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4. 日本の主要輸入先国の動向(2017年10月時点予測)

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最終更新日:2017年11月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2017年10月時点予測)

2017年11月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2016年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が52.2%(前年比13.2ポイント増)、タイが47.7%(同8.3ポイント減)と、この2カ国でほぼ全量を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイは毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回は南アフリカを報告する。

豪州

2016/17年度の砂糖生産量はわずかに減少、輸出量はかなり減少の見込み
 2016/17砂糖年度(7月〜翌6月)のサトウキビ収穫面積は39万ヘクタール(前年度比3.2%増)とやや増加し、生産量は3650万トン(同4.8%増)とやや増加が見込まれている(表6)。しかし、砂糖生産量は、5〜6月に収穫されたサトウキビの製糖歩留まりが、3月に襲来したサイクロンの影響により低下していることから、494万トン(同2.2%減)とわずかな減少が見込まれている(注)。また、輸出量は、中国向けの減少などに伴い、372万トン(同10.4%減)とかなりの減少が見込まれている。

2017/18年度の砂糖生産量、輸出量ともにかなり増加の見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は40万ヘクタール(前年度比1.8%増)とわずかな増加が見込まれているものの、サイクロンの影響による単収の減少から、生産量は3360万トン(同7.9%減)とかなりの減少が見込まれている。砂糖生産量は、531万トン(同7.5%増)とかなりの増加が見込まれているが、サイクロンの被害状況によっては、今後下方修正される可能性がある。輸出量は、生産量の増加に伴い、400万トン(同7.6%増)とかなりの増加が見込まれている。

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)が9月中旬に公表した2017/18年度の生産予測によると、サトウキビ栽培面積は38万ヘクタール(同2.3%増)とわずかに増加するものの、サイクロンの被害に伴い、1ヘクタール当たり収量が92トン(同6.8%減)とかなりの減少が見込まれていることから、砂糖生産量は、480万トン(同0.1%減)と前年度並みが見込まれている。輸出量についても、前年度並みの405万トンと見込まれている。

 豪州砂糖製造業者協議会(ASMC)は、2017/ 18年度のサトウキビ圧搾量見込みを3340万トンと、主産地の荒天を反映して9月上旬時点の予測から65万5000トン下方修正している。

 現地報道によると、クイーンズランド州バンダバーグ地区は10月、度重なる豪雨に見舞われたことから、サトウキビ()(じょう)の浸水被害が発生し、収穫作業の遅延が懸念されている。

 豪州政府は9月21日、インドネシア政府が豪州産粗糖の輸入関税引き下げに合意したことを発表した。これによると、インドネシアの豪州産粗糖の輸入関税は、現行の8%から5%に引き下げられ、同国最大の粗糖輸入先国であるタイと同水準となる。豪州砂糖産業連盟(ASIA)は、関税の引き下げにより、豪州産粗糖のインドネシア向け輸出量は、従来の35万トン程度から125万トン以上に拡大できると見込んでいる。

(注)豪州の砂糖年度は7月〜翌6月とされているが、例年製糖が開始される5〜6月の数量は、前年度に含まれる。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2016/17年度の砂糖生産量はわずかに増加、輸出量はかなり減少の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、141万ヘクタール(前年度比0.2%減)と前年度並みが見込まれる一方、長引く干ばつの影響で単収の減少が見込まれることから、生産量は9300万トン(同1.1%減)とわずかな減少が見込まれる(表7)。

 しかし、砂糖生産量は、製糖歩留まりの向上などから、1030万トン(同2.7%増)とわずかな増加が見込まれている。一方、輸出量は、中国向けの減少などに伴い、707万トン(同9.5%減)とかなりの減少が見込まれている。

2017/18年度の砂糖生産量は大幅増、輸出量はやや減少の見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は、他作物からの転作の進展などにより154万ヘクタール(前年度比9.4%増)、生産量は1億500万トン(同12.9%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている。

 砂糖生産量は、天候に恵まれ、製糖歩留まりの向上が見込まれていることなどから、1200万トン(同16.5%増)と大幅な増加が見込まれている。一方、輸出量は、中国向けの減少などに伴い、680万トン(同3.7%減)とやや減少が見込まれている。

