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欧州委、09/10年度の生乳供給実績を公表

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超過はわずか3加盟国にとどまり、課徴金総額も1,900万ユーロと前年度の2割弱の水準

欧州委員会は10月29日、09/10年度における生乳供給量を公表した。EUの生乳クオータ年度は毎年4月1日から翌年の3月31日までとされ、各加盟国は9月1日までに前年度における自国の生乳供給量をEUに報告する制度となっている。これによれば、09/10年度に加盟国別に配分されたクオータを超過したのは、オランダ、デンマークおよびキプロスの3加盟国で、前年度の5加盟国から減少した。(図1)このように、クオータを超過した加盟国が減少したのは、2009年に顕在化した酪農危機の期間中、各加盟国の酪農経営において購入飼料の給与制限、経営離脱などが進んだことに加え、2015年3月末の生乳クオータ撤廃に向け、イタリアについては5%、その他の加盟国でも1%前年度よりクオータが拡大されたことが影響していると考えられる。なお、生乳クオータ超過の常連であったイタリアは、クオータ制度が導入された84/85年度以降初めてクオータの枠内に収まったことは注目される。
生乳クオーター超過
 一方、EU27全体でみると生乳供給実績は生乳クオータを6.9%下回ることとなり、未達率は前年度の▲4.2%からさらに拡大することとなった。なお、課徴金の水準は超過分100キログラム当たり27.83ユーロ(約3,145円:1ユーロ=113円)に設定されており、クオータを超過した3加盟国から徴収される課徴金の総額は1,900万ユーロ(約21.5億円)と前年度の9,900万ユーロ(約111.9億円)の2割弱の水準まで減少すると見込まれている。(図2)
EU27

チオロシュ委員は12月に行う提案への支持を期待する発言

 今回の数値の公表にあたって欧州委員会のチオロシュ委員(農業、農村担当)は、次のように語っている。
「公表された数値は、イタリアが最終的に自国のクオータ内に収めたことを確認するものとなったが、09/10年度は、多くの加盟国が証言するように極めて困難な市況であったとしてのみ記憶されることになるであろう。市場の危機を研究するために設置されたハイレベルグループを通じ、我々は現状を注意深く分析したところであり、クオータ制度が廃止される2015年に向け、酪農生産者が市場の動向により適切に対応するとともに、より安定した環境を確保することを可能とするため12月に行う提案が支持いただけるものと期待している。」
 既報(注)のとおり、欧州委員会はハイレベルグループ報告書に規定された7項目のうち優先的にかつ一体的に取り扱うこととされた、「生産者と乳業の契約関係」、「生産者側の交渉力」および「業種横断的な団体」の3項目に係る法案を年内に提出することとしており、これ対する欧州理事会、欧州議会の対応が注目される。

 

注:農相理事会、GMO問題、酪農乳業に関するHLG報告書などを議論

http://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_000236.html

 

参考:欧州委員会プレスリリース

http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/10/1454&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

【前間 聡  平成22年11月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:藤原)
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