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4. 日本の主要輸入先国の動向(2017年4月時点予測)

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最終更新日:2017年5月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2017年4月時点予測)

2017年5月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2016年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が52.2%(前年比13.2ポイント増)、タイが47.7%(同8.3ポイント減)と、この2カ国でほぼ全量を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイは毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回は南アフリカを報告する。

豪州

2016/17年度の砂糖生産量はやや増加するも輸出量はやや減少の見込み
 2016/17砂糖年度(7月〜翌6月)のサトウキビ収穫面積は39万ヘクタール(前年度比3.2%増)とやや増加し、生産量は3550万トン(同1.9%増)とわずかな増加が見込まれている(表6)。 サトウキビの増産に加え、製糖歩留まりの向上も見られることから、砂糖生産量は523万トン(同3.3%増)とやや増加が見込まれている。一方、中国向けの減少などに伴い、輸出量は400万トン(同3.8%減)とやや減少が見込まれている。

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は3月7日、2016/17年度および2017/18年度の生産見通しを発表した。これによると、2016/17年度の砂糖生産量は、収穫面積の拡大に伴うサトウキビ生産量の増加により、509万トン(同3.4%増)とやや増加が見込まれ、また、砂糖輸出量も429万トン(同3.6%増)とやや増加が見込まれている。2017/18年度も、引き続き、収穫面積の拡大および生産量の増加が予想されることから、砂糖生産量は516万トン(同1.5%増)とわずかな増加が予想されているが、砂糖輸出量は、430万トン(同0.2%増)にとどまると予想されている。

 3月28日、過去6年で最大勢力のサイクロン「デビー」が豪州北東部を直撃し、マッカイなどのサトウキビ主要生産地域を襲った。サトウキビの収量低下のほか、倒伏などにより、収穫作業経費の増加が危惧されている。サトウキビ生産者団体Canegrowersが同月31日に発表した第1回被害状況調査によると、クイーンズランド(QLD)州のサトウキビの損失額は、1億5000万豪ドル(132億円〈3月末日TTS:1豪ドル=88円〉)と見込まれている。QLD州政府は4月2日、今回のサイクロン被害を受けた生産者を支援するため、緊急的な作物の移送経費への補助(上限5000豪ドル〈44万円〉)や低利融資(上限25万豪ドル〈2200万円〉)などを措置すると発表した。

 また、2017/18年度以降の新たな輸出契約に関し、連邦政府は4月5日、「砂糖産業に対する強制行動規範」を施行した。同規範は、サトウキビ生産者、製糖企業および砂糖輸出企業の3者間の紛争仲裁手続きについて規定したものである。連邦政府は、今回の規範施行の背景として、QLD州の砂糖輸出産業が同州で最も重要な産業であり、持続的な発展と効率的な管理が期待されながら紛争が続いていたことから、「QLD州砂糖産業法」(注)などの既存の枠組みを早急に補う必要があったことを挙げている。これによって、QLD州の砂糖産業で、およそ2年にわたり続いていた紛争が収束に向けて一歩前進した。

 これに対し、豪州砂糖製造事業者協会(ASMC)は4月5日、交渉が難航していた製糖企業1社がQLD州砂糖公社(QSL)と3月2日に大筋で合意に達していたにもかかわらず、連邦政府が協議もなく「手荒い」規制を行使したとして、非難する声明を発表している。

(注)2015年12月、実質的に一元輸出を継続していたQLD州砂糖公社(QSL)以外の砂糖輸出企業を生産者が選択できるよう改正された。この改正に伴い、QSLを選択する生産者ともサトウキビ供給契約(CSA)を結ぶことにした製糖企業がある中、最大手の企業は直接輸出に固執し、交渉が長期化していた。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2016/17年度の砂糖生産量はわずかに増加、輸出量はかなり減少の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、141万ヘクタール(前年度比0.2%減)と前年度並みと見込まれる一方、単収の増加が見込まれることから、生産量は1億436万トン(同11.0%増)とかなりの増加が見込まれている (表7)。

