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EU、農産物振興の強化として2億3000万ユーロ(約329億円)の拠出を発表

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 欧州委員会は4月29日、EU域内外への農産物振興に対するEUの負担として2億3000万ユーロ(328億9000万円:1ユーロ=143円)の拠出を発表した。これは、4月1日に欧州閣僚理事会および欧州理事会がEUの農産物振興政策の暫定的合意に達したことを受け、加盟国から申請が出ていた20のプログラムが承認され、これに該当する予算として2014年からの3年間で4億650万ユーロ(664億9500万円)の約50%となる部分をEUが負担するもの。
 EUは、以前から農産物振興を支援するため予算を設けているが、今後、市場拡大に向けて農産物振興政策の強化を決定しており、具体的な措置内容について2013年11月に欧州委員会から法案が提出され検討が行われていた。なお、今回の予算は、前期(2011年からの3年間)の予算額6100万ユーロ(87億2300万円)から大幅に増加している。
 欧州委員会は農産物振興政策について、EUの農産物は品質および多様性に秀でたものであるとしながらも、単に素晴らしい農産物を生産するだけでは不十分であるとし、農産物振興プログラムを通じて各国の消費者に対しEUの基準、品質などを十分に説明することで、市場の拡大、競争力強化につながるとしている。
 なお、4月1日の暫定的合意に際し、欧州委員会のダチアン・チオロシュ農業・農村開発担当委員は「EUにとって潜在的な経済成長をもたらす農業部門を振興させるものであり、EUの農業生産者および納税者にとって朗報」とし、「諸外国の新たな市場確保に寄与するもの」と述べている。

○プログラムの概要
 承認された20のプログラムは、12がEU域内市場を対象、8がEU域外を対象としたものであり、実施期間は2014年から3年間となる。主な内容は、EU域内外に対してEUの農産物の情報提供などに助成を行うものであり、支援対象は生産者団体としている。
 特に今回、注目される点としては農産物の安全性やアニマルウェルフェアへの配慮などに加え、原産地呼称保護(PDO)、地理的表示保護(PGI)、伝統的特産品保護(TSG)の啓蒙活動に力が置かれている。
 ※原産地呼称保護(PDO):特定の地域で、認められた方法により生産、処理、調理された食品
 ※地理的表示保護(PGI):生産、処理、調理の少なくとも1段階で特定の土地と結びついている食品
 ※伝統的特産品保護(TSG):地理的原産地に関わらず、組成や生産方法の伝統的な性質を重視した食品
 なお、同政策の最終的な合意は、今年9月の欧州議会および欧州理事会の承認が予定されている。

○今後の動向
 EUは、2010年に「欧州2020」とする政策を掲げ、世界の消費需要の90%はEU域外市場にあり、今後のEUの発展には海外市場への進出が不可欠であるとして積極的な通商交渉を行っている。
 近年のEUの主な貿易交渉としては、
 ・2011年7月、韓国と自由貿易協定(FTA)を発効
 ・2013年3月、タイとFTA交渉を開始
 ・2013年10月、カナダと包括的経済・貿易協定(CFTA)交渉で基本合意
 ・2013年11月、中国と投資協定に向けた交渉を開始
 ・2013年7月、米国と貿易・投資パートナーシップ(TTIP)交渉を開始
 するなど、市場拡大に向け積極的な動きが目立っている。
 また、我が国とも2013年3月にFTAに向けた交渉を開始しており、今年4月4日に第5回目の交渉が東京で行われたばかりである。安倍首相が4月29日から5月7日にわたって欧州諸国を訪問しており、現地では、今後の日・EUのFTA交渉の進展につながるのではとの期待が持たれている。
【矢野 麻未子 平成26年5月1日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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