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新農業法でMPPが変更される(米国)

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 2018年12月20日、2019年農業法にトランプ大統領が署名した。新農業法では、農家への補償制度が拡充されたほか、口蹄疫ワクチンの備蓄などの家畜衛生対策も強化された。中でも、酪農業界からは、酪農家のセーフティネットである酪農マージン保護プログラム(MPP)が改善されたことを高く評価する声が目立った。このため、MPPの変更点の概要について記述する。
 制度の名称は、Margin Protection Program (MPP)からDairy Margin Coverage (DMC)に変更された。
190124海外情報表1
 保障の対象数量を決定する保障率は、前制度では過去3年間のうち最大の年間生乳出荷量の25〜90%の間で5%刻みでそれぞれの酪農家が選択できることとなっていたが、今回の変更で対象とできる割合が5〜95%に拡大された。
 また、マージンがどの程度低下した場合に補てんが発動されるかの基準となる保障水準は、前制度では100ポンド当たり4.0〜8.0ドルの間で0.5ドル刻みでそれぞれの酪農家が選択できたが、その上限が同9.5ドルに引き上げられた(500万ポンド(2265トン)以下の部分に限る)。ただし、500万ポンド以下の保障水準に8.50〜9.50ドルを適用した場合、500万ポンドを超える分の保障水準は、8.00ドル以下から選択する。
 さらに、保険料(掛け金)の単価が表2のとおり変更された。なお、2019年の加入時に決定した保障内容(保障率および保障水準)を2023年まで変更しないことを条件に、掛け金が25%減額されることとなっている。
 なお、2018年から毎月行われるようになった補てんの発動の判断は、引き続き毎月実施される。

190124海外情報表2
 制度が改められるに当たり、これまでMPPに加入していた酪農家は、掛け金として積み立てた金額の一部返還を受けることができるとされている。返還金額は、返還金をDMCの掛け金に充当する場合には掛け金の総額から既に受領した補てん金額を差し引いた額の75%、現金で受け取る場合には同50%となる。
 また、新制度の下では、これまで認められていなかったLGM-Dairyとの同時加入が、認められることとなった。


(参考1)MPPにおけるマージンの推移
190124海外情報表3
(参考2)2014年農業法におけるMPPの概要については、畜産の情報2016年3月号「米国の酪農マージン保護プログラム(MPP)の現状と今後の課題」を参照。http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2016/mar/wrepo01.htm
 
【渡辺 陽介 平成31年1月24日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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