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欧州委、2018年までに豚の外科的去勢を自主的に終了する旨の宣言文を公表

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 欧州委員会保健・消費者保護総局(DG SANCO)は2010年12月16日、2018年までに豚の外科的去勢を自主的に終了する旨の宣言文を公表した。この宣言文には、養豚部門の生産・流通にかかわる主要な団体が署名を行っており、EUの養豚業界全体としてこの宣言の実行を約束した形となっている。 
 雄子豚に対する外科的な去勢は、性的な成熟に伴う獣臭を防止するとともに、飼養管理上問題となる発情行動や粗暴な行動を抑えるためEUでも広く実施されているが、近年、子豚に苦痛を与える行為としてアニマルウェルフェア上の懸念が高まっていた。このため、DG SANCOと2010年下期の議長国であったベルギーの指導の下、生産者、食肉業者、小売業者、科学者、獣医師およびNGOの代表が集うワークショップが3回開催され、今般の宣言文が取りまとめられたものである。 
 外科的去勢の終了までの具体的な手順としては、まず、2012年1月1日以降は、外科的な去勢を行う場合には持続性のある鎮痛剤、麻酔薬または両者の併用を認証された方法で行うこととし、続いて、2018年1月1日以降は、自主的に外科的去勢を「原則」終了することとしている。ただし、欧州委員会の認定制度である原産地呼称保護制度(PDO)、地理的保護表示(PGI)または伝統的特産品保護(TSG)の要件に適合する高品質の豚肉生産のために去勢が不可避な場合は、例外的に去勢が認められ得ることも宣言文中に言及されている。

法的拘束力のない「自主的な」終了であり、今後の実効性担保が課題

 この宣言文は草案の段階で法的拘束力のある義務的なものとする手法も検討の俎上に上ったが、最終的には養豚業界の「自主的」な約束という形で決着した。この点について、宣言文公表直前に意見交換を行ったある有力団体の関係者は、「自主的な枠組みであれば、我々は従わない方針。EUの豚肉産業は国際市場において第三国との競争にさらされており、EU域内のみが不利な取扱いとなる動きについては断固反対。EU市場においては、アニマルウェルフェアの基準を高めても、消費者は少しでも安価な食品を購入するため、追加的なコストを市場から回収できる構造になっていない。」と語っており、今後の実効性担保が課題であるとも言えよう。
【 前間 聡  平成23年1月14日発】
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