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NZ一次産業省、畜産物需給見通しを公表

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 ニュージーランド(NZ)一次産業省は6月15日、2020/21年度(7月〜翌6月。ただし、生乳生産量は6月〜翌5月)までの一次産品の需給見通しを公表した。このうち、乳製品と牛肉の需給見通しについては、以下の通り。

【乳製品】2016/17年度生乳生産量、天候の回復を受け上方修正

 2016/17年度の生乳生産量については、前回予測時(2017年3月)では、天候不順に伴う牧草の生育不良や生産者乳価の低迷に伴う酪農家の生産意欲の減退により、前年度比2.5%減を見込んでいたものの、天候の回復により牧草の生育環境が改善し、3、4月の生産量が前年を上回ったことから、乳固形分ベースで185万トン(前年度比0.6%減)とわずかな減少にとどまると見込んでいる。2017/18年度については、生産者乳価の上昇や1頭当たり乳量の増加に伴い、同189万トン(同2.2%増)を見込んでおり、その後も生産者乳価が堅調に推移すると見込まれることから、増加傾向で推移と見込んでいる。
 2017年6月末時点の乳牛飼養頭数は、生産者乳価が2016/17年度の後半に上昇し、牧草の生育環境も改善しているものの、前年並みの519万頭(前年比0.2%減)と見込まれている。その後も2020年までほぼ横ばいで推移すると見込まれている。これは、これまで乳牛飼養頭数、生乳価格の上昇を背景に増加傾向で推移してきたものの、価格に対する懸念と水質汚濁防止を目的とした環境規制が乳牛の増頭を抑制するためとしている。
 
 2016/17年度の乳製品輸出については、輸出量は、生乳生産の停滞により326万トン(前年度比0.9%増)とわずかな増加にとどまるものの、輸出額は、乳製品国際価格の上昇に伴い146億4000万NZドル(1兆2151億円、1NZドル=83円、同10.2%増)とかなり増加すると見込まれている(図2)。2017/18年度についても、輸出量はわずかな増加にとどまるものの、輸出額は、最大の輸出品目である全粉乳の価格が堅調に推移し、次いで多いバターの価格も引き続き高い水準で推移することから、173億2000万NZドル(1兆4376億円、同18.3%増)と大幅に増加すると見込まれている。2018/19年度以降は、生乳生産量の増加に加え、乳製品国際価格が引き続き堅調に推移することで、輸出量・額ともに増加傾向で推移すると見込まれている。
 

【牛肉】2016/17年度牛肉生産量は減少も、その後は増加傾向

 牛のと畜頭数に占める乳牛の割合は4割程度を占めており、牛肉生産量は酪農経営の情勢の変化に大きく影響を受ける傾向にある。2014/15および2015/16年度の牛肉生産量は、生産者乳価の低迷により乳牛の淘汰が増加したことから70万トン近い水準に達したものの、2016/17年度は、生産者乳価の回復に伴い乳牛の淘汰が減少したことで、62万トン(前年度比7.9%減)と2012/13および2013/14年度並みの水準に落ち着くと見込まれている(図3)。2017/18年度以降の牛肉生産量は、国際的な需要の高まりを受けて牛肉輸出単価が比較的高く推移すると見込まれる中、と畜頭数は、乳牛が2016/17年度並みで推移する一方、肉牛が増加していくことで、増加傾向で推移すると見込まれている。
 
 2016/17年度の牛肉輸出量については、前年度に輸出量の5割弱を占めた米国向けが、同国の生産量の回復に伴う需要の減少により、39万トン(同9.3%減)とかなり減少した。輸出額は、輸出量の減少に加え、輸出単価も下落していることから、26億4000万NZドル(2191億円、同14.7%減)と大幅に減少すると見込まれている(図4)。2017/18年度以降は、中国向けを中心に輸出量が増加していくとともに、国際的な牛肉需要の高まりにより輸出単価も上昇し、輸出額は増加傾向で推移すると見込んでいる。2017年には、これまで冷凍牛肉に限定されていた中国に対し、新たに冷蔵牛肉の試験輸出を開始される予定である。冷蔵牛肉は付加価値の高い商品が中心となっていることから、中国向け冷蔵牛肉輸出が、輸出額の増加に寄与すると期待している。
 
【大塚 健太郎 平成29年7月5日発】
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