国際情報コーナー 農畜産物全般、畜産、野菜、砂糖、でん粉の海外情報、輸出促進対策などの記事、統計

ホーム > 国際情報コーナー > 海外情報 > 海外情報(砂糖) > 砂糖の短期的需給見通しを公表(EU)

砂糖の短期的需給見通しを公表(EU)

印刷ページ

最終更新日:2017年7月21日

 欧州委員会は2017年9月29日にプレスリリースを行い、50年近くにわたって砂糖の生産調整機能としての役割を果たしてきた砂糖の生産割当が9月30日をもって廃止されることと、EUの砂糖部門の現況などを以下のとおり伝えた。
 
 生産割当は、1968年に共通農業政策(CAP)における砂糖に関する最初の制度として、砂糖の最低支持価格と同時に導入された。
 同割当の廃止は、2006年から始まった砂糖制度改革の後を受けた2013年のCAP改革において決定された。
 同割当の廃止に備えて、製糖業者をはじめとするEUの砂糖部門は、2006〜2010年に54億ユーロ(1ユーロ=135円:7290億円)の助成を受けて再編整備された。
 同割当の廃止により、販売機会に合わせた生産が可能となり、てん菜生産者、製糖業者、輸出業者による現行の生産調整に係る事務的な負担などが減ることになる。
 
 欧州委員会のホーガン欧州委員(農業農村開発担当)は、同割当の廃止は、EUの砂糖部門の重大な分岐点を意味し、市場志向性に舵を取るCAPの試金石の一つとなると述べた。さらに、砂糖業界は同割当の廃止が決まった時から、利益を獲得する機会に備えて体制を整えていたとし、特に製糖業者にとっては世界市場で取引を拡大するチャンスであり、欧州委員会が提供する砂糖市場観測サイト上のタイムリーな市場関連情報を利用して、そのチャンスをつかむことができるとした。
 
 EUの砂糖部門に対するCAPによるさまざまな支援は、想定外の市場の変動に対して継続される。これには、関税による安価な輸入製糖の流入制限や、民間在庫に対する補助の他、市場価格の急激な変動に対応した支援策などがある。
 また、てん菜生産者に対する直接支払いによる収入の補償や、加盟国が任意で実施できるカップル支払などもある。
 さらに、てん菜生産者と製糖業者の契約におけるてん菜と砂糖の価格連動による利益を共同で享受に関する条項について交渉する可能性は、同割当の廃止後も維持される。
 欧州委員会は、てん菜生産者と製糖業者が取引を効果的に行えるように、前述の砂糖市場観測サイトによって、統計情報と短期的分析を提供し、同割当の廃止に備えて市場の透明性を向上させた。
 
 なお、EUは、世界の半分を生産する主要なてん菜糖生産地域であり、その多くは、気候が生育に適した欧州北部で生産される。ただし、てん菜糖は世界の砂糖の2割であり、残りの8割はサトウキビから作られる。EUには輸入サトウキビを精製する部門もある。


【調査情報部 平成29年10月6日発】

2016/17年度は、生産量は増加も在庫は減少

 2016/17年度の砂糖生産量は、前年度比13%増の1680万トンになると見込まれている。また、期末在庫は、130万トンと見込まれ、これは低い水準とされた前年度を33%下回る。
 EU平均砂糖価格は、2017年1月まで上昇傾向にあったが、3月に1トン当たり495ユーロ(6万4845円)を付けた以降は、同水準で推移している。価格が上昇傾向で推移してきたのは、EU市場における供給量が比較的少なかったことや、世界的に需給がひっ迫していたためである。
 2016/17年度の世界的な需給バランスは、国際砂糖機関(ISO)によると、590万トンの不足とされ、2年続けて供給が需要を下回ることになる。
 

2017/18年度は、生産割当廃止で増産

 国際砂糖価格は、需給ひっ迫により2015年末から2017年2月にかけて上昇し、EU平均価格を上回る1トン当たり513ユーロ(6万7203円)に達したが、それ以降は下落している。
 価格が下落した理由は、(1)パキスタンで、生産量が予想を上回って増加したこと、(2)ブラジルで、2月中旬以降、レアルが米ドルに対して安く推移した上、ガソリン平均価格が引き下げられたことからエタノールに比べて収益性が高まった砂糖の生産量が増えたことなどから、2017/18年度の生産量が消費量を上回る見通しとなったためである。EUにおいても、2017/18年度に生産割当が廃止され、生産量が増えることから、国際価格の下落につながると考えられる。
 同年度の砂糖の国際需給バランスは、260万トンの余剰となると考えられている。
 

てん菜作付面積、大きく拡大

 2017/18年度のてん菜の作付面積は、生産者が、生産割当という制約のない最初の作付けをしている中、現時点で著しく拡大していることが観察されており、前年度比16%増の174万ヘクタールに達するとみられるが、2013/14年度比では5%増にとどまる。
 これは主に「砂糖ベルト」と呼ばれる主要生産地帯に位置するベルギー、フランス、ドイツ、オランダ、ポーランドが新たな市場開拓のために作付面積を大きく拡大している一方、その他の加盟国では5年平均程度の水準となったためである。てん菜の生産は、主産地への集中傾向が強まっている。
 てん菜の生産量や糖分含有量は、夏の天候により左右されるが、現時点では気温が平均より高く乾燥しており、てん菜の栽培にとっては比較的良好な天候となっている。こうしたことから、2017/18年度の単収は、1ヘクタール当たり73.4トンと、5年平均を3.8%上回り、砂糖生産量は前年度比19.6%増の2010万トンとなると見込まれるが、2014/15年度との比較では3%増にすぎない。
 2017/18年度の輸入量は、EU平均価格の下落により国際価格との差が拡大することから、同49%減の150万トンと見込まれる。
 一方、同年度の輸出量は、域内消費量が大きく変わらないものの、供給量が増えることから、前年度の2倍となる280万トンと見込まれるが、国際価格に対するEU価格の動向による影響を受ける。なお、生産割当の廃止に伴い、WTOの裁定により設けられた輸出上限は撤廃される。
 以上により、2017/18年度の期末在庫は、前年度から2割程度減少し、100万トンと見込まれる。
 
砂糖の短期的需給見通しを公表(EU)
【調査情報部 平成29年7月21日発】
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527