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平成28年産てん菜の生産状況について

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最終更新日:2017年6月9日

平成28年産てん菜の生産状況について

2017年6月

北海道農政部生産振興局農産振興課

【要約】

 平成28年産てん菜は、前年から作付面積が増加したものの、8月以降に相次ぎ襲来した台風などの影響によって、過去10カ年の中で22年に次いで低い生産量となった。また、根中糖分は17%を超えた前年を下回り、ほぼ平年並みとなっている。
 

1.最近のてん菜の作付け動向

 てん菜は、北海道の畑作経営の輪作体系を維持する上で基幹的な作物であるとともに、てん菜糖業は地域経済の維持・発展に重要な役割を担っており、平成12年以前の作付面積は7万ヘクタール前後と安定して推移していた。

 近年は生産者の高齢化や経営規模の拡大に伴う労働力不足、他作物への転換、天候不順の影響により不作が続いていたことなどによって、作付面積は減少傾向で推移していたが、27年から2年連続で増加している(図1)。
 
図1 てん菜の作付面積の推移(平成14年以降)

2.28年産てん菜の生育概況

 播種(はしゅ)作業は平年並みに行われ、移植作業も4月下旬の日照が多かったことから順調に進み、移植期は平年より4日早くなるとともに活着も良好であったが、オホーツクや十勝地方では強風の影響を受け、再移植などが必要となる圃場(ほじょう)の発生や直播を行った圃場での出芽不良が見られた。

 6月は長雨と日照が少なめに推移したことから生育の停滞があり、8月後半の大雨では、オホーツクや十勝地方で浸水や土砂流入などの被害を受け、 10月下旬には、上川地方などで観測史上最も早い時期での根雪(長期積雪)となったことで、収穫することができなくなった圃場が発生するなど、収量および糖分は前年を大きく下回った(表1)。

 病害虫の発生状況については、ヨトウガが第1回、第2回の発生とも平年よりやや遅く、発生量は少なめであった。また、褐斑病も発生は平年よりやや遅く、発生量は平年並みであったが、本年は湿害の影響により、黒根病や根腐病が発生する圃場が多かった。
表1 生育の遅速の推移(平成28年産)

3.28年産てん菜の生産状況

 平成28年産てん菜の作付面積は、前年産と比べ708ヘクタール増加し5万9390ヘクタール、10アール当たり収量は1320キログラム減少し5369キログラム(平年比89%)、生産量は73万6000トン減少し318万9000トン(前年比81%)となった。また、平均根中糖分は16.3%と、前年産より1.1ポイント低下し、平年(16.4%)並みの糖分となった(表2図2)。
表2 地域別生産実績(平成28年産)
図2 根中糖分の推移(平成14年以降)
 品種別の作付け構成は、「パピリカ」(23.0%)、「アンジー」(18.4%)、「リボルタ」(11.1%)、「カーベ2K314」(10.1%)、「かちまる」(9.2%)の順となっており(表3)、前年より面積が増加した品種は、褐斑病や黒根病の抵抗性が優れる「アンジー」、褐斑病やそう根病の抵抗性が優れる「カーベ2K314」などとなっており、近年認定された優良品種への転換が進んでいる。 
表3 品種別作付面積(平成28年産)
 てん菜の作付け戸数は道南地域では27年に続き微増となったが、全道的には減少傾向が続いており、 28年は19年と比べ2122戸減少(23%減少)し、 7294戸となった。また、1戸当たりの作付面積は、 28年は1戸当たり8.1ヘクタールと、10年で1.0ヘクタール増加した(表4)。このような作付け規模の拡大や労働力不足などに対応するため、近年では、春の育苗・移植作業に要する労働力を大幅に削減できる直播栽培に取り組む地域も増加しており、28年は前年より1815ヘクタール増加の1万3203ヘクタール(作付面積の22.2%)となった(図3)。
表4 作付け戸数および戸当たり作付面積の推移
図3 直播栽培面積の推移

4.てん菜糖の生産状況

 北海道内の製糖工場は、3社8工場が操業している。平成28年産原料処理量は318万9000トンで前年比81%となった。また、歩留まりは前年産よりも低く、砂糖生産量は50万5000トンで前年比75%であった(表5)。
表5 てん菜糖の生産実績(平成28年産)

おわりに

 平成28年は8月以降、相次ぐ台風の襲来により農地の流出や浸水などの被害が発生し、収量・糖分とも前年を大きく下回った。

 また、砂糖の需要が低迷する中、経営所得安定対策における畑作物の直接支払交付金の見直しにより、てん菜の交付単価が29年産から引き下げられるなど、てん菜・てん菜糖をめぐる情勢は変化していることから、今後も安定した生産が行われるよう、生産者団体、製糖業者、行政などの関係者が連携した取り組みを推進する必要がある。

 こうしたことから、低コストで省力的な持続的生産体制の確立や、 糖量の多い耐病性品種の導入を推進するなど、輪作体系上重要な基幹作物として、さらには地域経済への影響も考慮し、てん菜の作付けの安定化を図ることが重要である。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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