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米国農務省による世界のトウモロコシ・大豆需給予測(2020年4月)

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2019/20年度世界のトウモロコシ需給予測、米国が消費量を下方修正

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2020年4月9日、「Grain:World Markets and Trade」において世界のトウモロコシ需給予測値を更新した。
 今回の予測では、2019/20年度の世界のトウモロコシ生産量は、EUが前回より163万トン上方修正された一方、インドネシアが収穫面積の減少や干ばつの長期化による単収の減少により下方修正され、世界計で102万トン上方修正され、前年度比0.9%減の11億1302万トンと予測されている(表1)。前年度より増加するのは、中国、ロシアなど。減少するのは米国、メキシコなどである。
 輸出入量のうち輸出量は、輸出のペースが速いEUや1〜3月の輸出が増加したアルゼンチンなどが前回より上方修正された一方、ロシアなどが下方修正され、世界計で60万トン上方修正され、前年度比1.3%増の1億7411万トンと予測されている。
 輸入量は、飼料用小麦が少なくその代替としてトウモロコシの輸入が増加した韓国のほかトルコなどが前回より上方修正されている。
 消費量は、EUが前回より100万トン上方修正された一方、米国が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響でガソリン、エタノール需要が減少したことからエタノール向けなど521万トン下方修正され、世界計で468万トン下方修正され、前年度比1.2%減の11億3079万トンと予測されている。
 期末在庫は、中国、米国などで在庫の取り崩しが進み、世界計で前回より583万トン上方修正され、前年度比5.5%減の3億317万トンと予測されている。
表1

2019/20年度世界の大豆需給予測、アルゼンチン、ブラジルが生産量を下方修正

 USDA/FASは2020年4月9日、「Oilseeds:World Markets and Trade」を公表し、世界の大豆需給予測値を更新した。
 今回の予測では、2019/20年度の世界の大豆生産量は、アルゼンチンが2月後半から3月にかけての乾燥気象や北部の洪水の影響、また、ブラジルがリオグランデドスル州で1月および2月に発生した干ばつの影響を受け、世界計で前回より368万トン下方修正され、前年度比5.7%減の3億3808万トンと予測されている(表2)。
 輸出量は、ブラジルが通貨レアルの下落による米国産との価格優位性や収穫期を迎え供給が潤沢なことから中国向けを中心に3月の輸出が増加したため、150万トン上方修正された一方、米国などが下方修正された。世界計では38万トン下方修正され、前年度比2.2%増の1億5150万トンと予測されている。 
 輸入量は、中国やイランなどで上方修正され、世界計では前年度比4.7%増の1億5147万トンと予測されている。
 消費量(搾油仕向け)は、大豆かす生産が減少したアルゼンチンが前回に続き下方修正され、世界計で61万トン下方修正されたものの、前年度比1.7%増の3億284万トンと予測されている。
 期末在庫は、米国や中国がそれぞれ152万トン、100トン上方修正された一方、ブラジルが350万トン下方修正された。世界計では198万トン下方修正され、前年度比9.3%減の1億46万トンと予測されている。
表2

2019/20年度米国のトウモロコシ需給予測、エタノール向け消費量を下方修正

 米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)は2020年4月9日、2019/20年度(9月〜翌8月)の米国の主要農作物需給見通しを公表した。このうち、米国のトウモロコシ需給見通しは次の通りである。
 生産量は、前回予測と修正なく、単収の減少などにより前年度比4.5%減の136億9200万ブッシェル(3億4778万トン(注))と予測されている(表3)。
 消費量は、飼料等向け利用が12月〜翌2月の四半期に増加し前回より上方修正される一方、COVID−19の影響によりガソリン、エタノール需要が減少したことに伴いエタノール生産が前例のない減少となったことから食品・種子・その他工業向けが前回より下方修正され、全体で2億500万ブッシェル(521万トン)下方修正された。全体では、前年度比0.7%減の121億4000万ブッシェル(3億836万トン)と予測されている。
 輸出量は、前回と変わらず、同16.5%減の17億2500万ブッシェル(4382万トン)と予測されている。
 期末在庫は、輸入量がわずかに下方修正された一方、消費量がそれを上回る量で下方修正されたことから、2億ブッシェル(508万トン)上方修正された。全体では、前年度比5.8%減の20億9200万ブッシェル(5314万トン)と前回より減少率が9.0ポイント縮小すると予測されている。
 また、生産者平均販売価格は3月、COVID−19の影響でエタノール需要が落ち込み取引価格が下落したことから、1ブッシェル当たり0.20米ドル(1キログラム当たり0.9円:1米ドル=110円)下方修正された。全体では、前年度比0.3%安の3.60米ドル(1キログラム当たり15.6円)と予測されている。

(注)1ブッシェルを25.4キログラムとしてALICが換算。
表3

2020年度米国の主要穀物作付意向面積、トウモロコシ、大豆とも前年より増加

 米国農務省農業統計局(USDA/NASS)は2020年3月31日、2020年の米国の主要穀物作付意向面積を公表した。このうち、トウモロコシおよび大豆の作付意向面積は次の通りである(表4)。
 トウモロコシは、前年比8.1%増の9699万エーカー(3925万ヘクタール)と2012年以降で最大となった。2019年は、初春の記録的な洪水やコーンベルトの一部地域での記録的な降雨により、トウモロコシや大豆を作付けできない地域が拡大した。このため、2020年は全米48の作付州のうち38州で作付面積の維持または拡大の意向を示した。
 作付意向面積が最大のアイオワ州やイリノイ州などで前年の作付面積を上回っている。また、前年作付けのできない地域が大きかったサウスダコタ州オハイオ州などでは、前年を大幅に上回っている。
 大豆は、同9.7%増の8351万エーカー(3380万ヘクタール)となった。2019年は、記録的な洪水や降雨に加え、中国の報復関税や春期の作付けの遅れが作付面積に影響を及ぼした。このため2020年は、全米29州の作付州のうち22州で作付面積の維持または拡大の意向を示した。
 作付意向面積が最大のイリノイ州やアイオワ州などで前年の作付面積を上回っている。また、前年作付けのできない地域が大きかったサウスダコタ州、ミシガン州なども、前年を大幅に上回っている。
表4
【井田 俊二 令和2年4月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 国際調査グループ (担当:井田 俊二)
Tel:03-3583-9532