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EUにおける砂糖の生産割当廃止で各国の業界が声明などを発表

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最終更新日:2017年10月11日

 9月30日をもって廃止されたEUの砂糖の生産割当に関連して、欧州砂糖実需者委員会(CIUS)(注1)とブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注2)は、相次いでコメントを発表した(注3)

CIUSは一定の評価も一層の自由化を要求

 欧州砂糖実需者委員会(CIUS)は9月29日、EUにおける砂糖の生産割当が9月30日をもって廃止されることに関して声明を発表した。
 CIUSのロバート・ギチャード代表は同声明で、生産割当廃止を歓迎するとともに、「生産割当の廃止は、生産者、砂糖産業および砂糖実需者などの砂糖のサプライチェーン全体にとって重要な転機であり、新たな市場環境で利益を得られるよう、各者が適合していくべきである。各者がリスク管理方法を熟知し、対処すれば、予測されている一時的な砂糖の供給増を統御し、国際市場での地位を強固なものにできる」と呼び掛けている。
 また、WTOの裁定により設けられていた輸出制限も生産割当とともに撤廃されることから、「欧州の全製糖企業が国際的な販売網の拡大に成功することを願う」としている一方で、10月1日以降も継続される甘しゃ粗糖輸入に対する各種制限については、「不釣り合いな枠組みであることから、できる限り早く是正されるべきであり、甘しゃ糖精製企業とてん菜糖企業が公平に競争することが望ましい」としている。さらに、「将来締結するすべてのEUの貿易協定において、いくつかの品目の関税が撤廃され、域内の在庫量が低水準となった際、域外から直接的にアクセスできるようになることを期待する」としている。
 ギチャード代表は、「適正な貿易バランスと砂糖を含む高付加価値の食品および飲料の輸出拡大により、欧州の業界は利益を得ることができる」とし、「各国内、欧州内および世界の市場での競合が強まる中で我々が成功し続けられるかどうかは、競争性のある砂糖が安定的に供給されるかどうかにかかっている」としている。

UNICAは自由貿易協定(FTA)の進展に期待

 世界最大の砂糖生産国であり輸出国であるブラジルのサトウキビ産業協会(UNICA)も10月2日、ジェラゥジネ・クタス主席国際顧問のコメントを公表した。
 これによると、EUが砂糖の生産割当を廃止する一方、輸入関税などの貿易制度を継続することについて、(1)国際的な需要が高まる中、EUの食品産業やその他の化学産業などの原料である砂糖の価格が高くなる、(2)EUの輸入業者や甘しゃ糖精製企業に損害を与える、(3)国際的で公正な貿易の支持者としてのEUの名声を傷つける、(4)EUの砂糖産業が真に競争力を獲得することを妨げる、(5)EUの消費者が支払う砂糖の価格が自由貿易によって輸入された場合に比べて高くなる−といった「絶対的な犠牲」が伴うと指摘している。
 また、「生産割当を廃止するだけでは、EUの砂糖産業が商業主義に走り、余剰砂糖を安値で輸出する可能性がある」と懸念している。さらに、「メルコスール(南米南部共同市場)との貿易交渉は、EUの砂糖産業のみならず消費者や川下の産業も利益を享受できる、競争性があり公正な砂糖制度を構築していく上で好機となる」とし、「EUは強い貿易相手とともに貿易環境を改善できるこの好機を生かすべきである」と、メルコスールとしてFTAの交渉妥結への期待感を示している。
(注1)欧州の食品や飲料などを製造する1万5000社以上の砂糖実需者を代表する委員会。
(注2)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注3)欧州委員会による砂糖の生産割当廃止に関する発表は、「砂糖生産割当が終了(EU)」を参照されたい。
    URL:https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002038.html


【丸吉裕子 平成29年10月11日発】

 
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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