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インドネシアの牛乳・乳製品需給事情と2010〜2011年の見通し

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 インドネシアの乳製品需給について現地での聞き取りおよび2010年11月に発表されたUSDAのレポートを基に報告を行う。なお、本レポートに使用する数字は断りのない限りUSDAアタッシェレポートによる非公式なデータであり、たとえば生産量等はインドネシア政府統計より寡少な値となっているので注意されたい。

世界の乳製品需給におけるインドネシアの地位

 インドネシアは人口2億4千万人と世界で4番目の大国であり、人口増加および経済発展に伴い乳製品に対する需要が増加すると見込まれている。
 一方、牛乳・乳製品の生産規模は国内需要に比較して十分ではなく、2009年の自給率は3割に満たない水準である。このため、供給の大部分を輸入に頼っており、特に脱脂粉乳については2009年の輸入量では178千トンと、世界全体の輸出量1,332千トン(FAOデータ)のうち13%のシェアを占めていることから、世界需給に大きな影響を与える需要国といえる。
 各国の政府統計によると、2007年のインドネシアの1人当たり年間消費量は11.1キログラムであり、同じくイスラム圏であるマレーシアの36.6キログラム(2006年)、ほとんど全量を輸入に頼っているフィリピンの16.6キログラムと比較して低い水準となっている。
(ちなみに2007年の日本の1人当たり年間消費量は93.3キログラムである)

インドネシアの牛乳・乳製品需給の概要

 インドネシア政府統計により2008年の需給をみると、生乳換算で国内生産量が65万トンに対し、輸入量が230万トンであり、消費量のうち国産は29%を占めるにすぎない。
 国内生産者は1戸あたり3~4頭程度を飼育する小規模経営が多く、生産される生乳のうち、95%以上がジャワ島で生産されている。飼料はほとんどすべてが自生する草および農産物副産物による自給飼料となっている。
 生乳の大部分は酪農協同組合(GKSI)を通じて、乳業メーカーに販売されている。乳業メーカーは少数の大手メーカー※に集中している。
 生産者価格については、生産者の代表であるGKSIと乳業メーカー団体である乳業企業協会(IPS)とが、前年の価格に国際脱脂粉乳価格を加味して算定された価格に基づき、交渉を行うことによって決定されている。

※Nestl社、Ultra Jaya社、Frisian and Flag社、Sari Husada社、Indomilk(Indolakto)社、Mirota社、Danon社などである。
表1 2008年の生乳需給

            単位:千トン

生産量

647

輸入量

2,295

輸出量

684

消費量

2,258

資料:インドネシア農業省"Livestock Statistics 2009"
注:消費量は生産量+輸入量-輸出量で計算
 
表2 生産者価格

単位:ルピア/kg

 

2010年

円換算

2008年

円換算

増加率

グレード1( 生菌数(TPC)25万以下/ml)

3,350

35

2,700

28

124%

グレード2( 生菌数(TPC)25〜50万/ml)

3,300

34

2,500

26

132%

グレード3( 生菌数(TPC)50〜100万/ml)

3,200

33

2,400

25

133%

資料:USDA FAS GAIN Report "Indonesia, Dairy and Products Annual Report"
注:100ルピア=1.03円で計算(2010年10月末TTSレート)
 
表3 インドネシア酪農・乳製品主要指標(2008年)
酪農家戸数

127

千戸  
乳牛頭数(1)

458

千頭 政府統計による。未経産牛、雄牛含む
乳牛頭数(2)

320

千頭 USDAによる。未経産牛、雄牛含む
搾乳年齢

2〜7

 
分娩間隔

14〜15

か月  
1頭当たり搾乳量

10〜12

リットル/日  
生乳生産量(1)

647

千トン 政府統計による
生乳生産量(2)

451

千トン USDA推計による
未経産牛価格

800

万ルピア 日本円8万2千円
経産牛価格

1100

万ルピア 日本円11万3千円
資料:聞き取りおよびインドネシア政府、USDA統計より、機構作成
注1:乳牛頭数のうち、搾乳牛は47%、未経産牛が31%、残りが雄牛と子牛とされる
注2:聞き取りでは乳牛頭数、生乳生産量はUSDAにやや近い回答であった(USDAより多い)
注3:100ルピア=1.03円で計算(2010年10月末TTSレート)
 

