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米国・英国の大手でん粉企業、欧州市場での事業を拡大

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最終更新日:2017年4月18日

 米国に本拠を置き、世界各国に展開する大手食品企業であるADM(Archer-Daniels-Midland)社(注1)、同じく英国を拠点とするテート&ライル(Tate & Lyle)社(注2)は、相次いで欧州市場を中心とした事業の拡大を発表した。

(注1)ADM(Archer-Daniels-Midland)社は、米国拠点に、世界展開する農業関連製品・食品原料などの製造企業。428の原料供給地、280の原料加工工場はじめ、世界160カ国以上に展開。
(注2) テート&ライル(Tate & Lyle)社は、英国拠点に、世界30カ所以上で事業を展開する食品・飲料関連原料製造企業。


 

ADM社、フランスの小麦でん粉製造企業の買収案を発表

 ADM社は3月、フランスの食品原料総合企業であるVivescia Industry社(注3)と、同社傘下の小麦でん粉製造企業であるChamtor社(注4)の買収に関する交渉の開始を発表した。ADM社は「西欧市場は、欧州のでん粉とその関連製品の市場の70%を占める。Chamtor社は、欧州の小麦生産地帯の中心に位置しており、とりわけフランス、ドイツ、ベルギー、オランダにおいて、でん粉や甘味料といった製品を提供するのに最適である。」として、今回の買収提案の意義を強調している。一方、Vivescia Industry社も「売却が実現すれば、Chamtor社は、ADM社にとって唯一の西欧での小麦でん粉製造工場になる。ADM社の地理的拡大と製品多様化という戦略の中心になるであろう。」として、売却に前向きな意向を示している。
 なお、本買収に当たっては、フランスの法律上、Chamtor社の労働者代表に対する通知と協議が必要とされており、実現は夏ごろになるとみられている。ADM社は近年、ハンガリー、ブルガリア、トルコ、モロッコで、でん粉製造工場の買収などを相次いで実施しており、今回の買収が実現すれば、欧州のでん粉市場の周辺部から中心部まで、事業拡大を進めることになる。

(注3)Vivescia Industry社は、麦芽製造、小麦粉製粉、トウモロコシ加工などを行う食品原料などの製造企業。
(注4)Chamtor社は、Vivescia Industry社傘下の小麦由来のでん粉、糖化製品、タンパク製品の製造企業。

 

テート&ライル社、欧州などで、新たなタピオカでん粉製品の販売を開始

 テート&ライル社は4月3日、クリーンラベル製品(注5)の需要の高まりを受け、新たなタピオカでん粉製品(商品名:クラリア・ブリス)の欧州、中東、アフリカ地域での販売開始を発表した。
 同社は、今回販売を開始する自社製品をアピールしつつ、その背景について言及している。これによると、「Innova社(民間調査会社)の調査によると、欧州では、クリーンラベル製品と定義された食品数は、急激に増加している。例えば、2014年から2016年の間に、冷蔵デザート製品では54%、調理済み食品では39%、それぞれ増加している。また、欧州の消費者の86%は、消費者自らが認識していない原料が含まれる食品・飲料については、加工品とみなしている。」としている。すなわち、欧州では「クリーンな」食品への需要が高まっている一方、原料次第で、「加工品」とみなされ、場合によっては「クリーンではない」という印象を消費者にもたれる傾向があることを示している。
 そうした傾向を受け、テート&ライル社は「タピオカは、クリーンな風味、色合い、テクスチャー、非遺伝子組み換え、グルテンフリーといった観点で、製造企業や消費者から好まれており、タピオカでん粉市場は拡大を続けている。」としており、こうした市場の動向が、今回、新たなタピオカでん粉製品の販売を開始した背景にある。
 なお、欧州はキャッサバ(タピオカでん粉の原料農産物)の主産地ではないため、製品自体は東南アジアなどのキャッサバ主産地から調達するものとみられるが、詳細については言及されていない。

(注5)クリーンラベルは、一般的に、表示が単純明快で、いわゆる人口甘味料、化学合成物質などの添加物を利用しておらず、「ナチュラル、ヘルシー、クリーンな原材料」のみを利用している食品に対して使われる呼称。


【根本 悠 平成29年4月18日発】
 
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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