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新型コロナウイルスの酪農業に対する影響に関する調査について(中国)

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 中国国家乳牛産業技術体系産業経済研究室(注1)は3月21日、下記のとおり「新型コロナウイルスの中国酪農業に対する影響に関する調査」の結果を発表した。

(注1)国家乳牛産業技術体系産業経済研究室(National Dairy Industry and Technology System)は、2007年10月に中国農業部(現農業農村部)の許可を得て中国農業大学下に設立された、酪農関連産業技術の普及を目的とした団体。

1.調査の概要

(1) 調査期間:2020年2月28日〜3月5日
(2) 調査方式:オンラインアンケート
(3) 調査対象:酪農場
(4) サンプル数:128カ所(地域分布は表1を参照)
表1 対象農場の地域分布

2.調査対象農場の基本情報(表2、3)

・対象農場の2019年の1頭当たりの年間搾乳量の平均は8500キログラム。
・対象農場の居住地区(村落)までの平均距離は2.6キロメートル。
・対象農場の6%の農場の所在地で新型コロナウイルスの感染が確認された。
表2 対象農場の経営形態での分類
表3 対象農場の規模での分類

3.調査結果

(1)防疫期間中に農場が直面した問題

ア.物流面の問題(表4)
・防疫期間中(特に1月下旬)は各地で道路の通行規制が行われ、飼料など資材の輸送が制限されたため、供給不足に陥った。
・供給不足により、飼料など価格が上昇した。
・その他、設備修理などのサービスが受けられず、必要な防護用品も不足した。
表4 物流に関する問題
イ.販売面の問題(表5〜7)
・物流停滞により乳製品市場が停滞していたため、生乳買付拒否と買付制限、買叩きなどの問題が頻繁に発生した。
・16農場で生乳廃棄があり、1農場当たりの廃棄数量は数トンから100トン以上であった。この廃棄量は防疫期間中の生乳生産量の15%〜60%に当たる。
・中小規模の農家で、生乳廃棄などによる売上減が大きい傾向がある。
表5・6 生乳販売に関する問題
表7 生乳価格の値下げ幅
ウ.資金面の問題(表8、9)
・資金繰りの問題を抱える農家が多い。資材などの高騰により負債が増加し債務が返済できない、乳業メーカーからの生乳の売上金の支払いが遅れることにより資材費や光熱費が支払えない、銀行業務の停滞などにより融資が受けられない、などの理由がある。
・2019年末の飼育頭数で計算すれば、農場の1頭当たり損失額は平均で476元(約7430円)であった(注2)。
・大規模農家の平均の損失は334元(約5210円)、中規模農家の平均損失は498元(約7770円)、小規模農家の平均損失は587元(約9160円)と、小規模農家の損失が最も大きい。

(注2)搾乳牛1頭当たりの収益については、「畜産の情報」2019年9月号「中国における酪農・乳製品生産の現状と今後の需給見通し」P.81を参照されたい。
表8・9 資金面に関する問題

(2)新型コロナウイルスの影響への対応措置(表10)

・農場では、搾乳牛の早期乾乳や淘汰の加速、飼料の調整などで生乳生産量を調整した。
・中小規模農場は大規模農場と比較して早期乾乳や更新を選択する割合が高かった。これは、中小規模農場が経営リスクに弱いこと、また、規模が小さいため生産量を調整し易いことによる。
表10 影響への対応措置

(3)対応措置の結果(表11〜13)

・対応措置の結果、多くの農場で生乳生産量が減少した。小規模農家は中・大規模農家より影響を受ける傾向がある。
・早期乾乳と搾乳牛淘汰の結果、生乳生産量は一時的に減少したが、長期的生産能力に対する影響は限定的と考えられる。
表11・12 1日当たり生乳生産量の変化
表13 飼養頭数の変化
【寺西 梨衣 令和2年4月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9534