生産

 2010年の生乳生産量は年間53万トン(日量1,410キロリットル)と見込まれ、これは国内需要のおよそ25%を満たす程度である。
 2011年の生乳生産量予測は年間58万3千トン(日量1,550キロリットル)に増加するとみられる。
 2010年の搾乳牛頭数は345千頭であり、2011年には農家の新規参入や乳業メーカーの直営牧場の拡大により、370千頭に増加するとみられる。
 生乳の品質については菌数が25万を下回るグレード1に分類されるものは12%しかなく、多くはグレード3水準であるとされる。
 高品質の生乳および輸入粉乳は飲用乳や粉乳に、品質が良くないものは加糖れん乳に仕向けられている。

(2010年10月のムラピ山噴火等による生産への懸念)
 主産地のジャワ島のムラピ山が2010年10月に噴火したことから、畜産業への影響が懸念されている。現地報道によれば、ムラピ山周辺では約8000頭の乳牛が飼育されており、そのうち350頭が死亡、3000頭についても生命の危険があるとされている。降灰による飼料用草地への影響も懸念される。
 また、今年の秋は多雨となっているため、乳牛の疾病の発生も心配されている。

消費

 2009年の1人当たり年間の消費量は11キログラムであった。
生産量から推計した2010年の消費量はおよそ212万トンであり、2011年には5%程度増加するものとみられる。
 国内の消費形態は飲用乳、加糖れん乳、粉乳でそれぞれ26%、35%、39%を占めている。
 過去5年間の消費量の伸びでもっとも増加が著しいものは飲用乳であり、年率17%以上で増加している。一方加糖れん乳は5%の増加にとどまっている。
 消費者の購買力が低いことに対応するため、乳業メーカーは一般の飲用乳より生乳の割合が少ない飲料を販売している。また、単価を1本1000ルピー(10円程度)に抑えた少量規格の製品を販売するなどの工夫もしている。

貿易

 脱脂粉乳の輸入量は2010年が前年比18%増の21万トン、2011年には26万トンに増加すると見込まれる。2010年の世界全体の脱脂粉乳の輸出量140万トン(FAO推計)のうち、インドネシアの シェアは2010年に15%を占める計算になる(2009年は13%)。
 脱脂粉乳の主な輸入先国はニュージーランドや豪州であるが、価格が割高となっていることから、2010年には米国やオランダ、フランスからの輸入が増えており、輸入先トップは2009年のニュージーランドから2010年には米国へ入れ替わるとみられている。
 一方、2010年の全脂粉乳の輸入量は前年並みの5万トン、2011年には前年比20%増の6万トンになると予測されている。輸入先はニュージーランドが最も多く、豪州、欧州各国が続いている。
 2010年のホエイの輸入量は前年比18%増の7万6千トンと予想されている。輸入先は欧州各国(フランス、オランダ等)および米国である。
表4 脱脂粉乳の需給 表5 全脂粉乳の需給
単位:千トン 単位:千トン
   

2009

2010

2011

   

2009

2010

2011

期首在庫  

7

8

10

期首在庫  

6

6

6

生産量  

0

0

0

生産量  

56

62

68

輸入量  

178

210

260

輸入量  

50

50

60

輸出量  

5

6

7

輸出量  

0

0

0

消費量  

172

202

250

消費量  

106

112

127

資料:USDA FAS GAIN Report "Indonesia, Dairy and Products Annual Report 2010" 資料:USDA FAS GAIN Report "Indonesia, Dairy and Products Annual Report 2010"
注1:2010年は推計値、2011年は予測値 注1:2010年は推計値、2011年は予測値

政策

 政府は2014年までに牛乳・乳製品の自給率を50%に向上させる計画である。
 そのため、乳牛については、5年間で20万頭を輸入することとしており、乳牛の購入に対し低利融資(5%)を行うなど振興策を実施している。しかし、この融資プログラムについては、資格要件が厳しいことなどから、実際に利用されるかどうかは不透明である。
 また、インドネシアに乳製品を輸出する業者、インドネシア側で輸入する業者とも政府による許可を受けることが必要である。
 乳製品に対する関税は5%である。
写真 インドネシアジャワ島の優良酪農家の牛舎
写真 インドネシアジャワ島の優良酪農家の牛舎
【(代理)平石 康久 平成22年11月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:平石)
Tel:03-3583-9534