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1〜4月のベトナムの豚肉輸入額、前年同期比で約7倍に

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 ベトナム農業・農村開発省(MARD)の統計によると、2019年1〜4月の豚肉の輸入額は、前年同期比6.7倍の2359万米ドル(約25億円、1ドル=108円)に大幅に増加した(図1)。また、牛肉で同38.0%増の2億2845万米ドル(約247億円)、家きん肉で同49.1%増の8212万米ドル(約887億円)と、いずれも大幅に増加した。
図1 ベトナムの豚肉、牛肉、家きん肉の輸入額
 米国農務省(USDA)のレポートによれば、ベトナムでは2月19日に初めてアフリカ豚コレラ(ASF)が発生して以来、急速に感染が拡大し6月17日時点で58の省と市で発生している。このうち、15の省では、初発後、30日間発生がなかった省での再発である。また、ASFの感染は大規模農場にも広がっているとしている。
 ASF発生後、ベトナム国内の豚の飼養頭数の約9.4%に当たる263万7051頭が殺処分されたとしている。
 さらに、ベトナム統計総局によると2019年5月の飼養頭数は前年同月比で5.5%減少したと推計されている。
 6月4日の時点で、MARDはASFによる被害額を3.6兆ベトナムドン(約166億円、1ベトナムドン=0.0046円)と推定している。

 ASF発生後、ベトナム政府及び地方自治体では、以下の対応策を講じている。
・国内移動制限
・封じ込め及び/または保護区域の内側/外側におけるサーベイランス
・隔離
・淘汰
・施設などの消毒
・ワクチン接種許可(ワクチンがあれば)
・患畜を治療対象としない

 しかし、ベトナムにおけるASFコントロールには以下のような課題がある。
 (1)国内の飼養頭数の49%に当たる1380万頭が約250万戸の小規模な農家で飼育されており、小規模農家では、依然として適切に処理されていない食物残渣を餌として与え、ASF感染のリスクを高めている。
 (2)埋却スペースがないためにASFに感染した豚を適切に処分できずに、養豚農家が自ら豚を処分し、河川などの安全でない場所に投げ捨てているため、さらにASF拡大のリスクを高めている。

 また、政府は、豚肉や豚肉製品の買い控えが起きないよう消費者向けに豚肉は安全であると説明しているものの、企業や学校などでは豚肉製品の使用をやめているところもある。
 さらに、今後の供給確保のため豚肉の備蓄を推進しているものの、ベトナム国民の新鮮な肉がおいしいと考える消費習慣により冷蔵や冷凍肉が売れない可能性がある。なお、多くの消費者は豚肉から他の食肉に消費を切替えたり、高価ではあるものの、伝統的な市場(ウェットマーケット)ではなく、スーパーマーケットなどの小売店から豚肉を購入したりするなどの対応をしているとのことである。

 MARDの統計によれば、ASFが流行しているにも関わらず、2019年1〜4月の豚肉の輸出額は、前年同期比78.6%増の2482万米ドル(約27億円)と増加した(図2)。しかし、今後についてはASFの発生によりベトナム産の輸入を禁止する国・地域が増えていることで、輸出額の伸びは減速の傾向になると見られている。
図2 ベトナムの豚肉の輸出額
【小林 智也 令和元年7月2日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389