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ロシア向け牛・豚肉の輸出停止に伴う現地の反応(ブラジル)

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 ブラジルのロシア向け牛・豚肉輸出は、ロシアが使用を禁止しているラクトパミンがブラジル産から検出されたことを受け、12月1日から停止しているところだが、現地の業界はそれに対して真摯に対応する姿勢を見せつつ、政府間交渉による早期再開に期待を寄せている。

 ブラジル牛肉輸出業協会のアントニオ・カマレディー会長は、「ロシア向けの牛肉に対して、ラクトパミンが使用されていなかったことを証明するために、徹底的に調査する」と述べている。また、ブラジル動物性タンパク質協会(ABPA)は、当機構の取材に対して、「ロシアへの輸出は、凍結する港が増えるため例年1月を中心に減少することから、被害は最小限に抑えられると思う。また、今回ラクトパミンの混入を指摘されたパッカーについては、ラクトパミンを使用している豚とそうでない豚とでと畜、加工する工場を分けていることから、混入の可能性は限りなく低いと考えている。いずれにしても、政府間交渉により、早期に輸出が再開されるよう期待している」とコメントした(図1)。
図1
 ブラジルの牛・豚肉輸出市場においてロシアは非常に重要な市場で、豚肉においては全体の4割近くを占める最大の輸出先であり、牛肉についても12%で香港、エジプト、中国に次ぐ第4位の輸出先国となっている(図2、3)。また、豚肉に関してはロシアにとっても、2014年8月以降、欧米諸国からの豚肉輸入を禁止する中、ブラジルへの依存度を高めており、2016年には輸入量の9割以上をブラジルが占めるまでになっている(図4)。  報道によると、今回の停止措置はロシアが豚肉や家きん肉を中心に食肉の生産量を増加させる中、豚肉の国内生産力をさらに強化したいという思惑に加え、ブラジルへの小麦輸出を開始するための交渉材料としたいという思惑もあるとされている(図5)。事実、ブラジル政府は12月13日、国内の輸入業者がロシア産小麦を輸入する際に必要な手続きに関する政令を公表しており、ロシアにとってはブラジルへの小麦輸出に向けて一歩前進したといえよう。
図2
図3
図4
図5
【佐藤 宏樹 平成29年12月27日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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