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NZ最大手乳業フォンテラ、生産者乳価引き上げ〜乳製品国際価格上昇を受け〜

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 ニュージーランド(NZ)最大手の酪農協系乳業メーカーであるフォンテラ社は9月23日、2015/16年度(6月〜翌5月)の生産者乳価の支払見込みを、乳固形分1kg当たり3.85NZドル(300円、1NZドル=78円)から4.60NZドル(359円)に上方修正すると発表した(図)。8月の大幅な引き下げからわずか1カ月で、19.5%の引き上げとなった。
 この結果、フォンテラ社が最終的に生産者に支払う乳固形分1kg当たりの金額は、配当金1株当たり0.40〜0.50NZドル(31〜39円、前回から変化なし)と合わせて、5.00〜5.10NZドル(390〜398円)程度になる(注)。

(注)通常、生産者は生乳出荷実績に応じてフォンテラ社の株式を取得する(乳固形分1kgに対して1株)。このため、最終的に生産者に支払われる金額は、生産者乳価に配当金を上乗せした金額となる。
図
 今回の生産者乳価の引き上げについて同社は、今年の7月以降、乳製品国際価格が回復を続けていることを理由に挙げている。NZの主要輸出乳製品である全粉乳と脱脂粉乳について、グローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の 電子オークション、月2回開催)における1トン当たり平均価格を見ると、2015年9月15日の最新の入札結果は、最安水準を記録した同年7月15日の入札結果からそれぞれ40%、57%上昇している。今回の乳製品国際価格の上昇は、生乳生産が今後減少する兆候が見られたためとされており、国際的な乳製品需要の回復はまだ先とされている。
 同社は、2015/16年度の集乳量(生乳生産量に相当)について、直近の数週間で前年同期比8%以上減少していることを受け、前回発表(前年度比2%減)からさらに下方修正し、同5%以上の減少が見込まれると発表した。
 これについて同社は、厳しい経営環境の中で生産者の増産意欲が低下し、乳用牛飼養頭数や濃厚飼料使用量の減少が続いていることを要因に挙げている。こうした経営環境の厳しさを反映して、同社が8月に導入を発表した生産者向け無利子融資には、既に約7000軒の農家(NZ全体の約7割に相当)による申込があったとしている。
 また、同社の発表について、現地報道では、依然として損益分岐点を下回る生産者乳価ではあるものの、生産者にとっては安心材料となるだろう、といった専門家の見解が紹介されている。専門家の中には、為替相場が引き続きNZドル安・米ドル高で推移すれば、今年度の生産者乳価は乳固形分1kg当たり5.00NZドル程度まで回復するとみている者もおり、総じて今後の乳価回復に期待を寄せる声が多い。
【竹谷 亮佑 平成27年9月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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