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と畜時のBSEモニタリング対象月齢、72カ月齢超に引き上げ(EU)

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2011年7月1日から月齢引き上げが開始される

 欧州委員会は、リスク評価を実施する欧州食品安全機関(EFSA)の評価および各加盟国からの申請などに基づき、食用に供される牛のBSE検査対象月齢を、現行の48カ月齢超から72カ月齢超(EU25カ国対象。注1)へと引き上げた。切迫と畜(病気の場合など、緊急の場合にと場以外で行われると畜)またはと畜前検査で異常の見つかった牛については48カ月齢超(EU25カ国対象。注2)とした。また、検査方法については、72カ月齢超(EU25カ国対象。注1)の悉皆検査から無作為抽出検査とし、併せて検査数を減らすこととした。
 これらの見直しに関して、EUは2011年6月17日、委員会決定(2009/719/EC)を改正した。月齢引き上げは2011年7月1日から施行しており、抽出検査の実施については2013年1月1日から施行することとしている。
 
 2010年7月に公表された第二次TSE(伝達性海綿状脳症)ロードマップ(2010-2015)において、BSEサーベイランスの目標について「複数年にわたり、BSE有病率の動向を追うことにより、飼料規制および特定危険部位(SRM)の除去などのBSE対策の効果を把握し評価すること」とし、リスクに見合った検査対象とすることが明記されている。
 ロードマップに沿って、欧州委員会はEFSAに対し、加盟国におけるBSEリスク評価などを諮問し、EFSAから示された勧告内容は次のとおりであった。
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 2011年3月、フードチェーン・家畜衛生常設委員会はEFSAからの勧告を踏まえ、BSEモニタリング対象月齢の検討を行い、BSE症例を見逃す確率が1頭未満となる検査対象月齢である72カ月齢超を基準月齢として採用し、条件を満たす22カ国における健康な牛の場合の検査対象月齢を同月齢超へ引き上げることを決定していた。(注3)

見直しの背景には予算などの負担軽減も

 決定に至る背景としては、検査に必要となる人員および予算の負担軽減があるものと考えられる。イギリス環境・食糧・地域開発省(DEFRA)によると、検査対象月齢を72カ月齢超に引き上げた場合、2010年ベースで検査頭数が約27%減少するとされている。

 現地報道によると、EUの生産者団体は「今回の決定は、欧州の生産者や食品企業にとって喜ばしいものである。欧州では20年以上BSE問題に取り組み、BSE撲滅へ向け順調なステップを踏んでいる」とし、今回の評価で域内のBSEリスクが低減されていることが明らかになったことを歓迎した。

 なお、今回の見直しに際し、EFSAは「検査対象月齢を引き上げたとしても、ヒトへの暴露リスクが高まるものではなく、ヒトへの暴露リスクの観点からは、特定危険部位の除去が極めて重要である」とコメントしている。欧州委員会は、引き続き第二次ロードマップに沿ってTSE対策の見直しを検討していくことになり、現在では、飼料規制の緩和など踏み込んだ議論が行われている。EUの動向は、今後のBSE対策を考える上で先駆的な取り組みであることから、引き続き注目して参りたい。
(注1):
 2011年3月の段階では、チェコ、スロバキア、ポーランドについてはBSEの摘発が減少傾向とは確認できないため、また、ブルガリア、ルーマニアについては、EU加盟後間もないためデータの蓄積が十分ではないとの理由により、月齢引き上げ対象国から外れていた。しかし、2011年4月、EFSAは最新のデータを加味した再評価を行い、チェコなど3カ国については他加盟国と同等の措置が講ぜられることとなり、EU27カ国のうちブルガリア、ルーマニアを除いた25カ国が今回の対象となった。なお、ブルガリア、ルーマニアについては24カ月齢超のまま変更されていない。

(注2):
 注1と同様、25カ国については48カ月齢超、ブルガリア、ルーマニアについては24カ月齢超

(注3)
 「EU22、2011年7月よりと畜時のBSEモニタリング対象月齢を引き上げることに

【藤原 琢也 平成23年7月25日発】
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