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米国環境保護庁、バイオエタノール混合義務の免除要請を退ける

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 米国環境保護庁(EPA)は11月16日、アーカンソー州知事などが要請していた再生可能燃料基準(RFS)に基づくガソリンへのバイオエタノール混合義務の免除について、要請を許可しない決定を下した。

畜産関係団体や州知事など、バイオエタノール混合義務の免除を要請

 EPAは、バイオエタノールを主とする再生可能燃料の使用義務量を定めたRFSを設け、ガソリンに一定割合のバイオ燃料の混合を義務付けている。2012年のトウモロコシ由来のバイオエタノールの混合義務数量は132億ガロン(約50百万キロリットル)となっており、現在のところ2015年には150億ガロン(約57百万キロリットル)まで拡大する目標が設定されている。米国のトウモロコシのエタノール向け需要は、この混合義務数量の増加等により、国内のトウモロコシ需要の約4割を占めるまで増加してきた。
 この様な状況の中で、今年、米国は、70年来とも言われる干ばつに見舞われ、トウモロコシをはじめとする飼料穀物価格が高騰したことから、畜産生産者は大きな影響を受けている。全国養豚生産者協議会(NPPC)をはじめとする畜産関係団体は、このバイオ燃料政策により、米国産トウモロコシ需要の約4割をバイオエタノール生産に使用せざるを得ない状況がトウモロコシの需要構造をゆがめ、価格高騰を助長させ、畜産の経営環境を悪化させているとし、7月30日に連名でEPA長官に対しバイオエタノールの混合義務の免除を要請した。
 8月に入りEPAは、アーカンソー州知事などが行ったEPA長官に対する混合義務の免除要請を受け、削減・見直しに関する検討を行うこととした。また、これに併せて10月11日までパブリックコメントが実施され、29,000を超える意見が寄せられた。なお、最終的には10州の知事などにより免除要請が行われた。

EPA、バイオエタノール混合義務の免除要請を退ける

 EPAは16日、混合義務の免除要請について、干ばつがいくつかの経済分野に影響を及ぼしており、特に畜産業界への影響が大きいことは認識しているとしながら、混合義務の免除を行わないことを決定した。
 EPAは、今回の決定に当たり、RFSに基づくエタノールの混合義務が米国農業分野に与える影響については農務省と、エネルギー分野に与える影響についてはエネルギー省と共に経済的影響の分析を行っており、義務を免除した場合、農業分野についてはトウモロコシ価格への影響は1ブッシェル当たり7セント(トウモロコシ価格の1%にも満たない)程度であり、エネルギー分野については家庭のエネルギーコストへの影響はないとした。EPAは、2005年のエネルギー政策法では、州や地域、米国の経済に著しい損失を与える場合にあっては、混合義務の免除を行うことが認められているが、今回の分析ではこの基準を満たす証拠が得られなかったとしている。なお、EPAは、2008年にもテキサス州知事から混合義務の免除要請を受けたが、これを退けている。
【前田 絵梨 平成24年11月19日発】
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