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最大手乳業、3工場の閉鎖と緊急支援措置の廃止を発表(豪州)

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 豪州最大の酪農協系乳業メーカーであるマレーゴールバン(MG)社は5月2日、集乳量減少に伴う収支悪化を受け、国内に10ある同社の乳業工場のうち、3つを閉鎖すると発表した。閉鎖されるのは、Rochester工場、Kiewa工場(ビクトリア(VIC)州)、Edith Creek工場(タスマニア(TAS)州)の3工場。
 同社の主要な集乳地域であるVIC州北部には3つの工場があったが、今回、チーズやホエイ加工を主とするRochester工場と、クリームチーズと飲用乳加工を行うKiewa工場の2工場(同地域の集乳量の約4割となる、約35万キロリットルを処理)が閉鎖され、残るCobram工場に集約されることとなる。これは、同地域における同社の今年度の集乳量が、酪農家による生乳供給先の切り替えや生乳の減産の影響を受け、前年度比で3割以上の減となる70万キロリットル程度と見込まれていることが、背景にあるとみられる。
 また、UHT牛乳や加工乳の製造を行っていたTAS州のEdith Creek工場についても閉鎖され、同州内の生乳加工は、残るSmithton工場に集約される(図)。
 
図 MG社の乳業工場の所在地
図 MG社の乳業工場の所在地
資料:機構作成
注:赤丸囲みは主な集乳地域。●は乳業工場であり、今回閉鎖されるものは黒、存続するものは青で示した。
 3工場の閉鎖予定時期は、Edith Creek工場が2017年末、Rochester工場が18年初頭、Kiewa工場が18年末で、これにより従業員360名が解雇される。
 また、同社は、2016年5月に開始した緊急支援措置(Milk Supply Support Package)(注1)を、2017年6月末をもって廃止すると併せて発表した。これに伴い、生産者からの回収不能額は1億4800万豪ドル(127億円:1豪ドル=86円)に上るとしている。工場閉鎖に伴う従業員への退職金の支給や、生産者支払乳価維持のための支出(注2)などを足し合わせていくと、追加支出は合計で4億1000万豪ドル(353億円)に達するとしている。
 同社代表は、今回の一連の決定について、地域住民を含めた多くの関係者に影響を与える難しい判断ではあったものの、同社が再び競争力を取り戻し、豪州の酪農乳業を再興する上では避けて通れないものであるとして、その重要性を強調している。なお、VIC州南西部のKoroit工場に、約2億6000万豪ドル(224億円)を投じて行うとしていた、栄養調製粉乳の加工・処理施設の増設については、予定通り進めるとしている。
 現地報道によると、この発表について、閉鎖対象となった工場が立地している地元の議員や首長は、地域社会への影響は深刻なものとなるとして、相次いで懸念を表明しているほか、一部の酪農家や、従業員ら労働組合による抗議の動きも見られている。

(注1)緊急支援措置
  •  2016年4月の生産者支払乳価の引き下げと併せてMG社が発表したもので、2015/16年度の最終的な生産者支払乳価に、同社が借入金を財源として上乗せし、実際の酪農家への支払額を乳固形分1キログラム当たり5.49豪ドル(472円)とするもの。
  •  当初、同社はこの借入金について、生産者支払乳価から一定額を向こう3年間控除する形で回収し、返済財源に充当するとしていた。しかし、支援を受けた後に同社への生乳供給をやめた分については、供給を続ける酪農家の負担となることとなっていたため、酪農家の間で不公平感が募ることとなった。このため同社は、2016年10月末、回収金額に上限を設定したり、控除を一時的に停止したりといった見直しを実施していた。
(注2)生産者支払乳価
  •  2016/17年度の生産者支払乳価について、同社は、乳固形分1キログラム当たり4.95豪ドル(426円)との見通しを示していたが、これについては、約6400万豪ドル(55億円)の追加支出により下支えを行い、現行の見通しを維持するとしている。
【竹谷 亮佑 平成29年5月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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