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食と健康に関する男女差について

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最終更新日:2018年1月10日

食と健康に関する男女差について

2018年1月

NPO法人「食と健康プロジェクト」 理事長 高田 明和
東京都済生会渋谷診療所 松岡 健平
東京都済生会中央病院 加藤 清恵
昭和女子大学生活科学部 高尾 哲也、小川 睦美、石井 幸江、清水 史子

【要約】

 われわれは若年男女、中高年男女の食事摂取、血中因子、BMIなどの関係を調べた。中性脂肪、全コレステロール、LDL-コレステロール、レムナントコレステロールは、いずれも若年者と比べ中高年者の方が高かった。特に中性脂肪は、女性と比べ男性の方が高い値を示した。一方、HDL-コレステロールの値は女性の方が男性よりも高かった。  
 ショ糖(砂糖)または甘味料入り飲料の摂取は若年男性のみ血糖値の増加が見られ、菓子類の摂取は中高年男性にのみインスリン値の増加が見られた。インスリンの増加は肥満をもたらすが、同時に糖尿病の予防にもなる。既に砂糖、甘味料入り飲料または菓子類の摂取は、BMIに影響を与えないことは示されているので、この程度の増加はBMIの増加につながらないと考えられる。

はじめに

 男性と女性とでは、生理機能や体質のほか、かかりやすい病気が異なることはよく知られている。さらに、薬に対する反応も男女で異なる。同じ薬でも全く異なる病気に作用することもあれば、服用した量が同じでも効き目が異なることもあり得る1)。しかしながら、数年前まで、医学研究における臨床試験は世界的に見ても、主として男性に対して行われてきた。このため、女性は処方される薬が自分の体に合っているかを実際に試すほかない状況にあったと言える。

 現在は、多くの国・地域で臨床試験の対象に女性を含めることを義務付けている2)。また、国際的に権威ある医学誌『The Lancet(ランセット)』に、医学誌の編集者らに向け、研究成果の男女差に関するガイドラインを設定するよう呼びかける論文3)が掲載されるなど、近年、臨床試験に基づく成果について、男女の違いを考慮・分析したデータを提供することが強く求められている。

 そこで、本稿では糖尿病の発症リスクの男女差について触れるとともに、私たちが最近行った食事摂取と血糖値およびインスリンの関係に関する男女差、年齢差の結果について報告する。

1.日本における糖尿病患者の男女差

 食べ物に含まれる糖質は、体内で分解されてブドウ糖となり、血液に溶け込んで全身に運ばれ、脳や筋肉、内臓などのエネルギー源として活用されている。血液に溶け込んでいるブドウ糖を「血糖」と呼び、健常者の場合、その濃度(血糖値)はホルモンの働きにより調節されている。このうち、上昇した血糖値を下げる働きがあるのはインスリンである。しかし、インスリンの分泌や働きが鈍くなると、血糖値が正常な範囲を超えて高い状態が続き、慢性化することとなる。これを糖尿病と言う。

 わが国においては、女性よりも男性の方が糖尿病になりやすいという印象を持たれている方が多いのではないだろうか。確かに、わが国の糖尿病の患者比率は、男性の方が女性より高い。その一方で、図1に示す通り、60歳以上の場合、女性であっても糖尿病の発症リスクは決して低い値ではないということを理解しておくべきだろう。さらに、血糖値が高い状態が続くことによって心臓および血液循環に起因する病気の発症リスクが高まるといわれており、Legato.MJらの報告によると、糖尿病を持っている女性は、そうでない女性や男性よりも心筋梗塞になりやすいとされている4)

図1 糖尿病が強く疑われる者の割合

2.測定および結果

 われわれは、糖尿病の発症にストレス、つまり精神的な影響も関係することを報告している5)。また、肥満は糖尿病を発症する危険因子の一つであるが、若年男女および中高年男女におけるショ糖(砂糖)、甘味料入り飲料および菓子類の摂取とBMIの関係を調べ、これらの摂取が肥満には関係しないということを示していることから6)、今回は、血糖値およびインスリンの関係を調べることとした。

(1)方法

 若年層の男女は大学生から参加を募り、中高年層の男女は知り合いに参加をお願いした。データに影響を与えるような病歴(糖尿病、高血圧、心疾患など)がないことをあらかじめ確かめ、さらに脂質異常、高血圧、高血糖の薬を服用している人は除外した。これらの参加者に食事表に食事歴を記入してもらった。被検者の食事摂取状況は、食事記録法、24時間蓄尿、血漿(けっしょう)などを用いた方法で、簡易型自記式食事歴法質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire。以下「BDHQ」という)(注)を用いて調査した。BDHQの特徴は、食物摂取頻度法および食事歴法を用いた最近1カ月の食習慣についての質問票で、15分程度で回答が可能であることから、被検者の負担が軽減できることである。なお、BDHQは、日本人の食事摂取基準(2015年版)において、食事摂取基準の活用で用いる食事アセスメント法の参考資料として触れられている。

 アミノ酸分析はSRL株式会社により行われた。血漿を除タンパクし、二回遠心分離の後、上清を分取、液体クロマトグラフィー・質量分析計であるUF-Aminostation®を用いで測定した。

 脂質はガスクロマトグラフィー・質量分析計を用い測定した。インスリン値はCLEIA (chemiluminescent immunoassay)を用い測定し、血糖値はTERMO kitを用い指先から得られた血液の血糖値を測定するか、血漿をヘキソキナーゼ法で測定した。

