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米国の大手乳業、相次いで破綻(米国)

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 米国最大手の乳業メーカー「ディーン・フーズ(Dean Foods)社」は、2019年11月12日、米国連邦破産法第11条の適用への申請を行った。同申請は、日本の民事再生法に基づく民事再生手続きに相当する。
 テキサス州ダラスに本社を構えるディーン・フーズ社は、DairyPure、Organic Valley、Land O’Lakesなど50程度の有名ブランドを有する創業94年の老舗企業であるが、数年間に及ぶ財政悪化に伴い、自力による経営継続を断念した結果となった。
 同社の声明によると、破綻に至った背景としては、財務状況の改善、効率化を図ったものの、消費者の牛乳消費量の継続的な減少といった厳しい社会的情勢により、経営状況が改善しなかったとのことである。
 同社は、酪農家、消費者および1万5000人に及ぶ従業員の雇用への影響に鑑み、当面の間、牛乳・乳製品の製造を通常通り継続するとしており、ラボバンク(オランダの農業系金融機関)を含む金融機関から8億5000万ドル(926億5000万円。1ドル=109円)のDPIファイナンス(事業再生融資)を確保したとしている。
 さらに、酪農協系乳業メーカーである「デイリー・ファーマーズ・オブ・アメリカ(Dairy Farmers of America)社」との間で、事実上全ての資産の譲渡に向けて事前協議を行うと述べている。
 
ディーン・フーズ社による声明
http://www.deanfoods.com/newsroom/news/dean-foods-company-initiates-voluntary-reorganization-with-new-financial-support-from-existing-lenders/ 
 
 また、同じく、大手乳業メーカー「ボーデン・デイリー(Borden Dairy)社」も、2020年1月5日、連邦破産法第11条の適用申請を行った。
 ボーデン・デイリー社も同じくテキサス州ダラスに本社を構え、Elsieという牛のキャラクターを使った親しみやすいブランド展開を行っている創業163年の老舗企業であるが、近年、事業継続が不可能な債務超過に陥っていた。
同社の声明によると、破綻に至った背景としては、生乳のコスト上昇と乳業界が直面する市場の変化により、財務状況が悪化したことが主な要因としている。さらに、同法に基づく手続きによって長期的な成功を目指し、現在の債務を減らし、企業価値と収支の改善によって経営再建を図りながら通常の事業活動を継続するとコメントしている。
 なお、日本においても、高級アイスクリームの「レディー・ボーデン」が有名であるが、日本で同ブランドを展開しているロッテ社によると、「ブランドライセンスはボーデン・デイリー社から買い取っており、今後の商品展開、販売には影響がない予定である」とのことであった。
 
ボーデン・デイリー社による声明
https://www.bordendairy.com/announcement/borden-dairy-initiates-voluntary-reorganization-proceedings/  
 
 こうした状況の中、現地報道によると、国際乳食品協会(IDFA)(注)の会長兼CEOのマイケル・ダイクス氏は、「IDFAは業界関係者と協力して、引き続き安全で信頼できる牛乳乳製品を農家から消費者へ供給することを保証する」と強調している。
 さらに、主要な乳業メーカーが厳しい財政問題を抱えているにも関わらず、IDFAは今後の見通しを楽観視しており、「乳製品の全体的な消費量は歴史的な水準であり、米国および世界の乳製品の需要は毎年増加している」と述べるなど、現状の不安定な状況を解消するべくコメントを発出している。
 
(注)IDFAは、全米の乳業メーカーおよび乳製品販売業者などを代表する組織である。本部はワシントンDCに構えている。全米で生産され、流通している飲用乳、チーズ、アイスクリームなどの乳製品の90%がIDFAの会員企業によるものとされている。
グラフ
【藤原琢也 令和2年1月17日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際情報グループ)
Tel:03-3583-4397