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農務省が2019年度までのアグリビジネスを予測(ブラジル)

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主要農畜産物の供給量は軒並み増加

 ブラジル農務省戦略管理室(AGE/MAPA)では、過去の国内外における関係機関のデータに基づく独自の算出方法で、2019/2020年度(2019年7月〜2020年6月)までの主要農産物の需給動向などを予測している。この予測はMAPAが目指す10年後のアグリビジネスの目標値ともとれることから、今後の発展方向を議論する上で重要な一つの指標になると思われる。 
 (参考)
 

品目別概要

○トウモロコシ

 現在と同様、東部、中西部および南部を中心に、生産量は7012万トン(2008/2009年度比(以下同じ)37.6%増)、輸出量は1262万トン(80.3%増)となり、アルゼンチンと並ぶ輸出国となる。増産の理由は作付面積(4.2%増)の増加もさることながら単収(32.2%増)の増加が大きい。
図

○大豆および大豆製品

 大豆の生産は引き続き、中西部および南部に集中し、生産量は8195万トン(43.5%増)、輸出量は3787万トン(37.2%増)となる。生産量および輸出量の増加は、作付面積が牧草地やほかの作物からの転用などにより2683百万ヘクタール(23.5%増)まで拡大することによる。また、単収も1ヘクタール当たり3.05トン(16.0 %増)と増加する。
 大豆かすと大豆油についても、食用と家畜飼料用の需要拡大を背景に、生産量(大豆かす2817万トン(25.3%増)、大豆油792万トン(39.2%増))、輸出量(同1364万トン(10.9%増)、同229万トン(52.7%増))いずれも大幅に増加する。
 

○食肉

 生産量および輸出量は、鶏肉が1663万トン(49.4%増)、609万トン(71.5%増)、牛肉が992万トン(26.7%増)、309万トン(82.8%増)、豚肉が395万トン(23.8%増)、83万トン(36.1%増)となる。鶏肉は国内消費量(43.3%増)も大きく増加する。
 増加の程度は主要農産物の中でも大きく、年率では鶏肉が生産量3.64%、輸出量4.16%、牛肉が同2.15%、同3.9%となる。
 

○生乳

 生産量は377.5億リットル(24.4%増)、輸出量は19.4億リットル(84.8%増)と大きく成長する。

○砂糖

 生産量は4670万トン(48.3%増)、輸出量は3220万トン(52.3%増)となり、依然として、世界最大の供給国である。

○エタノール

 中南部、北部および北東部に集中しており、生産量は629.1億リットル(127.4%増)、国内消費量は477.9億リットル(158.0%)、輸出量は151.2億リットル(223.1%増)となる。
 国内消費量の拡大やフレックス燃料車両の国内市場シェアが2017年には73.6%となるとの予測に基づいている。また、輸出量も海外の再生可能燃料需要の拡大から、大幅に増加する。
 

○小麦

 国内需要に生産量が追い付かず、輸入量は699万トン(13.5%増)となる。
表

海外の農畜産物需要の増加はブラジルの生産拡大に有利

 MAPAの予測は国内市場の成長とともに、海外市場ではさらに急速な需要の増加を前提としている。特に、人口の増加に農地面積の拡大が追い付かない国、消費に見合った在庫の確保が困難な国などは、主要穀物や家畜飼料は輸入に頼らざるを得ない。このため、このような動きは、生産余力と優れた技術を有するブラジルにとっては、農畜産物の生産拡大に非常に有利とされる。
 また、MAPAは、生産拡大のカギを、農地拡大ではなく生産性の向上としている。すなわち、二期作、二毛作など農地の効率的な利用により農産物の作付面積は2020年に約6970万ヘクタールとなり、この10年間で約970万ヘクタール拡大すると予測されている。内訳はトウモロコシが約100万ヘクタール、大豆が470万ヘクタール以上、サトウキビが約430万ヘクタール以上となると予測されている。
 今後10年間で継続して成長が見込まれる品目として、農産物は大豆とトウモロコシ、畜産物は鶏肉、牛肉が挙げられている。大豆とトウモロコシにおける増産分の52.0%、80.0%が輸出に仕向けられる。一方、鶏肉、牛肉は国内需要の増加から増産分の65.3%、77.0%が国内に仕向けられると予測する。さらに、食肉は引き続き輸出量が拡大し、国際市場の輸出占有率は鶏肉48.1%、牛肉30.0%、豚肉14.2%となるなど現在の分析では10年後も一大供給国であるとされる。
 
【星野 和久 平成23年1月17日発】
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