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サンタ・カタリーナ州産豚肉のアジア地域への市場拡大を促進(ブラジル)

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順調な伸びを示すブラジルの豚肉輸出

 本年4月のブラジル豚肉生産輸出業協会(ABIPECS)らの報告によれば、近年のブラジル産豚肉の生産量、輸出量および一人当たりの年間消費量はすべて増加傾向にあり、2005年と2009年ではそれぞれ、約2872千トンから約3109千トンに8.3%増加、約476トンから約590トンに23.9%増加、12.55キログラムから13.6キログラムに8.4%増加している。
 さらに、2010年第1四半期については、輸出量こそ減少しているものの輸出額は2億6676万ドル(約254億円:1ドル=95円)、トン当たりの輸出単価は2499ドル(約23万7405円)と、前年同期に比べ7.6%、18.4%増加となっている。輸出相手国としては、ロシア、アルゼンチン、ウクライナ、シンガポール向けが増加している。2009年の生産量に対する輸出割合は19%であるが、近年の輸出余力は徐々に増加傾向にあることから、ABIPECSは「(この調子でいけば)2010年に輸出が好転するのは確実視される。」としている。
図1 豚肉の生産量と輸出量の推移
図2 一人当たりの豚肉年間消費量の推移
表1  豚肉輸出額・輸出量(第1四半期:1-3月)

2010年はサンタ・カタリーナ州産豚肉の輸出増が有望

 ブラジルは広大な土地面積を有するものの、豚を飼養する地域はある程度限定されており、州別ではサンタ・カタリーナ州(SC)約7846千頭、リオ・グランデ・ド・スル州(RS)約5320千頭およびパラナ州約4632千頭の南部地域3州だけで全国の飼養頭数の48.3%を占める。また、2008年の輸出量はSCは169千トン、RSは約237千トンとなり、南部2州のみで全輸出量の76.7%を占める。
 これら2州にある輸出港(イタジャイ港(SC)、リオ・グランデ・ド・スル港(RS))には検疫用温度管理冷蔵施設が整備されており、輸出に向けた検疫体制が整っていることも両州の輸出割合が高い理由となっている。
図3
表2
表3
図4
 SCの豚生体価格は、2009年前半は低迷が続いたが、同年後半は、生産者が豚の供給を抑えたため一時的に上昇した。2010年のキログラム当たり生体価格は、1月が1.8レアル(約95.4円:1レアル=53円)に比べて3月は1.95レアル(約103.4円)と、8.3%値を上げた。同州のアウロラ養豚組合によれば、この急激な高騰は運転資金を必要とする生産者が体重の小さい豚(80キログラム程度)を多く出荷したことによるものであり、4月以降は標準的な体重(120キログラム程度)に戻っているという。
 
 SCは2008年5月、国際獣疫事務局(OIE)により口蹄疫のワクチン不接種清浄地域に認定されている。米国はこれに先立つ2008年4月、口蹄疫の防疫措置状況などを調査するためSCに米国農務省(USDA)の獣医官を派遣し、輸入解禁への前向きな姿勢を示した。しかし、規制解除の手続きに必要な公聴会の実施のタイミングが整わず今日に至っていた。このような中、2009年にブラジルとの綿花紛争でWTO上の敗北を喫した米国は今年4月、ブラジルがWTO上認められた報復措置の発動を回避するため、SCを口蹄疫清浄地域に加える提案を発表した。
 
 
 USDAのデータに基づくブラジル農務省(MAPA)とABIPECの分析では、2009年の米国の豚肉輸入量は373千トンで、米国内総消費量8925千トンの4.2%にすぎないことから、SC産豚肉の米国への輸出が解禁となったとしても、米国の市場に与える影響はわずかなものと見込まれる。このため、ブラジル側では、米国内の団体や生産者からの強い反発や圧力はないと判断されたことから、USDAが解禁に踏み切る提案を行ったと見ている。
 ABIPECは「米国がSCを「口蹄疫清浄化地域」と認め、米国への輸出が可能となれば、ブラジルの口蹄疫清浄化に関する評価が高まり、メキシコ、カナダ、日本、韓国など諸外国への輸出が期待されるため、こちらのことの方が経済的には重要だ。」としている。
 

アジア地域への輸出拡大を促進

 SC産豚肉は近年では2009年2月にチリ、同年3月にロシア、2010年1月に中国へ輸出解禁が行われた。一方で、メキシコとは技術的な交渉が実施されたが内容は希薄なものであり、その後の進展は見込めないそうもない。このような中、MAPA は2010年2月に開催した「2010年の展望に関する戦略会議」において、豚肉の輸出促進に関し輸出に必要な口蹄疫に関する衛生条件を満たすために最善の努力を図っていくことが重要であり、豚肉輸入量の多い日本をはじめ、中国、韓国などのアジア地域を中心に輸出拡大を促進していくこととしている。
図5
【星野 和久 平成22年4月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:藤原)
Tel:03-3583-9805