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カナダの牛肉需給動向 〜カナダ牛肉産業年次総会より〜

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 8月13〜15日にかけて、アルバータ州カルガリーでカナダ牛肉産業年次総会(Canadian Beef Industry Conference)が開催された。同総会は、カナダ産牛肉のマーケティングを担うカナダビーフ(Canada Beef)をはじめ、肉牛研究評議会(Beef Cattle Research Council)、カナダ牛肉品種協議会(Canadian Beef Breeds Council)、カナダ肉用牛生産者協会(Canadian Cattlemen’s Association)および全国畜牛肥育協会(National Cattle Feeder’s Association)というカナダの5つの牛肉業界団体が中心となって開催する、カナダ牛肉業界における最大のイベントである。
 第4回となる今回は、“Securing Our Future(われわれの未来を確かなものに)”をテーマに、カナダの牛肉産業に関するさまざまなセミナーが開催された他、同会場で開催された展示会には多くの企業や団体がブースを設けていた。このうち、カナダ肉用牛生産者協会の市況分析部門であるCanFaxが行った、最近のカナダ牛肉需給動向解説の概要は以下の通りである。

1 国内外の牛肉需要は堅調

 国内需要は堅調に推移しており、2018年は一人当たり牛肉消費量が前年を上回る中、牛肉小売価格も堅調に推移している。こうしたことから、2000年を100とした場合のカナダ小売牛肉需要指数(注1)は、2018年は約115となった。これは前年をわずかに下回るものの、過去20年間のなかでは高い水準である(図1)。

(注1)物価変動の影響を排除した小売牛肉価格と一人当たり牛肉消費量をもとに算出される指標。
図1 カナダ小売牛肉需要指標の推移
図1 カナダ小売牛肉需要指標の推移
 牛肉輸出に関しては、輸出量においては過去の最高記録を上回る水準にはない。しかし、2013年以降増加傾向で推移している輸出額は、最大輸出先である米国向け輸出の増加や、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)による関税削減効果を背景とする日本向け牛肉輸出の増加から、2019年には過去最高記録である約35億カナダドルに達する見通しである(図2)。ただし、6月以降、中国向け牛肉輸出が停止されてしまっていることから、見通しは今後修正される可能性がある(注2)

(注2)カナダの中国向け牛肉輸出停止については、「畜産の情報 2019年9月号海外 海外畜産物需給動向(豚肉/カナダ)」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000752.html) を参照されたい。
図2 牛肉輸出額の推移
図2 牛肉輸出額の推移
 こうしたことから牛肉生産量は堅調に推移しているが、需要が堅調なことからアルバータ州における生体牛の価格は比較的堅調に推移している。ただし、過去数年間にわたって安定していた繁殖部門の収益は天候不順に伴う飼料コスト高などから減少傾向にあり、肥育部門の収益も2018年春以降マイナスが継続している。

2 牛飼養頭数は引き続き減少

 昨年来の乾燥気候を背景に肥育に仕向けられる肉用未経産牛が増加したことから、西部における繁殖後継牛飼養頭数は歴史的に見ても低い水準で推移している。また、春には経産牛の出荷も多く、と畜頭数は高水準で推移した。こうしたことから、牛群は今年も拡大することはなく、カナダの牛飼養頭数は減少傾向で推移すると見込まれる。
 このように牛飼養頭数が低調に推移する一方で、新たなと畜場の稼働開始などからと畜頭数および牛肉生産量は増加している。牛肉生産量の増加率でみると、最近のカナダは米国を上回っており、カナダの牛肉産業の競争力の高さを裏付けるものであるといえる。
 生体牛の輸入頭数は高い水準で推移しており、2018年のカナダの肥育もと牛輸入頭数は前年比68.9 %増の18万230頭であった。この大半は乳用種の子牛であり、アルバータ州南部で肥育された。こうした背景から、国内牛群が増加せずとも、フィードロットやパッカーの稼働率は高い水準が維持されている。

3 今後の見通し

 天候の好転を受けてアルバータ州の大麦価格は急落しており、米国産トウモロコシとの価格差も縮小傾向にある。このような状況から、経産牛のと畜率も緩和傾向にあるが、一方でリスクとしては、フィードロットの導入意欲が向上することによる肥育もと牛価格の上昇が挙げられる。
【野田 圭介 令和元年9月11日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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