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豪州VIC州の酪農家、2014/15年度の収益は大幅に減少

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 豪州の酪農団体デーリー・オーストラリア(DA)は9月、ビクトリア(VIC)州の酪農家の経営動向についての調査報告書を公表した。
 これは、VIC州政府の経済開発・雇用・運輸・資源省とDAが共同で、同州の3地域(北部、南西部、ギプスランド地域(位置関係は図参照))の各25人の酪農家を対象に、経営動向や今後の生産見通しなどについて聞き取り調査を行ったもので、今年で9回目となる。VIC州は、豪州の生乳生産全体の6割以上(約600万キロリットル)を生産する酪農の中心地で、生乳の大半は、輸出用乳製品に仕向けられており、乳製品売上は、豪州の乳製品輸出額の8割以上を占めている。
図
 同報告書によると、2014/15年度(年度は7月〜翌6月)の酪農家の金利税引前利益(注)は、いずれの地域も歴史的に高水準であった前年度より低下し、平均で24万4511豪ドル(約2078万円、1豪ドル=85円、前年度比34%減)と大幅に減少したものの、良好な収益にある。

(注)Earnings Before Interest and Taxesの略称で、EBIT(イービット)と呼ばれる。経常利益に支払利息を加え、受取利息を差し引いて求める。利払い前の税引き前当期利益のこと。

 これを乳固形分1キログラム当たりでみると、表の通りとなり、地域によっては実質的に収益が半減したところもあった。また、総資本利益率(ROA)は5.3%(前年度比3.2ポイント減)、自己資本利益率(ROE)も5.4%(同6ポイント減)と、ともに低下した。
表
 収益の減少について、同報告書では、(1)年間降雨量が前年度を下回り平年の7割から9割程度にとどまった上、特に春先の降雨量が減少したことで牧草の生育が滞ったこと、(2)乳製品国際価格が低迷したことで生産者に支払われる乳価が前年度より1〜2割程度低下したことが背景にあるとしている。
 2015/16年度の収益見通しについては、酪農家の2割が「改善する」と回答したのに対し、「変わらない」との回答が4割、「悪化する」との回答が3割以上に及んだ。また、生産見通しについては、半数以上が「増加する」と回答しており、「変わらない」と回答したのは約3割、「減少する」との回答は1割強にとどまった。
 今後の経営課題について、当面(向こう12カ月)の懸案事項としては、天候の見通しや乳価に加えて「労働力」を挙げる声が多く、労働資源の確保や管理が酪農家にとって重要になりつつあるとしている。また、長期的な(向こう5年の)懸案事項としては、乳価、資産管理、事業継承といった課題を挙げる酪農家が多かった。
【竹谷 亮佑 平成27年9月29日発】
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