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現地の鶏肉輸出再開報道に見る日本市場への期待ぶり(タイ)

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日本向け冷凍鶏肉の輸出が再開される見通しとの報道

 複数の現地紙は相次いで、タイブロイラー加工輸出業者協会のプラスート事務局長が、日本向けの冷凍鶏肉の輸出が再開される見通しとの見解を示したと報じた。
 記事によれば、同事務局長は、日本は5年前にタイで高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)が検出されてから未加熱鶏肉の輸入を禁止しているが、1年以上HPAIの発生がなければ、日本の担当官による検査を経て輸入禁止が解除される見通しであり、年間20万トンの冷凍鶏肉輸出が期待できると語ったとのことである。
 注:実際には日本政府は2004年1月22日に輸入停止措置を行っており、輸入停止措置は現在のところ6年間以上続いている。2003年には、タイの冷凍鶏肉の輸出量は約37万トンであり、うち約18万トンが日本向けであった。
 

関係者の強い期待の表れ

 本件について、農畜産業振興機構シンガポール事務所より同協会の広報担当者に確認したところ、
 
(1)同事務局長が報道陣に対して話した内容は、
「毎年定期的に行われている鶏肉調製品処理施設の検査のために、日本から検査員が来る。これまでは鶏肉調製品処理施設の検査だけだったが、今年は冷凍鶏肉を生産している工場の検査も行われるのではないか。」との楽観的予測を述べたにすぎず、
 
(2)仮に日本への輸出が再開されても、ひなの確保を急に行うことは難しい上、もも肉が主体になるため、むね肉などのほかの部位の販売先を確保する必要があることから、輸出量が20万トンに達するのは時間がかかるのではないか
と考えていることが明らかになった
 
 タイ政府はこれまでHPAI対策や、国際獣疫事務局(OIE)の基準に基づくコンパートメントシステム(特定の疾病に対する衛生状態が他と明確に区分されている1つまたは複数の施設に対し、共通のバイオセキュリティが行われるシステム)の導入、トレーサビリティシステムの導入などといった、非加熱鶏肉の輸出再開に向けた取り組みを実施してきた(「畜産の情報」2010年3月号参照)。
 このような対策が奏功したこともあり、HPAIは2008年11月以降発生が見られなかったことから、タイ政府は2009年2月に、OIEの規定に基づき、HPAIの清浄化宣言を行っている。
 本件については今のところ訂正記事は出ていないが、タイのブロイラー関係者の日本向け冷凍鶏肉輸出再開への期待の表れとして、このような記事が掲載されたと思われる。
 
【シンガポール駐在員 佐々木 勝憲 平成22年4月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:平石)
Tel:03-3583-9534