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米国農務省、2011年農業観測会議において主要畜産物の見通しを公表

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 米国農務省(USDA)は2月24〜25日、「Agricultural Outlook Forum 2011 」を開催し、2011年の米国における主要畜産物および飼料穀物の需給見通しを公表した。このうち、牛肉、豚肉、鶏肉および飼料穀物の見通しは下記の通りとなる。

牛肉:肉牛・牛肉ともに供給は減少

 2008年以降減少局面にあるキャトルサイクルは、今後の肉用牛生産の指標となる繁殖雌牛が前年を約2%下回っていることや、2010年の子牛生産頭数も1950年以降で最小となっていることから、飼養頭数の減少は今後も続くと見込まれる。

 2011年の牛肉生産量は、フィードロット飼養頭数の減少やと畜頭数の減少から前年を1.5%下回る1175万トンと見込まれる。また、輸出量は、前年比2%増の1066万トンと、アジア市場向けが引き続き好調が期待されるが、国内の供給が減少しているため輸出の拡大は限定的となるとみられる。

 このような中、生体牛の供給不足および輸出需要の増加により、主要5市場の肥育牛価格は100ポンド当たり平均102〜109ドル(キログラム当たり187〜199円:1ドル=83円)と前年の同95.38ドルをかなり上回る見込み。

豚肉:生産量は前年を上回る中、肥育豚価格は堅調で推移

 2年間続いた養豚生産者の赤字は、生産減や輸出増による需給ひっ迫により豚肉価格が堅調に推移したことから、2010年前半に解消した。しかし、2010年第4四半期には、豚肉価格の下落や飼料価格の高騰により収益は再びマイナスに転じた。

 2011年の豚肉生産量は、1頭当たりの枝肉重量の増加により前年比0.4%増の1021万トンと予測される。しかし、飼料価格の高騰が続く場合、2011年第4四半期には生産者は肥育豚を早期出荷するとみられるため、1頭当たりの枝肉重量は減少すると見込まれる。

 2011年の輸出量は、世界経済の回復や米ドル安の好輸出環境により過去最大となった2008年の記録を上回る前年比11%増の212万トンと見込まれる。さらに今後は、口蹄疫発生により豚肉供給が減少する韓国向け輸出が増加すると期待される。

 なお、2011年の肥育豚価格(赤身率51-52%)は、高値を記録した1982年を上回る100ポンド当たり平均58〜61ドル(106〜112円)となり、生産は増加するがそれを上回る輸出需要により堅調に推移すると見込まれる。

鶏肉:輸出量は前年に引き続き減少

 飼料価格高騰や需要の減退により生産者は2009年は自主的に減産を行ったが、2010年に需給が改善し、ブロイラー向けひなの導入羽数が増加したことから、2011年の鶏肉生産量は前年を1.0%上回る1692万トンと見込まれる。

 強い輸出需要およびドル安の追い風もあり、もも四分体の価格は堅調に推移する。しかし、2011年の輸出量は、年後半の減産に伴い価格が上昇するため、価格志向型市場での競争力が低下することから、前年を下回る302万トンと予測される。国別では、ロシアが関税割り当てを2010年の78万トンから35万トンに減少させたことから減少し、同国向けについてはブラジルなどの輸出国との競合が予想される。

 なお、2011年の鶏肉卸売価格(丸どり(中抜き))は、生産が多い前半は価格が抑えられるが、生産が減少する後半は前年の水準を上回り、平均では、前年の1ポンド当たり平均82.9セント(69円)より安い同80〜85セント(66〜71円)と見込まれる。

飼料:トウモロコシおよび大豆の生産量は前年を上回る

 トウモロコシについては、2011/12年度(2011年9月〜2012年8月)は、1エーカー当たりの収量が前年より8.9ブッシェル上回る161.7ブッシェル、作付面積が同380万エーカー増の9200万エーカーとなることから、生産量は前年を12億8300万ブッシェル上回る、137億3千万ブッシェルと予測される。

 総消費量は、エタノール向けが前年より5千万ブッシェル増の50億ブッシェルと、1990年代後半以降では最小の伸びとなる。ガソリンの国内消費が鈍化する中、米環境保護局(EPA)は2001年以降の車に対しエタノール混合率15%のガソリン(E15)の使用を承認したが、すぐには浸透しないというのが業界の見方である。飼料等向けは、豚向けや鶏向けは価格の上昇から、牛向けも飼養頭数の減少からいずれも減少し、合計では前年より5千万ブッシェル減の51億5千万ブッシェルとされる。輸出需要は強く、前年より5千万ブッシェル増の20億ブッシェルと見込まれている。

 期末在庫は、前年より1億9千万ブッシェル増となるが8億6500万ブッシェルと依然として低水準となることが見込まれている。また、1ブッシェル当たりの生産者平均販売価格は前年より0.2ドル(約17円)上回る5.60ドル(約465円)と予測されている。

 大豆については、中西部と東部の一部で収益の良いトウモロコシおよび綿花への作付転換が見込まれるものの、2011/12年度の作付面積は前年を60万エーカー上回る780万エーカーと見込まれる。1エーカー当たりの収量は前年より0.1ブッシェル減の43.4ブッシェルと前年より減少する一方、生産量は同1600万ブッシェル増の33億4500万ブッシェルと見込まれる。

 なお、1ブッシェル当たりの生産者平均販売価格は前年を1.3ドル(約108円)下回る13.0ドル(約1079円)と見込まれる。
【中野 貴史、調査情報部調査課 藤井 麻衣子 平成23年3月2日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:藤井)
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