畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2019年 > 農業科学院が豚肉需給予測を発表(中国)

農業科学院が豚肉需給予測を発表(中国)

印刷ページ
 2019年9月11日に実施された「中国トウモロコシ産業大会」において、中国農業科学院の研究員が「中国の養豚の現状と業界発展のすう勢」について発表したので、以下のとおり統計情報を補足しながら内容を紹介する。

※ 農業科学院は政府直属の研究機関である。また、当発表は、当院農業経済発展研究所の王祖力副研究員によるもの。

1 中国の養豚産業の発展状況

 2018年の中国の豚肉生産量は5500万トンであった(図1)。これは世界の豚肉生産量の45.5%を占めており、世界一の豚肉生産国である。
図1 豚肉生産量の推移
 近年の中国養豚の特徴として、まず、急速に大規模化が進んでいることがあげられる。2016年には、1年当たり500頭以上出荷する養豚農家と、同500頭未満の養豚農家の戸数が全体に占める割合がそれぞれ0.6%と99.4%であったが(表)、2018年においては、それぞれの戸数はほぼ同じである。数年前まで小規模農家が圧倒的に多かったことからすると、劇的な変化が生じているといえる。
表 出荷頭数別養豚戸数
 また、繁殖豚1年当たりの健康子豚出産頭数(年間離乳頭数に相当)は、2013年には13.6頭であったものが、2018年は18.0頭まで増加した。肥育豚の出荷時体重についても、2010年には110キログラムであったが、2018年には124キログラムにまで増加した。
 一方、1人当たりの豚肉消費可能量(枝肉ベース供給量÷人口)は、2014年の40キログラムから2018年の38キログラムに減少しているものの、世界の平均消費量は16キログラムであり、中国の消費量は非常に多いことがわかる。
豚肉の輸入量は2017、2018年ともに120万トンであり、消費量の2%程度である。

2 2019年の豚肉生産と価格の動向

 農業農村部によると、2019年7月の豚飼養頭数は、アフリカ豚コレラの影響により、前年同期と比べて32.3%減少となった(図2)。農業科学院の調査によると、飼養頭数が4分の1にまで減少した産地もあり、非常に深刻な状況となっている。
図2 豚飼養頭数の推移
 生体豚出荷価格は、2019年に入って上昇している。2月には1キログラムあたり12元であったが、9月には27元となり、8月末時点で、前年同月と比べて81%上昇した。また、子豚価格は約2倍、豚肉価格は同70%上昇となっている(図3)。特に8月の価格急上昇は、関係者にとって全くの予想外であったとのことである。
図3 豚生体出荷価格等の推移

3 今後の豚肉需給の見込み

 豚肉価格が高騰していることもあり、7月の消費量は前年同月と比べて11%減少した。しかし、このまま消費量が減少したとしても、2019年の豚肉不足分は1000万トンに達する。
 世界の年間豚肉貿易量は800〜1000万トンであり、この全てを中国が輸入したとしても不足分を満たすことはできない。中国は2019年に入ってすでに120万トンの豚肉を輸入しているが、今年中に、世界需給からみて更に80万トンの輸入が可能であると考えている。また、これまでのところ、豚肉消費減少分は家きん肉が代替している。2019年の家きん肉生産量は前年と比べて13〜15%増加しているが、増産可能量は200〜300万トンにとどまる。したがって、輸入肉と家きん肉で補完できる分は300万トン程度になると見込んでおり、まだ700万トンの需給ギャップがある。
これを解決する方法はないが、今後豚肉価格が上昇することにより、さらに消費が抑制されることは確かである。
 現在、豚飼養頭数の減少により養豚業の収益性は急増しており、養豚へのインセンティブは大きくなっている。政府による増頭のための支援も開始されているため、今後、飼養頭数は急速に回復していく可能性はある。しかしながら、アフリカ豚コレラが完全にコントロールできていないこと、豚肉生産能力の回復には一定の時間を要することから、回復が見られるのは2020年の後半とみられる。2020年も豚肉価格は高い水準で推移すると考えられるため、さらなる政策的支援が必要である。
【寺西 梨衣 令和元年10月18日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9534