注:妥当性、再現性の研究が行われている自記式食事歴法質問票(self-administered diet history questionnaire、〈DHQ〉)の簡易版として開発され、食品群摂取量や栄養素摂取量に関する妥当性の研究のために用いられる質問票。

(2)参加者の基本性状

 表1は参加者の基本性状を示す。エネルギー摂取量、タンパク摂取量、脂質摂取量は中高年男女の方が若年男女より多かった。男性と女性を比べると若年者も、中高年も男性の摂取量の方が女性の摂取量より多かった。一方、炭水化物については女性の摂取量の方が男性より多かった。

表1 参加者の基本性状

(3)若年男女と中高年男女の脂質摂取量の差について

 表2に示すように中性脂肪、全コレステロール、LDL-コレステロール、レムナントコレステロールはいずれも中高年者の方が若年者より高かった。特に中性脂肪は男性の方が女性より高い値を示した。一方、HDL-コレステロールの値は女性の方が男性よりも高かった。一方、ω脂肪酸のアラキドン酸、EPA、DHAの値は中高年者の方が若年者より高かった。EPA、DHAは魚に多く含まれる成分であることから、今回参加した中高年者は、魚を摂取する頻度が高いとみられる。

表2 若年男女と中高年男女の脂質摂取量

(4)血糖値、インスリン値との相関について

 表3はショ糖、甘味料入り飲料および菓子類の摂取と血糖値、インスリン値との相関を示す。ショ糖、甘味料入り飲料の摂取と血糖値、インスリン値の相関を調べると、若年男性で、ショ糖、甘味料入り飲料と血糖値で相関が見られた。一方、菓子類とインスリン値との相関は中高年男性のみ有意であった。

表3 ショ糖、甘味料入り飲料、菓子類の摂取と血糖およびインスリンの相関係数

 ショ糖、甘味料入り飲料の摂取との相関図を見ると、血糖値は、若年男性のみ血糖値が上昇した(図2)が、中高年男女では有意関係は見られなかった(図3)。他方、インスリン値は、若年男女、中高年男女ともに、ショ糖、甘味料入り飲料の摂取との間に有意関係は見られなかった(図4図5)。

図2 ショ糖、甘味料入り飲料の摂取と血糖値の関係(若年者)

図3 ショ糖、甘味料入り飲料の摂取と血糖値の関係(中高年者)

図4 ショ糖、甘味料入り飲料の摂取とインスリン値の関係(若年者)

図5 ショ糖、甘味料入り飲料の摂取とインスリン値の関係(中高年者)

 菓子類については、若年男女、中高年男女ともに摂取量と血糖値の間に相関が見られなかったが、インスリン値については中高年男性で菓子摂取量の増加とともにインスリン値は有意に増加した。この意義については考察で論ずる。

3.考察

 まず動脈硬化に関係すると思われる中性脂肪、全コレステロール、LDL-コレステロール、レムナントコレステロールは、いずれも中高年者の方が若年者より高かった。特に中性脂肪は男性の方が女性より高い値を示した。一方、HDL-コレステロールの値は女性の方が男性よりも高かった。HDL-コレステロールは動脈硬化を予防すると考えられる。つまり、中高年の男性の方が女性より心血管障害、脳血管障害になりやすいことが血液所見の比較からも確かめられた。

 われわれは、すでに若年男女、中高年男女でショ糖、甘味料入り飲料の摂取はBMIと関係しない、つまり肥満につながらないことを示している6)。菓子類の摂取に関しても同様にBMIに影響を与えなかった。

 では、血液所見に対する影響はどうだろうか。ショ糖、甘味料入り飲料の摂取は若年男性のみに血糖値の増加を、菓子類の摂取は中高年男性のみインスリン値の増加をもたらしている(表3図2)。インスリンの増加は肥満をもたらすことが広く知られている7)。しかし、見方によればインスリンを出しやすくなるというのは糖尿病を予防する結果にもつながるのである。さらにこの程度のインスリンの増加はBMIの増加につながらないと考えられるので、男性も健常者の場合にはショ糖、甘味料入り飲料の摂取が肥満を引き起こしてはいないことが分かる。
【文献】
1)Berger JS、Roncaglioni MC、Avanzini F、Pangrazzi I、Tognoni G、Brown DL(2006)「Aspirin for the primary prevention of cardiovascular events in women and men: a sex-specific meta-analysis of randomized controlled trials」『JAMA』(295)pp306-313.
2)Civic Impulse LLC「S.1(103rd)Congress :National Institutes of Health Revitalization Act 0f 1993」<https//www/govtrack.us/congress/bills/103/s1>(accessed Nov.17,2016)
3)Avery E、Clark J(2016)「Sex related reporting in randomized controlled trials in medical journals」『Lancet』(388)pp.2839-2840.
4)Legato MJ、Johnson PA、Manson JE(2016)「Consideration of Sex Differences in Medicine to Improve Health Care and Patient Outcomes」『JAMA』316(18)pp.1865-1866.
5)Matsuoka K、Kato K、Takao T、Ogawa M、Ishii Y、Shimizu F、Masuda J、Takada A(2016)「Concentrations of various tryptophan metabolites increase in patients of diabetes mellitus compared to healthy aged male adults」『Diabetology International』DOI:10.1007/s13340-016-0282-y
6)Shimizu F、Ishii Y、Ogawa M et al(2017)「Relationship between various food uptakes and body mass index (BMI) in Japanese young and old men and women」『Journal of Clinical Nutrition & Dietetics』 3(2)DOI:10.4172/2472-1921.100046.
7)Taubes G(2013)「Which one will make you fat?」『Scientific American』(309)pp.60-65.
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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