畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2010年 > 南米の農畜産業をめぐる現地情報(2010年7月下期)

南米の農畜産業をめぐる現地情報(2010年7月下期)

印刷ページ

(アルゼンチン)

○ 2010年1〜5月の牛と畜頭数は、過去7年間で最低

 アルゼンチン地域畜産者連盟(AACREA)によると、2010年1〜5月の同国の牛と畜頭数は、前年同期比20.5%減の約507万頭と2003年以来最低となった。また、国家動植物衛生機構(SENASA)の口蹄疫ワクチン接種データによると、牛飼養頭数は繁殖用雌牛の減少などから、前年比10%減の約5000万頭とみられている。こうした中で、アルゼンチン農牧漁業省(Minagri)関係者によると、5年以内に牛飼養頭数は5200万頭台に回復するとしている。

○ インドがアルゼンチンからの大豆油輸入増加を発表

 インド大使(在アルゼンチン)は、同国の2010年における大豆油の輸入は、数量で約170万トン、金額で11億ドル(約968億円、1ドル≒88円)とそれぞれ大幅な増加が見込まれる中で、下半期以降は、特にアルゼンチンからの輸入が増加する見込みであると発表した。
 また、インド国内では、大豆油が2016年までに1700万トン、21年までには2600万トンの需要があるとされるが、今後、アルゼンチンは同国にとって大豆油の最大の輸入先になるだろうと述べた。
 しかし、SENASAによると、2010年上半期のアルゼンチンからインドへの大豆油輸出は、数量で前年同期比92.8%減の2,020トン、金額で同89.0%減の1537万7000ドル(約13億5000万円)と、現在のところは非常に少ない。

(ブラジル)

○ 2010年上半期の鶏肉輸出金額は前年同期比18.4%増

 ブラジル商工開発省貿易局(SECEX)によると、2010年上半期の鶏肉輸出は、数量で主要輸出相手先であるサウジアラビアや日本向けなどが増加したことから、前年同期比1.1%増の約164万7000トンとなった。一方、価格は輸出単価の上昇により、同18.4%増の26億6300万ドル(約2343億4000万円)となった。

○ 2010年上半期の牛肉輸出金額は前年同期比23.0%増

 ブラジル牛肉輸出産業協会(Abiec)によると、2010年上半期の牛肉輸出は、数量でイランやベネズエラ向けなどが増加したことから、前年同期比2.0%増の約97万2000トンとなった。 一方、価格は輸出単価の上昇により、同23.0%増の23億5200万ドル(約2069億8000万円)となった。

○ 大手牛肉パッカー、アマゾン地域で違法行為の農場を供給者リストから除外

 ブラジルの2大牛肉パッカーであるJBS社とマルフリグ社、またそれに次ぐミネルバ社は、アマゾン地域の自然保護区、インディオ居住地区、不法森林伐採地区で肉牛を飼養していた200以上の農場を同社らへの供給農場リストから除外することを発表した。その対象地域は国内最大の牛の飼養州であるマットグロッソ州のほか、パラ州、ロンドニア州、アクレ州に及ぶ。この措置は、昨年10月にJBS社ほかとマットグロッソ州、パラ州、検察省、そして環境保護団体のグリーン・ピースの間で約束されたアマゾン地域の不法森林伐採地域で飼養される牛の購入を中止する取り決めを受けた一環のものである。

○ 2010/11年の大豆の作付面積は過去最大の見込み

 一部農業部門アナリストによると、2010/11年の大豆の作付面積は、中国からの強い需要と国内トウモロコシ相場が低迷していることから、前年度比3%増の2405万ヘクタールになると予測している。一方、アルゼンチンは、トウモロコシとの輪作の関係で前年度比5%減の約1760万ヘクタールになるとみられている。

(チリ)

○ 政府、国境沿いの食品検査場を削減・整備へ

 チリ農業省農業牧畜局(SAG)は、現在53カ所ある国境沿い(陸海空)の食品検査場を12〜18カ所に削減し、統一的に整備する計画を明らかにした。SAGによると、チリには年間750万トンの食品が食品検査場を通じて輸入されているが、実質業務が行われているのは半分以下であるとされている。この計画は2011年から4年間で、整備費用は7〜9億ペソ(約1億2000〜1億5300万円、1ペソ≒0.17円)とされ、大型の倉庫や検査台が設置され、国際水準の検査技術が導入される予定である。

(寒波による農畜産物への影響)

○ アルゼンチン

・ サルタ州、フフイ州、エストロ デ サンチアゴ州、トゥクマン州など北部の州で野菜や果物を中心に被害
・ サルタ州やフフイ州では、トマト、ピーマン、ジャガイモ
  エストロ デ サンチアゴ州ではタマネギ、レタス
  トゥクマン州ではレモンやブルーベリーなどに被害
・ 2010/11年の小麦の播種作業に一部遅れ

 地方では、野菜や果物の価格に今回の寒波の影響が徐々に見られつつあり、ブエノスアイレス市などの大都市にもいずれ影響が出てくる可能性がある。


○ ブラジル

・ マットグロッソ デ スル州のパラグアイ国境近くにある牧場で合計2700頭の牛が凍死
・ サンタカタリーナ州の養鶏や養豚経営に係る光熱費が増加、ブラジル農務省(MAPA)は、養鶏農家にヒナの寒波対策を注意喚起
・ 業界関係者によると、今年のサトウキビ生産量は、予測されていた3750万トンから50万トン減少するとみられるが、糖度は高くなる可能性がある

○ パラグアイ

・ 1300頭以上の牛が凍死し、最近成長が顕著な同国の畜産業に深刻な被害をもたらすとみられる
ブラジル鶏肉とチリ豚肉
【 石井 清栄 平成22年7月30日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:岡田 岬)
Tel:03-3583-8693