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砂糖の国際価格が急落、砂糖需給の緩みへの懸念が要因

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最終更新日:2020年4月7日

 砂糖の国際価格は2020年に入り、1年以上に及ぶ低迷期をようやく抜け出し、回復の兆しを見せていた。しかし、この1カ月あまりで約5セント値下がりし、下落率は30%を超えている(図1)。4月1日のニューヨーク粗糖先物相場(5月限)は、1ポンド当たり10.04セントと2018年9月以来の安値水準まで急落した。
図 ニューヨーク相当先物相場
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、世界的に景気や個人消費が冷え込み、砂糖需要が後退するとの懸念が広がったことが要因の一つであるが、それ以上に大きな要因として、原油価格の急落とレアル安の進行が挙げられる。

 サウジアラビアなどで構成される石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの産油国との協調減産の交渉が決裂したことで、3月9日以降、原油価格の代表的な指標の一つ、ニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引されているウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油の先物価格が大幅に下落した(図2)。また、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大による為替市場の混乱を受け、ブラジルの通貨レアルは大きく売られ、ドルに対して過去最安値を更新するまで落ち込んだ(図3)。

 原油価格の下落によって、サトウキビなどを原料とするバイオエタノールに対する価格優位性が低下すれば、石油代替燃料としての引き合いが弱まることから、製糖業者はバイオエタノールを減産し、砂糖の生産へ回帰することが想定される。加えて、レアル安の加速により、世界最大の砂糖生産国ブラジルの製糖業者の輸出意欲を刺激し、世界の砂糖需給が緩む方向に作用するという見方が砂糖の国際価格を押し下げているとみられる。
図2 原油先物相場(WTI)の動き、図3 レアルの対米ドル相場の動き
 なお、2019/20年度(10月〜翌9月)の世界の砂糖需給の見通し(注)は、主要砂糖生産国での減産が見込まれる中、消費量が生産量を上回り、需給は引き締まると予想されている。
 
 他方、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、世界各地で外出制限などの措置が取られているものの、収束の見通しが立たず事態が長期化する恐れも強まっている。こうした状況を踏まえ、外食や行楽などの需要減少によって砂糖消費が大きく冷え込むことが現実味を帯び始めており、製糖業者からは世界の砂糖需給は引き締まるどころか緩むのではないかと不安視する声も挙がっている。

(注)2019年12月時点の予測。詳しくは、「1. 世界の砂糖需給(2019年12月時点予測)『砂糖類・でん粉情報』2020年2月号を参照ください。 https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002110.html

 
【坂上 大樹 令和2年4月7日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4396