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地震による豚肉および酪農産業への影響はほとんどなし(チリ)

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現在は通常通りの生産活動

 2010年2月27日未明にチリ中南部で起きた地震による豚肉および酪農産業への影響について、現地調査を行ったところ、その影響はほとんどなく、現在は通常通りの生産活動を行っていることが明らかとなった。
 
(参考)

〇 豚肉

 チリ養豚生産者協会(ASPROCER)やチリ最大の豚肉パッカーであるアグロスーパー社などからの聞き取り結果の概要は、以下の通り。

1 最も激しい被害を受けたとされる第6州(L・ベルナルド・オイギンス州)および第7州(マウレ州)については、中・小規模の養豚場で豚舎の屋根が落ちる、サイロが傾斜するなどの損害が見られたものの、予想以上の被害ではなかった。地震直後最大の問題であった電力や水、飼料および資機材の供給不足についても、非常用モーターや在庫の利用により、復旧(5日〜6日程度)まで持ちこたえることができ、現在では、正常の生産レベルに回復している。ただし、今回の地震による母豚へのストレスが今後飼料摂取量や繁殖率などにどのような影響を及ぼすか懸念されている。
また、トウモロコシなどの飼料穀物生産地帯である第7州および第8州(ビオビオ州)のかんがい用水路が相当程度破損したが、同国は基本的にアルゼンチンなどからトウモロコシを輸入していること、および、チリ農業省の冬季における復旧支援も期待できることから、ほとんど心配はしていない。

2 豚肉処理施設についても、最大の問題であった電力供給が再開されて以降、市場への豚肉供給は正常化している。また、豚肉の主要輸出港であるバルパライソ港は地震による影響が少なく、サンアントニオ港は数カ所が被災したが現在は通常通り機能している。

3 輸出相手先からは、当初、供給体制などに関する問い合わせが殺到したが、輸出企業、PROCHELE(チリ外務省輸出促進局)や各国大使館が情報提供に努めた結果、2週間程度で事態は鎮静化した。

4 今年の輸出については、地震発生後は落ち込んだものの、需要の増加や為替環境の好転などから増加傾向にあり、通年では前年並み(約14万6000トン)には達する見込みである。今後は、日本や韓国といった主要輸出先に加え、米国やロシア、他の南米諸国などへの輸出をさらに拡大していきたい。

〇 酪農

 チリ生乳生産者連盟(FEDELECHE)からの聞き取り結果の概要は、以下の通り。

1 主要生産地域である南部に被害は見られなかったものの、第8州やサンチャゴ首都圏州の小規模酪農家を中心に搾乳場が一部破損するなどの被害が見られたが、現在では、正常の生産レベルに回復している。ただし、第7州や第8州のかんがい施設が相当程度破損したことについては、政府による今後の復旧支援に期待しているものの、当面の飼料供給体制に多少の不安を感じている(注)。

(注):豚肉業界に比べ酪農業界は第7州や第8州からのトウモロコシ供給に依存している割合が高いため、不安が大きいと考えられる。

2 生乳や乳製品の輸送に関して電力や燃料の不足が見られたが、現在は回復している。また、乳業処理施設への影響については、インフラ設備などに多少の被害が見られたが、被害のない工場に収乳を振り返るなどの対応を行っていたが、1〜2週間程度で正常に戻った。また、保管していたチーズなどの乳製品に多少の被害が見られた。

3 今年の輸出については、乳製品の国際価格が現在上昇傾向にあることから、主要輸出品目である全粉乳、コンデンスミルク、ゴーダチーズを中心に増加が見込まれる。今後は、メキシコやベネズエラといった主要輸出先に加え、アジア・アフリカ諸国などへの輸出を拡大していきたい。
【石井 清栄 平成22年5月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
Tel:03-3583-9805