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ブラジルの製糖業者が政府に支援を求める、現状では操業停止の恐れも

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最終更新日:2020年5月1日

 ニューヨーク粗糖先物価格(5月限)は、原油価格の代表的な指標の一つとなっているウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油の先物価格の急落に引きずられるように、2月後半から下落の一途をたどっている(図)(注)。原油の先物価格が史上初めてマイナス価格で取引を終えた4月20日以降は一段と値を下げ、4月27日は1ポンド当たり9.21セントと2007年9月以来12年7カ月ぶりの安値を付けた。28日も安値圏で推移し、一時同9.05セントと9セント割れが目前に迫る場面があった。実質的に取引の中心となっている7月限でも、終値は10セントを割り込んでいる。

(注)一般に、原油価格が下落すると、石油の代替燃料であるバイオエタノールの需要は低下する。バイオエタノールの需要が低下すると、その原料作物(サトウキビ、てん菜、トウモロコシ、キャッサバなど)のバイオエタノール生産への仕向けが減るため、それらから生産される食品(サトウキビの場合は砂糖)の生産・供給が増えることが想定される。その度合いが大きければ、需給の緩みにつながることから、価格を押し下げる方向に作用する。
図 ニューヨーク粗糖先物価格
 こうした状況に、世界最大の砂糖生産国であり、米国に次いで第2位のバイオエタノール生産国でもあるブラジルは窮地に立たされている。

 一部の国や地域では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のために行われていた外出制限などの措置を緩和する動きも出ているが、感染リスクは依然残っており、外食や行楽機会の減少に伴い砂糖の消費は世界的に伸び悩むだろうとの見方が強い。また、バイオエタノールは原油の先物価格の急落で軽油やガソリンに対する価格優位性が薄れる中、航空機の大幅な減便、企業活動の停滞などにより燃料需要そのものが減退したことで、販売環境は日に日に厳しさを増している。

 同国の製糖業者はこれまで、砂糖の需要が落ち込めばバイオエタノールの生産を増やし、バイオエタノールの需要が落ち込めば砂糖の生産を増やすといった対応で企業全体の収益を確保してきた。しかし、今回はどちらの生産に舵を切っても、供給過剰を誘発する恐れがあり、製糖業者は難しい判断を迫られている。このため、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)は4月16日、ブラジルサトウキビ生産者協会(ORPLANA)など関係団体と連名でジャイル・ボルソナーロ・ブラジル大統領あてに書簡を送り、▽バイオエタノールの販売に対して課せられている連邦税の一時的な免除▽製品在庫などの動産を担保とした融資制度の実施▽軽油税、ガソリン税の増税−などを要請したことを明らかにした。UNICAは、「現在の粗糖や原油の価格水準が当面続けば、製糖企業の大半が資金難に陥り、砂糖・バイオエタノール産業に携わる数百万人もの人々の雇用に深刻な影響が及びかねない。一刻も早く措置してもらいたい」と訴えている。

 また、UNICAは28日、現地メディアを通じて「政府の支援を早急に受けられなければ、5月中旬ごろには多くの製糖工場が操業停止に追い込まれるだろう」と現状に対し強い危機感を示した。
【坂上 大樹 令和2年5月1日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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