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欧州委、2020年までの食肉需給の中期見通しを公表

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 欧州委員会は、2011〜2020年におけるEUの食肉需給に関する中期予測を公表した。公表された中期予測について、以下の通り概説する。

豚肉、鶏肉生産量は増加の一方、牛肉生産量は減少の見通し

 EUにおける食肉消費量は、人口増加などを背景に増加傾向で推移し、2020年には4269万トンと、10年間で2.8%増加すると見込まれている。1人当たりの年間食肉消費量は83.1キログラムと、10年間で大きな変化はないと予測されている。品目別にみると、豚肉41.6キログラム(2010年比0.9%増)、鶏肉23.6キログラム(同2.1%増)、牛肉15.8キログラム(同3.2%減)、羊肉2.1キログラム(同5.9%減)と、鶏肉の伸びが大きいと予測されるものの、依然として豚肉が食肉消費の半分を占めるとみられる。生産量についても同様に、牛肉、羊肉が減少する一方で、豚肉、鶏肉は増加傾向で推移し、2020年には食肉全体で4460万トンと、10年間で2.6%増加すると予測されている。

豚肉〜輸出は2013年がピークの見込み〜

 豚肉消費量は増加傾向で推移し、2020年には2139万トンと、2010年比で3.4%の増加が予測されている。消費量の増加を背景に、生産量は2335万トンと、2010年比で3.6%増加の見通しである。
 豚肉輸出量は2013年にピークに達した後、減少傾向で推移し、2020年には198万トン(2010年比5.4%増)になると予測されている。これは、世界的に豚肉需要が増加する中、短期的にはユーロ安によりEU産の競争力が高まるとみられるが、2013年以降は、ユーロの上昇やブラジルなどほかの豚肉輸出国の競争力の高まりが予測されるほか、中国、ロシアなど主要豚肉輸入国が自給率の向上に取り組んでおり、将来的に輸入需要の減少が見込まれるためとされる。
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鶏肉〜消費量、輸入量の増加が予測される〜

 鶏肉消費量は増加傾向で推移し、2020年には1212万トンと、2010年比で4.6%の増加が予測されている。EUでは「鶏肉はほかの食肉に比べて割安で健康的」とのイメージが強く、引き続き堅調な需要が続くと見込まれている。消費量の増加を背景に生産量も増加傾向で推移し、2020年には1240万トンと、2010年比で3.6%増加すると予測されている。
 EUは鶏肉の輸出を行っているが、EU域内では「ホワイトミート」と呼ばれる胸肉が一般的に好まれ、その需要に生産が追い付かないため、一定程度の輸入が必要となっている。2011、2012年の鶏肉輸出量は、ユーロ安によりEU産の競争力が高まり、アジア、アフリカ、中東諸国向けが増加すると予測されることから140万トンに達すると見込まれる。その後は減少傾向で推移し、2020年には110万トン(2010年比4.4%減)に減少すると予測されている。一方、輸入量は増加傾向で推移し、2020年には80万トンと、2010年比で7.2%増加の見通しである。
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牛肉〜消費量は減少傾向で推移の見通し〜

 牛肉消費量は減少傾向で推移し、2020年には812万トンと、2010年比で0.8%の減少が予測されている。生産量も減少傾向で推移し、2020年には805万トンと、2010年比で0.7%の減少が見込まれている。
 2011年の牛肉輸出量は35万トン(前年比37.3%増)と、前年から大幅増加の見通しである。これは、ユーロ安によるEU産の競争力の高まりや、主要牛肉輸出国のブラジルやアルゼンチンでの供給ひっ迫による輸出余力の低下などの影響とされる。2012年以降はユーロの上昇などにより25〜27万トンの水準で推移し、2020年には26万トンと、2010年比で3.5%増と予測されている。一方、2020年の輸入量は32万トンと、2010年比で1.3%増加の見通しである。
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【日高 千絵子 平成24年2月9日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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