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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年1月時点予測)

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最終更新日:2018年2月9日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年1月時点予測)

2018年2月

ブラジル

2017/18年度の砂糖生産量、輸出量ともに前年度並みの見込み
 英国の調査会社Agra CEAS Consulting(農産物の需給などを調査する英国の大手民間調査会社)の2018年1月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、874万ヘクタール(前年度比3.4%減)とやや減少し、生産量は、6億3560万トン(同3.3%減)と見込まれている(表2)。

 しかし、砂糖生産量は、4080万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同0.7%増)と前年度並みが見込まれている。これは、サトウキビの砂糖への仕向け割合の増加に加え、製糖歩留まりの向上が予想されているためである。輸出量については、世界的な輸入需要が弱まると見込まれ、2870万トン(同0.1%減)と見込まれている。

 ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注1)が発表した2017年4〜12月の生産実績報告によると、中南部地域のサトウキビ圧搾量は、多雨の影響から、5億8339万トン(前年同期比1.5%減)とわずかに減少したが、砂糖生産量は、3582万トン(同1.7%増)とわずかに増加した。エタノール生産量は、2522万キロリットル(同1.2%増)とわずかに増加した一方、輸出量も含めたエタノールの販売量は、1999万キロリットル(同1.9%減)とわずかに減少した。含水エタノール(注2)の国内販売量は、価格が上昇したものの、1156万キロリットル(同0.2%増)と前年度並みとなった。

 また、政府は2017年9月に開始したエタノール輸入に対する20%の関税(注3)について、撤廃する可能性を示唆した。この背景には、ブラジル国内でガソリン価格が上昇し、エタノール需要が高まる中、エタノール供給が逼迫(ひっぱく)しつつあることがある。

 現地報道によると、南米南部共同市場(メルコスール)とEUの自由貿易協定(FTA)の交渉妥結は、2019年へ持ち越される可能性が高まっている。これは、両者の政治的な事情によるもので、EUでは、議会選挙の結果、現政権の影響力が弱まるドイツに代わり、交渉に消極的なフランスが影響力を強める一方、南米でも、ブラジルとパラグアイが、大統領選挙を控えて4月以降内政に注力することが見込まれているため、双方の合意が早急に形成されなければ、交渉は一時的に休止されるとの見方がある。同FTAでは、EUは、粗糖については、10万トンの関税割当(枠内税率は現行のCXL割当枠(注4)と同率(1トン当たり98ユーロ〈1万3328円〈12月末日TTS:1ユーロ=136円〉〉))を導入し、エタノールについては、6年以内に60万トンの関税割当を導入し、このうち40万トンは化学工業向けとなるとみられていた。これに対し、UNICAは、粗糖の市場アクセスが改善されない場合、ブラジル砂糖産業は十分な恩恵を受けることができないと非難していた。

 また、新たな再生可能エネルギー法(RenovaBio)が2017年12月26日に成立した。同法は、現行27%のガソリンへの無水エタノールの最低混合率を、2022年までに30%、2030年までに40%へ引き上げることなどが盛り込まれており、2019/20年度までに施行されるとみられている。これにより、政府は、国内のバイオ燃料生産および利用を促進し、パリ協定に基づく温室効果ガス排出量の削減を目指している。

(注1)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注3)政府は2017年8月23日、エタノール輸入に対し、年間60万キロリットル(四半期ごとに15万キロリットル)の無税の関税割当を設けるとともに、これを超過して輸入されるエタノールに対しては20%の関税を課すことを決定した。同関税は、エタノール在庫量の低下に伴い2010年に停止して以来の再導入で、2年間実施された後、見直しが予定されていた。同措置は、国内のエタノール生産量の減少やトウモロコシの国際価格の下落などにより米国からのトウモロコシ由来のエタノール輸入量が急増している状況を受け、UNICAや北東部の砂糖・エタノール製造企業などが、以前から政府へ実施を要請していたものである。
(注4)粗糖輸入国であったフィンランドなどのEU加盟に当たり協議、合意の下に設定された関税割当で、対象は、精製糖製造用の甘しゃ粗糖(ただし、インドはHSコード1701台のすべての品目)。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2017/18年度の砂糖生産量は大幅増、輸入量は大幅減の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は498万ヘクタール(前年度比5.0%増)とやや増加し、生産量は3億3769万トン(同10.1%増)とかなりの増加が見込まれている(表3)。

 砂糖生産量は、主要生産州で適度な降雨に恵まれ、製糖歩留まりの向上が見込まれていることから、2720万トン(同23.1%増)と3年ぶりの増加が見込まれている。砂糖輸入量は、生産量が増加することから、200万トン(同25.0%減)と大幅な減少が見込まれている。

 インド製糖協会(ISMA)によると、2017年10〜12月の砂糖生産量は、精製糖換算で1033万トン(前年同期比26.1%増)と大幅に増加した。このうち、マハラシュトラ州では382万トン(同50.8%増)、ウッタルプラデシュ州では338万トン(同26.2%増)といずれも大幅に増加し、カルナタカ州では162万トン(同4.8%増)とやや増加し、グジャラート州では37万トン(同2.2%増)とわずかに増加した(図3)。

