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大規模牛肉加工処理施設で火災発生(米国)

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 全米最大の牛肉パッカーであるタイソン社が所有するカンザス州の大規模牛肉加工処理施設が、8月9日の夜に発生した火災により操業を停止した。同施設の1日当たり処理可能頭数は6000頭であり、これは同施設が位置するカンザス州の処理可能頭数の23.5%、全米の処理可能頭数の6%に相当する。なお、現在のところ、出火原因は調査中である。
 同社は12日のプレスリリースにおいて同施設の無期限休止と再建計画を公表したものの、市場はすでに反応を示しており、同日のシカゴ相場において、生産者の牛販売価格の指標となる生体牛先物価格は、適時処理への不安からストップ安となった。
 米国の牛肉市況分析企業であるキャトルファックス社によると、同施設の休止に伴う処理頭数の不足分を補うためには、合計で全米処理可能頭数の83%を占めるとされるテキサス州、カンザス州、コロラド州、ネブラスカ州およびアイオワ州の主要処理施設が、1週当たり処理頭数を8.2%、時間に換算して1週当たり稼働時間を3.3時間、増加させる必要があるという。
 現在の米国のパッカーの稼働率(週5日ベース)は100%を超えており、既に一部のパッカーは土曜日の稼働で対応している。したがって、今回操業が停止してしまった施設分の処理頭数を埋め合わせるために、他の施設は土曜日の稼働を増やす必要があるとみられる。ただし、土曜日に稼働するためには、作業員への休日給の支払いや、連邦政府が支払う米国農務省食品安全検査局(USDA/FSIS)の食肉検査官の休日給の支払いも必要となる。さらに、これまで同施設に集荷されていた農場の牛は、今後、より遠方の施設まで輸送する必要があるが、米国ではトラック運転手の不足も深刻化している。関係者の間では、このようなコストアップ要因のほか、トランプ政権の移民規制強化により、平常時でも人手不足に苦しむパッカーが追加処理の人員を確保できるかについての懸念もある。
 こうした事態を受けて全米肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)は14日、USDAをはじめとする関係機関等に、本件による影響が最小限となるよう要請を行った。
 現時点で施設の再稼働時期は明らかにされていないため、今後の米国の牛肉産業全体への影響は未知数であるが、牛肉供給減少への懸念が牛肉市場価格にどの程度影響するのか留意する必要がある。
 
【野田 圭介 令和元年8月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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