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欧州委、生活困窮者への食料支援制度の改正案を採択

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生活困窮者への食料支援制度とは

 生活困窮者への食料支援制度とは、1987年に創設された、EUの農産物に関する介入買入在庫を有効活用し、生活困窮者に食料を無料で配布する制度である。制度の発足当初は、配布される食料は介入買入在庫のみとされていたが、介入買入在庫が常に活用可能とは限らないことから、1990年代半ばより、一時的に在庫が活用できない場合は同種の農産物を市場から調達することも可能とされた。しかし、2005年以降、活用できる介入買入在庫(牛肉、バター、脱脂粉乳、砂糖、米、穀物)が急減し、2008年5月の時点では、砂糖を除き介入買入在庫が解消された状態となったことから、同制度は2008年に再び見直された。この見直しにより、必要に応じて常時市場から農産物の調達が可能となると同時に、生活困窮者の増加予測に対応する形で予算も2009年より前年比6割増の約5億ユーロ(約565億円、1ユーロ=113円)まで拡充されることとなった。

制度改正案の概要

 このように、生活困窮者への食料支援制度は、欧州委員会の介入買入在庫の解消を一義的な目的として創設されたものであるが、関係筋からの情報によれば、欧州委員会は9月23日までに以下の項目を含む同制度改正案を採択したもようである。

・調達する品目の範囲を介入買入対象となる農産物またはそれと同種の品目以外にも拡大。
・より長期的な視点に立てるよう、事業実施計画を現在の単年度計画から3年計画に延長。
・EUの予算枠(5億ユーロ)を維持しつつ、EUの補助率を現在の100%から減少させ、加盟国側の負
 担という概念を設ける。

 この改正案は、今後欧州理事会と欧州委員会における同意手続きを経て2012年1月から実施に移されるとみられている。この改正案が実施に移されれば、介入買入在庫との関連が現在よりも希薄となり、これまでのような介入買入在庫解消の切り札としての役割が弱まる可能性もあることから、今後の動向が注目される。
【前間 聡  平成22年9月24日発】
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