 ISMAが2017年11月下旬に発表した2017/18年度の砂糖需給見通しによると、砂糖生産量は、精製糖換算で2510万トン、砂糖輸入量は29万トンと見込まれている。

 現地報道によると、中央政府は2017年12月19日、貿易業者に対する砂糖の保有在庫数量の上限の設定について、国内流通の円滑化のため、即時撤廃すると発表した。同措置は12月末の終了が検討されていたが、2017/18年度の砂糖生産量が増加し、国内供給量が需要量を満たすと見込まれることから、前倒しで終了した。また、一部報道によると、同政府は、砂糖の輸入関税を2017年7月上旬に40%から50%に引き上げたが、国内砂糖価格の下落を防ぐため、さらなる引き上げを検討している。

表3 インドの砂糖需給の推移

図3 インドの地域別甘しゃ糖生産量(10 〜 12月)

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

中国

2017/18年度の砂糖生産量はかなり増加、 輸入量は大幅増の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビについては、収穫面積が193万ヘクタール(前年度比5.5%増)とやや増加し、生産量は単収の増加も伴い、1億3700万トン(同8.3%増)とかなりの増加が見込まれている(表4)。

 てん菜についても、収穫面積は20万ヘクタール(同30.9%増)、生産量は1100万トン(同42.8%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。地域別では、主要生産地である内モンゴル自治区の増加が見込まれている。これらにより、砂糖生産量は、1109万トン(同9.8%増)とかなりの増加が見込まれている。

 中国砂糖協会(CSA)によると、2017年10〜12月の砂糖生産量は、精製糖換算で232万トン(前年同期比1.2%増)とやや増加した(図4)。このうち、甘しゃ糖は、広西チワン族自治区での製糖歩留まりの低下などから138万トン(同9.5%減)とかなり減少した。一方、てん菜糖は95万トン(同22.1%増)と大幅に増加している。

 砂糖輸入量は、依然として生産量が消費量を下回ると見込まれる中、期首在庫量が低水準にあることもあり、577万トン(前年度比57.9%増)と大幅な増加が見込まれている。

 砂糖輸入については、2017年5月22日から3年間、世界貿易機関(WTO)協定に基づく関税割当(枠内関税率15%)の枠外で輸入される砂糖の関税率が95%まで引き上げられている(注)。なお、中央政府は2017年10月中旬、2018年の砂糖の輸入割当数量を前年と同水準の195万トンに設定するとともに、枠外数量については、前年比半減の100万トンに制限した。これに対し、国内の精製糖企業は12月中旬、原料糖の供給不足の緩和のため、枠外数量を190万トン程度に拡大するよう、政府に要請している。

(注)海外からの安価な砂糖の流入により、国内の砂糖産業に影響が生じているとして、ブラジル、豪州および韓国などの砂糖輸入先国を対象に実施した調査結果を踏まえ、50%であった枠外税率が95%に引き上げられた。ただし、開発途上の約190の国や地域(フィリピンやパキスタンといった従来中国と関係の深い貿易相手国を含む)については、一定の条件を満たせば対象外とされている。

表4 中国の砂糖需給の推移

図4 中国の砂糖生産実績(10 〜 12月の生産量)

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2017/18年度の砂糖生産量は大幅増、輸入量は大幅減の見込み
 生産割当廃止後初年度となる2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜の収穫面積が185万ヘクタール(前年度比16.0%増)、生産量は、好天による単収の増加もあり、1億4162万トン(同20.1%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている(表5)。これにより、砂糖生産量は2058万トン(同21.5%増)と大幅に増加する一方、砂糖輸入量は186万トン(同42.2%減)と大幅な減少が見込まれている。

 欧州委員会は2017年12月下旬、砂糖を含む農産物の中長期需給見通しを公表した。これによると、2017/18年度のてん菜生産量は、生産割当の廃止に伴う栽培面積の拡大と単収の増加が見込まれることから、1億3057万トン(同16.8%増)となり、砂糖生産量も精製糖換算で2048万トン(同21.6%増)と大幅に増加する一方、輸入量は125万トン(同45.8%減)と、前年度の6割以下と見込まれている。輸出量は、域内消費量が大きく変わらない中、域内供給量の増加に加え、WTOの裁定により設けられた輸出上限が生産割当の廃止に伴い撤廃されることから、300万トン(同2.3倍)と見込まれている。ただし、輸出量は、国際価格とEU域内価格の動向に左右されるとみられる。

 現地報道によると、欧州てん菜生産者協会と欧州砂糖製造者協会などの業界団体は、2017年11月下旬、生産割当制度が廃止された10月以降、EUの砂糖市場は不安定な状況にあり、メルコスールとEUのFTA交渉において、メルコスールに対するEU砂糖市場へのアクセスの譲歩に応じるべきではないと欧州委員会へ要求している。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合

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