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オランダ、乳用牛のリン酸塩排出権システムの運用を開始

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 オランダ政府は1月1日、酪農部門から排出されるリン酸塩の排出権を酪農家間で売買できるリン酸塩排出権システムの運用を開始した。

 開始に先立ち、欧州委員会は、2017年12月19日、本システムはEU統一市場における競争条件を歪めるものではないことを確認したとして、本システムを承認した旨をプレスリリースしている。

 本システムの目的は、乳用牛のふん尿に含まれるリン酸塩の排出量がEUの基準値を超えないように抑制するとともに、土地に立脚した酪農への移行を推進することとされる。

 オランダでは、乳用牛の飼養密度が高く、ふん尿に含まれるリン酸塩の排出量がEUにより認められた基準を2015年、2016年と2年連続で超過し、欧州委員会から警告を受けた。このため、政府は、リン酸塩排出削減計画を策定し、2017年12月までリン酸塩の排出削減事業を実施し、目標の達成は確実視されている。

 本システムでは、新たに各酪農家は、2015年7月2日時点の飼養頭数に基づいて政府からリン酸塩排出権(年間で排出できるリン酸塩の量(キログラム単位))が配布される。ただし、その時点で十分な土地を有していなかった経営にあっては、排出権は最大8.3%減らされる。各酪農家は、毎年末、排出されたリン酸塩の量に見合う排出権を保持していることを証明することが求められる。
現行のEU法の下では、酪農家は排出されたふん尿に含まれるリン酸塩をすべて営農する土地に還元する義務はないが、本システムは、自ら営農する土地(借地を含む)に許容される範囲内で酪農を認めるものとなっている。

 本システムでは、リン酸塩排出権の売買が可能となり、新規就農者や増頭を希望する酪農家は、離農する酪農家や減頭を計画している酪農家などから排出権を購入することができる。ただし、相続の場合を除き、排出権の10%は税金のように徴収され、政府(企業庁)が運営する「リン酸塩銀行」に移管される。
 移管された排出権は、同国全体の排出量がEUの基準を超えそうな場合は「リン酸塩銀行」に留保され、基準値まで余裕がある場合は、十分な土地を有する酪農家に対して無償で配布されるといった調整を行うことにより、土地に立脚した酪農を推進する。
【調査情報部 平成30年1月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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