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おきのえらぶサトウキビ産業シンポジウムに参加

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最終更新日:2017年11月1日

2017年7月

鹿児島事務所 長山枝里香

 7月6日(木)、沖永良部島知名町にて、おきのえらぶサトウキビ産業シンポジウムが開催された。 
 本シンポジウムは一昨年、20回目の開催をもって終了したさとうきびの生産者大会に代わり、島にとって重要なサトウキビ産業のあり方について考えるために、今年初めて開催された。当日は、基調講演、展望講演、パネルディスカッションが行われ、サトウキビ生産の関係者に、今後、沖永良部島のサトウキビ産業を持続的に成長させるための考える場が提供された。
 はじめに、沖永良部さとうきび生産対策本部長である島元嗣氏が開会のあいさつを行った。28年産のサトウキビの生産状況は、製糖期間が12月1日から5月1日、生産量は9万6500トンで、平成に入ってから元年に次ぐ、過去2番目の生産量であったこと、糖度については、15.02度と品質取引の開始以来、最高の糖度であったことを報告した。本シンポジウムをきっかけにサトウキビの重要性に再度着目し、10万トンを目指して生産向上に取り組みたいと述べた。
島生産対策本部長のあいさつ
島生産対策本部長のあいさつ
 次いで、九州農業試験場サトウキビ育種研究室長、九州沖縄農業研究センター作物機能開発部長などを歴任し、現在は種子島を拠点にサトウキビコンサルタントとして活躍している杉本明氏から、「サトウキビの昨日・今日・明日−沖永良部島型サトウキビ産業の創出に向かって−」と題して、基調講演が行われた。
杉本氏の講演
杉本氏の講演
 講演の中で杉本氏は、沖永良部島型サトウキビ産業の創出を提案した。沖永良部島型サトウキビ産業とは、サトウキビ生産と製糖を地域産業の礎とし、その上で、他作物の生産や産業など高付加価値をもたらすプラスワンの産業を確立した体系を指す。
 基礎となるサトウキビ生産では、現在の栽培における糖度追求の姿勢に疑問を投げかけ、水や労働力を多量に使用した多投入栽培から、節水・省力化を目指した新しい生産技術の確立に向かう必要があると説明した。
 また、サトウキビは、C4植物(注)であり、環境の悪いところでも栽培することができる。不適地でも育つサトウキビを株出安定多収になるような生産体制を確立し、植物の栽培に適した土地は他の高付加価値の園芸作物等を栽培し、プラスワンの産業を確立して島全体の富を最大化することを提案した。
 更に、ゆくゆくはサトウキビの周年栽培を目指し、現在は冬期に収穫しているサトウキビを夏期から収穫できるようにし、工場の操業期間を延長することについて、関係者に提案した。工場の操業を長期化することで、売電の可能性や生産者がサトウキビ収穫以外の作業との選択性を持てること、短期操業では困難な工場労働者を確保できること、そしてランニングコストなどの面で改善を図ることができるため、工場経営の安定化に努めることができる。
 究極的には、耕畜連携や燃料エタノールの生産等、他作物・他産業との複合によりサトウキビの多段階利用を目指すことを提言した。
 続いて、東北大学名誉教授の石田秀輝氏から、「ローカルが光り輝くあたらしい未来を考える」と題して、展望講演が行われた。
石田氏の講演
石田氏の講演
 厳しくなっていく地球環境の中で、どう豊かに暮らすかを全体的なテーマとして石田氏は講演した。
 高度経済成長期の中で、物質的な豊かさを享受することにより私たちの生活は発展してきた。しかし、その過程で自然や共同体というまとまりから個が独立することにより、自然環境の破壊が進んだ。この地球環境の劣化にともない、今後、物質的な豊かさの維持が困難となっていくことが予想される。そのため、豊かさの基準を物質的な豊かさから精神的な豊かさへと移行させる段階にきている、と石田氏は地球環境の現在について説明した。
 その中で、個を共同体や自然にもう一度つなぎとめ、新しい共同体の形を作り、その中で考え方を変え、新しいライフスタイルを作っていくことで、制約された環境の中で精神的な豊かさを生み出すことを提案した。
 石田氏は沖永良部島に移住後、2014年に「豊かな暮らし方」を考え、実践していく「酔庵塾」を開校している。その活動の中で、90歳前後の島民を対象にヒアリングを実施し、沖永良部島には「自然」と「仕事」を土台として「食」「集い」「楽しみ・遊び・学び」があり、この5つの文化が重なり合うことで豊かな暮らしを支えていることを明らかにした。
 沖永良部島は、自然を舞台に、仕事が生まれ、文化の質の高い暮らしを確立している。沖永良部島は本物の自然と本物の暮らしで人を魅了することができると締めくくった。
 パネルディスカッションでは、石田氏をコーディネーターとして、杉本氏、島氏、知名町農林課長の上村隆一郎氏、和泊町経済課長の武吉治氏、南栄糖業株式会社常務取締役の前田和義氏、JAあまみ知名地区さとうきび部会長の西田安村氏、JAあまみ和泊地区さとうきび部会長の栄修司氏をパネラーに迎え、講演の内容も含めたサトウキビ産業全体について、意見交換を行った。
パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
 沖永良部島に限らず、熱帯〜亜熱帯地方では高温により地中の有機物が分解され、地力が低いという問題がある。このことについて、「サトウキビを輪作に入れて地力を向上させる」「ハカマを畑にまき、堆肥化させる」などの意見があった。
 また、講演の中で提案された糖業会社の操業期間の延長については、「サトウキビの管理作業の開始時期を考えると、収穫は3月いっぱいで終えたい」「早めに操業することについては問題がないが、早期高糖性の品種でないと糖度が上がらず収穫できない」などの意見があった。
 最後に、講演の内容を踏まえ「単収8トンを目指したい」「サトウキビで沖永良部島を支えていきたい」「糖業会社、きび部会の可能性を広げていきたい」とそれぞれの決意を述べた。
 最後に、沖永良部さとうきび生産対策本部の副本部長である山下元達氏が「シンポジウムの開催は、明日からの糧となった。議題に上がった内容については、今後の課題とさせていただく」と締めくくり、閉会した。
(注)通常の植物(C3植物)よりも光合成の能力が高い植物。トウモロコシ、サトウキビなど熱帯地方の植物に多く、強光条件下でも育つことができる。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 地方事務所 (担当:鹿児島事務所)
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