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韓国の牛乳・乳製品需給の現状と今後の見通し(2011年11月現在)

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 韓国農村経済研究院(KREI)農業観測センターが11月25日に公表した2011年12月号の畜産観測(乳牛編)に基づき、韓国の牛乳・乳製品需給の現状と今後の見通しを報告する。

乳用牛飼養頭数は緩やかに増加

 2011年9月の乳用牛飼養頭数は、40万4,000頭(前月比0.2%増)と、3月以降回復基調となっている。なお、飼養戸数は6,100戸と減少はないことから、1戸当たり飼養頭数が増加しているものと考えられる。
 韓国では今年8月16日、酪農家と乳業メーカー間の乳価交渉に決着がつき、乳価が3年ぶりに改定されることとなった。この結果、基本乳価は1リットル当たり130ウォン引き上げられ834ウォン(約59円:11月末TTSレート100ウォン=7.06円で計算)となる。生乳生産割当量(クオータ)も、生乳不足を解消するため拡大されたことから、酪農家の生産意欲は増大している。
 基本乳価の引き上げに伴い、主要乳業メーカーは11月から小売価格を1リットル当たり138ウォン(10円)値上げしている。一部の乳業メーカーは引き上げた乳価以上に値上げしたため、生乳需要の低下の懸念はある。
 
 農家の生産意欲増大は、乳用牛の需要を高めている。初妊牛価格は上昇し、11月の価格は6月より1.5%上昇し、419万ウォン(約29万6千円)と、過去最高を記録した。
 KREIは、今後も乳用牛飼養頭数は増加するものと見ており、12月の飼養頭数は、40万5,000〜40万7,000頭、来年3月の飼養頭数は、40万6,000〜40万9,000頭に達すると予測している。ただ、飼養頭数の増加は緩やかで、口蹄疫発生前の水準に回復するには時間を要するものとみられる。
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表 乳牛飼養頭数の見通し

 

飼養頭数(千頭)

前四半期比(%

6

9

12

2012年3月

9月/6月

12月/9月

3月/12月

2011年(A)

403

404

405-407

406-409

100.2

100.2-100.7

100.2-100.5

2010年(B)

432

429

430

396

100.7

100.2

92.2

A/B(%

93.3

93.9

94.7-94.2

102.4-103.2

資料:韓国農村経済研究院(KREI)農業観測センター、統計庁
 
注:2010年および201169月は統計庁公表値、その他は農業観測センター推定値

生乳生産量も回復傾向

 2011年第3四半期(7〜9月)の生乳生産量は、前四半期比3.7%減の46万9千トンとなった。生産量の減少理由としては、乳価交渉時に一部の酪農家が、乳業メーカーの提示した乳価に反発し、集乳を拒否したためとしている。
 ただし、今後は、飼養頭数の増加とクオータの拡大により、生乳生産の増加が見込まれる。第4四半期(10〜12月)は47万〜47万5000トン(前四半期比0.2〜1.3%増)、2012年第1四半期(1〜3月)は48万1000〜48万6000トン(同2.2〜2.3%増)と見込まれ、口蹄疫の影響から緩やかに回復する見通しである。

粉乳の在庫ひっ迫により、輸入量は大幅増

 粉乳在庫量は、2011年に入り、前年を下回る水準で推移している。10月の粉乳在庫量は、生乳生産量の減少により在庫放出が増加し、前年同月比69.9%減の655トンと、依然としてひっ迫している。
 このため、粉乳の輸入需要が高まり、5月以降前年を大幅に上回る水準で推移し、10月の粉乳((HSコード:0402)輸入量は同2.3倍の2,150トンとなった。1 〜10月の累計では、既に前年累計を1.5倍上回っている。主な輸入先国は、ドイツ(シェア33%)、豪州(30%)およびオランダ(12%)である。
 今後、生乳生産量の増加が見込まれるものの、口蹄疫発生前の水準には達しないものと見込まれることから、引き続き、在庫の放出および輸入は増加するものと見込まれる。

 KREIは、韓米FTAの影響は、国内酪農産業だけで15年間合わせて5306億ウォン(374億円)に上ると試算した。また、一部の専門家は、「韓米FTAの影響を最も受けるのは酪農産業であり、特に粉乳、チーズおよびホエイの生産への影響が大きい。」と指摘し、政府に対し、国産乳製品の安定的な生産を確保する対策の必要性を強調した。
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【藤井 麻衣子 平成23年12月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532