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EUがブラジルの食鳥処理工場20カ所からの輸入を禁止へ

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 欧州委員会は、5月14日付けの官報に、ブラジルの食鳥処理場や加工場など20カ所(表1)について、EUに動物由来製品を輸出できる施設のリストから削除する旨の規則を掲載した(EU2018/700)。この規則は5月16日から効力を有する。

 このEU規則は、2つの出来事に言及している。一つは、2017年3月以来、ブラジルの複数の施設に由来する鶏肉や鶏肉調製品に、サルモネラ菌に汚染された例が相当数あり、ブラジルの当局に通報したが、対策が不十分であったという。もう1つは、2018年3月、ブラジル当局からの情報提供によると、EU向け食肉輸出に対する検査施設の認証に関して不正が発覚した。捜査は継続中であるが、EU向けに輸出するBRF社とSHB社の施設に改善されるという保証はないとしている。
表1
 この結果、68工場あった鶏肉のEU向け輸出認定施設の約3分の1に当たる20工場が今回認定を取り消され、うち12工場がBRF社およびその関連会社であるSHB社の施設となっている。
 一方、ブラジル農牧食糧供給省(MAPA)は、3月16日から、BRF社のEU向け輸出認定施設10工場における衛生証明の発行を中止(事実上の輸出停止)していたものの、4月17日に、認証の不正を起こしたとされるBRF社の3工場以外の措置を解除していた。

 ブラジル側は、輸出が制限されるような技術的な問題は存在しないという立場を取っており、ブライロ・マッジ農牧食糧供給大臣は、「本来であれば、サルモネラの問題に関わった3工場からのみ輸入禁止すればよいのであり、EU側はこの状況を利用して我々を市場から閉め出そうとしている」と主張している。また、今般のEUの規則はWTO協定に違反するとして、提訴する姿勢を見せている。しかし、ブラジルの貿易紛争を担当していたMAPAの生産・防疫担当の前次官であるネト氏は、WTOへの提訴は、「ブラジルの弱点を晒す」リスクがあり、ひいては、ブラジル食肉産業の国際的なイメージを再構築する努力を台無しにする可能性があるとしている。

 なお、ブラジルからのEU向け鶏肉輸出は、関税割当のある加塩鶏肉が主流であり、2017年の加塩鶏肉の輸出先を見ると、チリ向けを除いてほとんどがEU向けで、数量、金額ともに98%以上を占めており、影響は大きい(表2、3)。また、EUでは、輸入された加塩鶏肉のほとんどは加工用に用いられ、域内産がテーブルミート用となっている。
表2,3
参考
【佐藤 宏樹  平成30年5月18日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805