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牧羊業は羊毛からラム肉生産へ(豪州)

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羊総飼養頭数は10年で4割減

 豪州農業資源経済局(ABARE)によると、2009年6月末時点の羊総飼養頭数は7200万頭と、この20年間で半減し、10年前と比べても37%減と、度重なる干ばつなどの影響により、1989/90年度 (7月〜6月)にピークを迎えて以来減少傾向で推移している。飼養頭数が減少する中、肉用子羊価格は、海外からの強い需要に支えられ上昇する一方、羊毛価格は、需要減により記録的な低水準が続いているため、牧羊業は羊毛からラム肉生産にシフトしている。そのため、種類別飼養頭数割合にも変化が生じており、1989/90〜2008/09年度の間で、去勢おす羊が大幅に減少し、羊総飼養数に占めるめす羊は55%から75%まで増加している。
種類別飼養頭数の割合

2008/09年度のラム肉生産量は1998/99年度比36%増、羊毛生産量は41%減

 2008/09年度の羊肉総生産量(ラム肉、マトン)は、1998/99年度比7%増の65万8000トンにとどまる中、生産の中心はラム肉にシフトしていることから、ラム肉が同36%増の42万3000トンとなったのに対し、マトンは同22%減の23万5000トンと減少した。一方、去勢おす羊の飼養頭数およびと畜頭数の減少から、羊毛生産量は、同41%減の40万4000トン、羊毛総輸出量(グリージー・ウール(刈り取ったままの脂付きの羊毛)、半加工ウールおよび羊皮を含む)は、同36%減の43万9000トンと、この10年で羊毛生産量、輸出量はともに大幅に減少している。
 また、羊肉総輸出量(ラム肉、マトン)も、同22%増の30万2000トンにとどまる一方、ラム肉輸出量の増加は著しく同92%増の15万6000トン、マトン輸出量は12%減の14万6000トンとなり、羊肉の中でもラム肉の割合が高まっている。
羊肉(ラム肉、マトン)と羊毛生産量の推移
羊肉(ラム肉、マトン)輸出量の推移
 ラム肉輸出量を国別にみると、米国向けが3万8000トン(シェア25%)、中国向けが1万3000トン(同8%)、EU、ドバイ、パプアニューギニア向けがいずれも1万1000トン(同7%)程度、日本向けが1万トン(同6%)となっている。
国・地域別ラム肉輸出量

羊肉・羊毛生産は、2012/13年度以降増加に転じる見込み

 ABAREが公表する主要農畜産業に係る見通しによると、2009/10年度の羊総飼養頭数(2010年6月末時点)は、前年度比約5%減の6800万頭と見込まれる。羊肉生産量については、ラム肉は同1.2%増の42万8000トンと微増するものの、全体ではと畜頭数の減少から同3.5%減の63万5000トン、羊毛生産量も同10.4%減の36万2000トンと、いずれも減少が見込まれる。
 しかし、ABAREは、中期的には羊肉価格が引き続き堅調に推移し、羊毛価格も緩やかに回復することにより、羊群の再構築が進み、羊総飼養頭数は2011/12年度以降増加に転じると予測している。このため、2012/13年度以降羊肉、羊毛ともに生産量の減少傾向に歯止めがかかり、一転して増加が見込まれ、2014/15年度にはそれぞれ63万トン、37万トンと2009/10年度の水準まで回復するとみられる。
 
【杉若 知子 平成22年6月30日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:岡田 岬)
Tel:03-3583-8693