 タイ製糖協会が10月中旬に発表した見通しによると、一部の地域で洪水による影響が見られるものの、2017/18年度のサトウキビ圧搾量は、前年度から10%増の1億400万トンと見込まれている。

 政府は現在、砂糖産業関連法の改正(注1)に向けた手続きを行っている。この改正によって、砂糖産業全体の収益をサトウキビ生産者と製糖業者で7:3の割合で分配する現行の収益分配方式や販売割当(注2)、および政府が設定している国内砂糖価格は廃止されるとみられる。

 現地報道によると、サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)(注3)は10月上旬までに、砂糖の販売割当の廃止や砂糖価格の市場原理に沿った監視の実施については決定したが、サトウキビ取引価格の算定方法については関係者との協議を続けており、2017/18年度のサトウキビ圧搾開始までの決定を目指している。

 また、現地報道によると、農業協同組合省は先ごろ、2017〜2021年の国家有機農業開発戦略を策定した。同戦略は、企業グループと政府が共同で実施している有機栽培サトウキビ・安全なサトウキビ生産協力プロジェクトの推進により、有機栽培によるサトウキビ圃場を拡大し、年間4万トンのオーガニックシュガーを輸出するとしている。

(注1)タイ政府は2016年4月初旬、国際砂糖価格の低迷時などに製糖企業を通じて生産者に支払われる補てん金や、砂糖の販売割当および国内販売価格の設定は、間接的な輸出補助金に当たり国際貿易協定に違反しているとして、ブラジル政府からWTOに提訴された。これを受け、タイ政府は同年11月3日、ブラジルとの2国間協議の場に、同年10月中旬に砂糖政策の改革案を提出した。サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)によると、改革案は現在、閣議レベルで吟味され、公聴会を実施してから再提出するよう、OCSBへ返却されている。改革案は近いうちに閣議へ再提出される予定となっている。
(注2)タイ産砂糖は、A割当と呼ばれる国内供給向けとB割当およびC割当と呼ばれる輸出向けなどの販売割当に基づき管理されている。
(注3)タイのサトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である3省(工業省〈製糖関係〉、農業協同組合省〈原料作物関係〉、商務省〈砂糖の売買関係〉)とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された「サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)」の事務局。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

南アフリカ

2016/17年度の砂糖生産量はやや減少、 輸出量は大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、29万ヘクタール(前年度比4.2%減)、生産量は1623万トン(同4.9%減)と、ともにやや減少が見込まれている(表8)。

 砂糖生産量は、2014/15年度から続く干ばつの影響による製糖歩留まりの低下から、163万トン(同5.4%減)とやや減少が見込まれている。前年度から砂糖の消費量が生産量を上回る状況が続き、在庫量が減少していることから、輸出量は22万トン(同29.1%減)と大幅に減少し、過去最低を記録すると見込まれている。

2017/18年度の砂糖生産量はかなり増加、輸出量は大幅増の見込み
 2017/18年度のサトウキビ収穫面積は、31万ヘクタール(前年度比5.9%増)、生産量は1719万トン(同5.9%増)と、ともにやや増加が見込まれている。干ばつ被害から回復し、平年並みの降雨が予想され、サトウキビが順調に生育することで、製糖歩留まりの向上が見込まれていることから、砂糖生産量は180万トン(同10.2%増)とかなりの増加が見込まれている。これに伴い、輸出量も30万トン(同37.9%増)と大幅に増加するものと見込まれている。

 一方、現地報道によると、南アフリカ砂糖協会は、数年にわたる干ばつの影響で、閉鎖や稼働期間の短縮を余儀なくされた工場が複数あり、砂糖生産量が5割以上減少した地域もあることから、輸出量が干ばつ前の水準まで回復するには、数年を要すると見込んでいる。

 現地報道によると、業界団体の反対を受けて延期されていた糖類を含む飲料への課税(注)は、2018年4月の開始が予定されている。ただし、課税額については未定となっており、業界団体が3年ごとの見直しを求めている一方、政府は複数年をかけての増額を検討している。

(注)2月の南アフリカ財務省の発表によると、課税対象は、100ミリリットル当たり4グラム以上の糖類を含む飲料で、この飲料に含まれる糖類10グラム当たり0.21ランド(2円〈9月末日TTS:1ランド=10円〉)が課税される予定とされていた。

表8 南アフリカの砂糖需給の推移

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