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欧州委、農業・食品チェーンにおける健康と安全基準の更なる強化のための措置を採択

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 欧州委員会は2013年5月6日、全ての農業・食品チェーン(連鎖)における健康と安全基準の更なる強化のための措置について採択した。

 健康と消費者担当委員のTonio Borg氏は、この措置パッケージについて「農業・食品部門は、EUでは2番目に大きな経済部門であり、4800万人を超える雇用と、年間7500億ユーロ(97兆5000億円:1ユーロ=130円)の価値を生み出している。EUは、世界で最もレベルの高い食品安全基準を設定しているが、最近発覚した馬肉混入事件※は、消費者の健康を害するものではなかったものの、規則に改良の余地があることを示した。本日採択されたこの措置パッケージは、新たな課題に対応し得るものである。このパッケージを一言でいうと、より安全な食品のためのスマートなルールを提供するものである。」と述べた。

 ※本年1月15日にアイルランド食品安全局が牛肉バーガーの成分を分析したところ、製品から馬肉のDNAが検出された。その後、アイルランドのみならず、英国、フランスなどでも食品表示とは違う原料が含有されていることが発覚し、いわゆる「馬肉混入事件」としてEUで問題となった。これに対して、消費者から食品の安全性を確保するためのの改善策が求められていた。

措置パッケージの主旨および概要

 現在のEUにおけるフードチェーン(食品の生産・流通過程)に関しては、約70もの規則により管理されており、食品業界などにとっては、各種手続きが煩雑かつ分かりにくく、結果として流通過程などで問題が生じていた。
 このため、リスク管理の徹底に重点を置きつつ、現在の規則をより近代的かつ簡素化することで、生産者や流通業者などにとって手続きが分かりやすくかつ簡略化し、より効果的な食品の管理手法になるとしている。

公的管理(Official Controls)

【提案の背景】
・欧州委員会は、加盟国がEU規則に適合するための確認手法として、検査・試験などを強化する必要があることを認識
・最近の食品問題は、事業者の違反行為により生じるリスクから消費者を保護するための効果的な仕組みの必要性を示すもの

【提案の目指す方向】
・現行の規則を明確かつシンプルにすることで、一つの枠組みの中でフードチェーンに関係する規則を集約化。また、新たな枠組みの下で、リスク管理に重点を置きつつ、関係者が各種の問題に対して集中的に対応することが可能

【主な改正点】
・特定の部門については、それぞれの必要性に合わせて調整(例えば食肉検査、オーガニック製品、アニマルウェルフェアなどの管理)
・加盟国における管理状況の透明性をより確保するため、一定の条件下において消費者が確認できるよう「違反業者」などの情報公開の許可
・管理が適切に遂行できるよう、零細企業を除き手数料の徴収対象を拡大
・EU域外から輸入される動物および動物製品など対する共通の枠組みを策定
・動物および動物製品など対する残留医薬品検査の効率化
・国境を越える犯罪に関する加盟国間の支援および協力のさらなる強化
・システムなどの整備による情報管理の強化

家畜衛生(Animal Health)

【提案の背景】
・「予防は治療より有効である」という原則に基づき、家畜衛生についても規則を策定
・個体識別システムの強化により、疾病の発生などにおいてフードチェーンに関係する生産者や獣医師などの関係者の迅速な対処、疾病拡散の防止、家畜および消費者への影響を最小限にとどめることを可能
・EUレベルでの家畜疾病について、優先順位をつけることにより、よりリスクに基づいた対処が可能
・事業者の規模、タイプ(例えば、中小企業、趣味用など)や地域の特性に配慮し、家畜の登録に関する必要条件については、柔軟性が必要
・重大な気象変動や未知のリスク、新たな科学の発展や国際基準の変更など広範囲な事項に対し、EUとして効果的な対応を可能とするため、柔軟性かつ強固に対応することが必要

【改正の目的】
動物衛生に係る規則について、1つの法律40の指令に組み替えることで、よりシンプルかつ柔軟性を持たせるとともに、加盟国が共通のシステムおよび基準を持つことで、消費者の健康や食品および飼料の安全性の強化に取り組むことが可能

【主な改正点】
・リスク管理により重点をおいた動物衛生への対応
・疾病への対応強化
・登録疾病に対する予防の強化
・管理負担および疾病による経済的損失の軽減
・管理者(生産者)および獣医師の役割・責任の明確化
・動物衛生管理者(所有者)に第一義的責任の転嫁

次のステップ

 欧州議会、欧州理事会を含むEUにおけるその他の機関によって、欧州委員会の措置パッケージは検討され、それぞれの機関の意見が反映される。現在のところ、本パッケージは2016年に発効となる見込みである。

原文:http://ec.europa.eu/dgs/health_consumer/pressroom/animal-plant-health_en.htm
【矢野 麻未子 平成25年5月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際グループ)
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