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NZの畜産経営者の意向調査、収益悪化見通しが継続

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 ニュージーランド(NZ)の生産者団体である、NZ農業者連盟は7月、NZの農業経営者の向こう6カ月程度の経営見通しについての意向調査結果を発表した。同調査は、年2回、NZの会計年度(7月〜翌6月)の始期となる7月および年度中期の1月に実施されているものであり、収益性見通し、生産見通しなどについて、以下、「酪農」および「食肉・羊毛」別に概要を紹介する。

収益性見通し、酪農は「悪化」が大勢、食肉・羊毛も「悪化」が増加

 まず、今後の収益性見通しについては、酪農、食肉・羊毛ともに「悪化」が最大となっている(図1、2)。これは、世界経済の悪化懸念、NZ国内の気象環境の悪化(北島ワンガヌイ地方の洪水、南島北カンタベリー地方の干ばつ)が影響している。
 酪農については、前回に比べ減少したものの、依然として70%の酪農家は、「悪化」見通しとしている。これは、2015/16年度の乳価は前年度に比べわずかに回復しているものの、乳製品国際価格が引き続き低水準となっていることが影響している。
 食肉・羊毛については、2014年は前向きな見通しとなっていたものが、前回2015年1月の調査以降、「悪化」見通しが増加している。これは、2014年末から、牛肉・羊肉価格が下落するとともに、NZ国内の多くの地域で乾燥気候が見られ、早期に出荷する傾向が高まってと畜頭数が増加し、価格がさらに下落していることが関係している。
図1
図2

生産見通し、小幅ながら「増加」が減少

 次に、生産見通しについては、酪農、食肉・羊毛ともに「増加」が「減少」を上回っているものの、前回に比べ「増加」が減少している(図3、4)。こちらも収益性見通しと同様に、気象条件の悪化と乳価や牛肉価格などの下落、さらにそれに伴う補助飼料給与量や飼養頭数の減少が要因としている
図3
図4

今後の最大の懸念事項は、商品価格の推移

 さらに、農業経営に係る懸念事項についても調査が行われている。酪農、食肉・羊毛ともに、商品価格が最大の懸念事項とされており、特に酪農では、回答の半数近くを占めている(図5、6)。次に、酪農、食肉・羊毛ともに、「諸規則・法令対応」となっており、これは、農業を含む労働現場での安全管理に係る法令がNZ国内で議論になっていることが影響しており、加えて、農業経営に関する水質の維持や水使用量の割当などの規制も関係している。また、酪農、食肉・羊毛ともに、産業特有の問題も上位に挙げられており、これは、フォンテラ(NZの最大手乳業メーカー)の度重なる乳価の引き下げや、食肉産業の長期的な縮小傾向が影響しているとみられる。その他、気象条件や収益性などが主な懸念事項となっている。
図5
図6

政府への主な要望は、規則や経済政策

  最後に、政府への主な要望事項についても調査が行われている。酪農、食肉・
羊毛ともに懸念事項と同様に、「諸規則・法令関係」が最大の要望事項となっている(図7、8)。次いで、金融、財政、貿易などの経済政策が続いている。
 そうした中、興味深い動向として、酪農における海外からの投資規制が、経済政策に次ぐ主要項目となっている点が挙げられる。これは、海外からの資本の農場購入について、近年、政治的な議論が活発になっていることが表れている。特に酪農場の購入を行う海外資本は、加工、販売までの統合化を目指していることが、懸念を高める一因になっているとみられている。
図7
図8
【根本 悠 平成27年7月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9806