の価格)が糖価調整制度の枠組みの維持で調整されてきたのも事実である。しかし、島民のくらしを守り、島自体の存続のためには、島の命であり、基幹作物であるさとうきび生産にかかるコストは当然用意されて然るべきと考える。今後、糖価調整制度が維持され、さらに一般消費者の理解を得るためには、極端ではあるが、例えば機械類や原料茎の島間共有化なども考慮したさとうきび産業の形を変えるくらいの斬新で大胆な発想に基づく施策が必要であることを強調しておきたい。
 

 今回の調査に当たり、鹿児島県農業試験場徳之島支場 馬門克明氏、鹿児島県大島支庁徳之島事務所農業普及課 大田雄二氏、鹿児島大学農学部 柏木純孝氏をはじめ多くの関係者に情報提供とお世話になりました。ここに記して感謝申し上げる。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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