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米国農務省による世界のトウモロコシ・大豆需給予測(2020年5月)

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2020/21年度の世界トウモロコシ需給、増産を背景に流通量の拡大を見込む

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2020年5月12日、「Grain:World Markets and Trade」において、2020/21年度の世界のトウモロコシ需給見通しとして第1回目の予測を公表した。
 これによると、2020/21年度の世界のトウモロコシ生産量は、最大の生産国である米国が前年度の減少から大幅に回復するのをはじめ、ブラジル、ウクライナが過去最大の生産となる。また、メキシコおよびカナダなどが前年度を上回り、アルゼンチンも過去最大に近い生産量となることから、全体では前年度比6.5%増の11億8686万トンと見込まれている(表1)。
 輸出量は、生産量の増加を背景として米国およびウクライナの輸出可能数量が前年度を上回っており、全体の供給量の増加に伴い飼料用小麦との価格差が拡大しトウモロコシの価格競争力が高まったことなどから、同4.5%増の1億8264万トンと見込まれている。一方、輸入量は、全般的に飼料用小麦に比べ価格競争力の高いトウモロコシへの需要がシフトするとし、特に中国向け輸出として養豚用需要の強いEU、養鶏用需要の強いエジプト、養鶏、養豚および牛用需要の強いメキシコなどで増加が見込まれている。
 消費量は、飼料等向け、食品・種子・その他工業向けとも価格水準が低く、米国、中国、EUおよびアルゼンチンなどで前年度を上回ることから、同3.7%増の11億6196万トンと見込まれている。この結果、最近4カ年で初めて全体の生産量が消費量を上回ることとなった。
 期末在庫は、増産を背景に米国やブラジルが前年度を上回り、中国で在庫の取り崩しが進むものの、同7.9%増の3億3962万トンとかなりの程度の増加が見込まれている。
表1

2020/21年度の世界の大豆需給、中国の需要回復が大きく影響

 USDA/FASが2020年5月12日、「Oilseeds:World Markets and Trade」において、2020/21年度の世界の大豆需給予測値を公表した。
 これによると、2020/21年度の世界の大豆生産量は、米国において作付面積と単収が回復すること、また、ブラジルにおいて作付面積が過去最高となることから前年度比7.9%増の3億6276万トンと見込まれている(表2)。なお、両国の生産量は、世界全体の約3分の2を占め、生産増加数量では4分の3以上を占める。
 輸出量は、最大の輸出国であるブラジルにおいて2020年後半に供給がタイトになること、アルゼンチンにおいて米国およびブラジルとの競合が高まることにより前年度を下回るものの、米国において中国からの需要増加により前年度を上回ることから、全体では同5.2%増の1億6193万トンと見込まれている。 
 輸入量は、世界の約6割を占める中国においてASF(アフリカ豚熱)からの回復により豚飼養頭数が増加し前年度をやや上回ることから、同3.1%増の1億5802万トンと見込まれている。
 消費量(搾油仕向け)は、最大の消費国である中国が前述のとおり豚飼養頭数の増加によりかなり増加するほか、米国など他の主要国も増加することから、同3.6%増の3億1280万トンと見込まれている。なお、中国の消費量、輸入量の増加は、それぞれ世界全体の消費量増加の約60%、輸入量増加の約85%を占める。
 期末在庫は、世界全体の供給量が記録的水準に増加するものの、中国の需要回復がそれ以上になることから、同1.9%減の9839万トンと1億トンを下回り、前年度からさらに減少すると見込まれている。
表2

2020/21年度の米国トウモロコシ生産量、前年度比17.1%増と大幅増

 米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)は2020年5月12日、2020/21年度(9月〜翌8月)の米国の主要農作物需給見通しを公表した。このうち、米国のトウモロコシ需給見通しは、次の通りである。
 生産量は、収穫面積が前年度比10.1%増と前年度をかなりの程度上回るとともに単収が同6.4%増と回復することから、同17.1%増の159億9500万ブッシェル(4億627万トン(注))と大幅な増加が見込まれている(表3)。このため、期首在庫量は前年度よりやや少ないものの、総供給量は、同13.7 %増の181億1800万ブッシェル(4億6020万トン(注))と高水準になると見込まれている。
 消費量は、飼料等向けが生産量の増加に伴い飼料用小麦と比べ価格優位性が高まること、また、エタノール向けが新型コロナウイルス感染症による需要の落ち込みから回復することを見据え、同4.9%増の126億5000万ブッシェル(3億2131万トン)と見込まれている。
 輸出量は、世界の貿易量の増加を背景に同21.1%増の21億5000万ブッシェル(5461万トン(注))と大幅な増加が見込まれている。この結果、世界の貿易量に占める米国の割合は上昇するものの、アルゼンチン、ブラジルおよびウクライナとの競合が高まることから、依然2015/16〜2019/20年度の平均より低い状況となる。
 期末在庫は、総供給量が総消費量を上回ることから、同58.2%増の33億1800万ブッシェル(8428万トン(注))と大幅に増加し、1987/88年度以来の在庫量になると見込まれている。このため、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は、22.4%と1992/93年度以来の高い水準となる。
 また、生産者平均販売価格は、供給量の増加に伴い需給が緩和することから、1ブッシェル当たり3.20米ドル(1キログラム当たり13.9円:1米ドル=110円)と0.40米ドル(同1.7円)低下すると見込まれている。
 なお、米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2020年5月18日に公表した穀物の生育状況に関するレポートによると、5月17日時点の主要18州のトウモロコシの作付は80%が実施されており、2019年同時期(44%)、直近5カ年平均値(71%)をいずれも上回っている。

(注)1ブッシェルを25.4キログラムとしてALICが換算。
表3
【井田 俊二 令和2年5月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 国際調査グループ (担当:井田 俊二)
Tel:03-3583-9532