 しかし、砂糖生産量は、長引く干ばつの影響により、特に新植サトウキビの生育不良が見られることなどから、1030万トン(同2.7%増)とわずかな増加にとどまると見込まれている。また、輸出量は、中国向けの減少などに伴い、729万トン(同6.5%減)とかなりの減少が見込まれている。

 一方、タイ農業協同組合省農業経済局が先ごろ発表した主要農産物の生産見通しの中で、2016/17年度のサトウキビ収穫面積は、政府による生産者への適地適作の奨励や製糖企業によるサトウキビ栽培への転作促進により、145万ヘクタール(同1.8%増)とわずかな増加が見込まれている。また、生産量は、1億515万トン(同11.7%増)とかなりの増加が見込まれている。これは、サトウキビ生産者の肥培管理などの技術の向上により、単収の増加が見込まれていることなどが要因とされる。砂糖生産量も1094万トン(同11.8%増)とかなりの増加が見込まれており、これに伴い、輸出量も844万トン(同17.4%増)と大幅な増加が見込まれている。

 さらに、政府は、2017/18年度からの適用を目指し、砂糖産業関連法の改正(注1)に向けた手続きを開始した。この改正によって、砂糖産業全体の収益をサトウキビ生産者と製糖業者で7:3の割合で分配する現行の収益分配方式や販売割当(注2)は廃止され、政府が設定している国内砂糖価格は固定制から変動制に移行するものとみられる。なお、サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)(注3)によると、改正法は、遅くとも2018年4月までに施行される。

(注1)タイ政府は2016年4月初旬、国際砂糖価格の低迷時などに製糖企業を通じて生産者に支払われる補てん金や、砂糖の販売割当および国内販売価格の設定は、間接的な輸出補助金に当たり国際貿易協定に違反しているとして、ブラジル政府からWTOに提訴された。これを受け、タイ政府は同年11月3日、ブラジルとの2国間協議の場に、同年10月中旬に閣議承認された砂糖政策の改革案を提出した。
(注2)タイ産砂糖は、A割当と呼ばれる国内供給向けとB割当およびC割当と呼ばれる輸出向けなどの販売割当に基づき管理されている。
(注3)タイのサトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である3省(工業省〈製糖関係〉、農業協同組合省〈原料作物関係〉、商務省〈砂糖の売買関係〉)とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された「サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)」の事務局。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

南アフリカ

2016/17年度の砂糖生産量はわずかに減少、輸出量は大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、29万ヘクタール(前年度比4.2%減)、生産量は1623万トン(同4.9%減)と、ともにやや減少が見込まれている(表8)。

 砂糖生産量は、製糖歩留まりの回復がみられることから、170万トン(同1.6%減)とわずかな減少にとどまると見込まれている。2015/16年度から砂糖の消費量が生産量を上回る状況が続き、在庫量が減少していることから、輸出量は24万トン(同23.3%減)と大幅に減少し、過去最低を記録すると見込まれる。

2017/18年度の砂糖生産量はやや増加、輸出量は大幅増の見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は、31万ヘクタール(前年度比5.9%増)、生産量は1719万トン(同5.9%増)と、ともにやや増加が見込まれている。2014/15年度から続く干ばつの影響により、2017/18年度以降もサトウキビおよび砂糖生産への影響が懸念されているものの、平年並みの降雨が予想され、沿岸地域での適度な降雨によりサトウキビが順調に生育し、製糖歩留まりの回復が見込まれることから、砂糖生産量は、180万トン(同5.9%増)とやや増加が見込まれている。これに伴い、輸出量も30万トン(同27.6%増)と大幅に増加するものと見込まれている。

 また、財務省は2月22日、4月に導入予定の糖類を含む飲料への課税方針の詳細を発表した。これによると、課税対象は、100ミリリットル当たり4グラム以上の糖類を含む飲料で、この飲料に含まれる糖類10グラム当たり0.21ランド(2円〈3月末日TTS:1ランド=9.86円〉)が課税されることとなっている。

表8 南アフリカの砂糖需給の推移

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