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2009/10年度のトウモロコシ生産および輸出は回復へ(アルゼンチン)

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業界予測では、単収量の増加で生産量は2100万トン台に回復

 アルゼンチン農牧漁業省(Minagri)の3月17日現在の報告によると、2009/10年度(3月〜2月)のトウモロコシ生産量は、前年度の1300万トン台(暫定値)から大幅に回復し、2050万トンと予測されている。一方、同国の主要穀物取引市場であるロサリオ商品市場は、1970万トンと予測している。
 この背景などについて、同国のトウモロコシの生産および輸出業者から構成されるアルゼンチントウモロコシ協会(MAIZAR)に聞き取りを行ったところ、生産見通しなどについて以下の見解が得られた。

「2009/10年度は、干ばつの影響などを受けた前年度と違い、(1)主要生産地帯であるパンパ地域で降雨に恵まれたこと、(2)既存の生産技術を利用して、土壌への施肥などに十分留意したこと、(3)概ね8月〜10月のは種の時期を12月まで延ばしたこと−などにより、1ヘクタール当たりの収量が増加したことから、当協会としては2100万トン以上と予測している。
 現地新聞報道などでは、トウモロコシと競合する大豆の今期生産量も過去最高の5200万トン以上とされている。大豆は生産コストがトウモロコシよりも安いが、アルゼンチンにはまだ大豆生産に適した未利用農地が残っているので、今後の市場動向にもよるが、引き続き大豆がトウモロコシ用の農地を侵食する可能性はあまりない。今後、内外からのトウモロコシ需要が増えれば、未利用農地の活用により、2011/12年度には3000万トン以上の生産も不可能ではないと見ている。
 なお、アルゼンチンでは、主に生産者からの作付け意向調査に基づいて予測を行っていることなどから、実際の生産量よりも少なくなる傾向がある。これに対し、米国はトウモロコシの生育が一定程度進んだ後に人工衛星などを利用して調査しているので、かなり正確な予測を行うことができる。」
グラフ1
 また、Minagriから発表された3月18日現在の州別収穫面積(暫定値)は、以下の通りである。
州別のトウモロコシ収穫面積
            (単位:ヘクタール、%)

州 名

収穫面積

収穫が終了した面積

進捗率

コルドバ州

  851,400

   125,740

  14.8

ブエノスアイレス州

  789,710

   63,970

  8.1

サンタフェ州

  268,200

   112,820

  42.1

エントレリオス州

  155,000

   127,430

  82.2

ラパンパ州

  105,700

   710

  0.7

その他

  415,300

   33,130

  8.0

合 計

  2,585,310

   463,800

  17.9

資料:Minagri
注:収穫面積は2010年3月18日現在の暫定値

輸出量は1200万トン台

 2009/10年度(10月〜9月)の輸出量についてMAIZARは、政府が2月17日付けで2009/10年度のトウモロコシ生産量を2000万トン以上と予測し、国内供給量800万トンを確保できる見込みとなったことから、1000万トンのトウモロコシ輸出許可を公表したことを踏まえ、「生産量から飼料向けなどを差し引き、輸出許可書の発行が停滞しない限り、輸出量は1200万トン〜1300万トン」と見込んでいる。
 なお、流通業者から成るアルゼンチン油産業会(CIARA)にも同様の聞き取りを行ったところ、輸出量は1100万トン〜1200万トンの見込みであった。

「日本などによる100万トン以上のトウモロコシ買い付けは承知せず」

 一方、米国農務省(USDA)のレポート「Grain:World Markets and Trade」(2010年3月10日付け)によると、2009/10年度のアルゼンチンのトウモロコシの収穫面積は250万ヘクタール、収量は1ヘクタール当たり8.4トン、生産量は、2008/09年度の1500万トンから回復し、2100万トン、輸出量については1200万トンと予測されている。
グラフ2
 また、同レポートの冒頭では、「米国はこの2カ月で2009/10年度輸出見込量を400万トン減少させているのに対し、アルゼンチンは450万トン増の1200万トンに上方修正している。アルゼンチンの輸出価格は豊作の影響で下落が続く一方で、米国の2月の輸出価格はわずかに上昇した。なお、米国のトウモロコシについては、重量が軽いなど品質に関する報告が出されており、今後の輸出への影響が懸念されている。米国産トウモロコシの重要な買い手である日本と韓国が、アルゼンチンから既に100万トン以上のトウモロコシ買い付けを行った」との情報が掲載されている。このことについてMAIZARは、以下の通り詳細を把握していなかった。

「今年の米国産トウモロコシの品質があまり良くないとの情報は聞いているが、その原因など詳細については分からない。我々も生産地に確認したところ、今年のアルゼンチンのトウモロコシは品質も良いことが分かった。
 また、日本などが買い付けを行っているという情報についても、具体的には承知していない。アルゼンチンは色や形よりも単収の高いもの、病気にかからないものを優先して生産している。輸出に際しては、さまざまな品種のトウモロコシを混載しているが、要求があれば1トン当たり2ドル〜3ドルを加算することで、品種を分別することができる。ちなみに、ブエノスアイレス州北部やサンタフェ州南部では、単収が良い黄色の品種が生産されており、北部では害虫に強い赤色の品種が生産されている。
 アルゼンチンは、基本的に自国の生産状況と政府の輸出政策を見つつも、より高い価格で購入してくれる国であれば、いくらでもトウモロコシを売るつもりだ(価格次第である)。」
 なお、CIARAにも同様の聞き取りを行ったところ、MAIZARと同意見であった。
グラフ3
 以上からのように、アルゼンチンにはまだ十分に生産余力があり、今後の輸出環境によっては、輸出量が伸びる可能性もある。今後とも、アルゼンチンのトウモロコシの生産および輸出動向を注視していきたい。
【石井清栄 平成22年3月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:藤原)
Tel:03-3583-9805