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米国議会、米韓FTA実施法案を批准

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 米国議会は10月12日、通商政策上の長い間の懸案であった韓国、コロンビアおよびパナマとの3つの自由貿易協定(FTA)の実施法案を可決した。3つのFTAのうち最も経済効果の大きいとされる米韓FTAは、1994年の北米自由貿易協定(NAFTA)以来、最大の自由貿易協定とみなされている。
 これら3つのFTAはブッシュ政権時代、政府間では合意済みであったが、議会での批准を得るまでには至らなかった。景気が低迷し、失業率が高止まりする米国社会において、今回の可決は景気浮揚を促すきっかけとして高い期待が寄せられている。

紆余曲折を経てFTAを批准

 3つのFTAについては、共和党は経済的利益を享受できるとして概ね賛成していたが、民主党は労働者組合の反発などを考慮し慎重な姿勢をとった。労働者組合などの理解を得るため、オバマ政権はFTAに伴って輸入増などの影響により職を失った労働者を支援する貿易調整支援プログラム(TAA)を雇用支援法案に盛り込んだ。しかし、共和党は、「TAAは政策効果が乏しい」と主張し議会で協議が続いた。そのような中、10月13日の李明博韓国大統領の訪米に合わせて与野党間の調整が進み、民主党はTAAの規模を縮小するなど妥協案を提示し法案が上院で可決した。
 下院でも雇用支援法案の可決の目途がたったことから、オバマ大統領は10月3日、韓国、コロンビア、パナマとの3つのFTA実施法案を米議会に提出した。下院は12日に3つのFTA法案と雇用支援法案を可決し、同日の夜、上院においても3つのFTA法案を承認した。米国の批准を踏まえ、韓国議会でも批准の手続きが早急に進められることが期待されている。

高い農産物輸出が期待される農業界

 米国農務省によると、この3つのFTAが実施された場合、農産物輸出は年間23億ドル増、米韓FTAだけでも年間19億ドル増が見込まれる。農業団体からの期待は大きい。
 米韓FTAは締結後、米国の農産物輸出品の3分の2の関税が即時撤廃され、それ以外の農産物は、関税割当が適用される。
 食肉については、牛肉は現行の40%の関税が15年間かけて撤廃される。ただし、その間はセーフガードが設定される。1年目の輸入制限数量は27万トンで、年々拡大していき15年目の最終年には35万4千トンとなる。16年目以降は関税およびセーフガードは撤廃される。牛肉の副産物も現行の関税が15年かけて撤廃される。
 豚肉は、冷凍品と豚肉製品の90%以上が2016年1月1日までに関税が撤廃され、冷蔵豚肉はセーフガードが設定された上で10年かけて関税が撤廃される。
 米国にとって、韓国は牛肉の輸出先国として、現在4番手となっているが、米国でのBSE発生前の2003年は2番手であった。近年、韓国向け輸出が増加しているものの、2010年は2003年の水準の半分以下の数量に留まっている。現行の関税下であっても韓国向け輸出は伸びており、2011年1〜7月の累計では前年同期を55.6%上回っており、FTA締結後は更なる輸出が期待される。
 また、豚肉も韓国における口蹄疫の影響から輸出量は拡大傾向にあり、本年は1〜7月の7か月間で昨年の年間輸出量を既に超えている。FTA締結後のさらなる輸出増への期待は高い。
 米国食肉輸出連合会(USMEF)は米韓FTAが牛肉、豚肉業界に最大の恩恵を与えると米国議会の批准を高く評価している。
 我が国は米国にとって豚肉においては第1位、牛肉においては第3位の輸出先国である。韓国向け輸出が増えると想定される中、今後の日本向け輸出への影響を注視していきたい。
牛肉・豚肉の輸出
【中野 貴史 平成23年10月17日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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