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コロナ禍の影響を受ける外食・食品小売業界(カナダ)

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外食動向

 カナダ統計局(Statistics Canada)が公表している「Food Services and Drinking Places」によると、2019年の外食売上高は、好景気や人口増加などを背景に、前年比3.5%増の744億カナダドル(5兆9551億円:1カナダドル=80円)と過去最高を更新した(図1)。
図1
 2019年の外食売上高を業態別に見ると、「レストラン」(注1)、「ファストフード店」(注2)は、5年前の2014年と比べて、それぞれ30.8%増、31.2%増と大幅に増加し、全体に占める割合はともに44%(2014年と同水準)となった。また、「ファストフード店」は2015年以降、わずかながら「レストラン」を上回って推移している(図2)。

(注1)主に顧客が着席した状態で食事を注文し、飲食物が座席まで運ばれ、食後に支払いをする事業所。
(注2)主に顧客がカウンターや電話などで食事を注文または商品を選択し、食前に支払いをする事業所。飲食物は、事業所内での飲食または持ち帰りのために引き取られるか、顧客に配達される。
図2
 2020年3月以降、カナダでは他国と同様、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で外出制限、飲食店の営業停止の動きが広がっており、外食売上高は全ての業態で減少している(図3)。本調査によると、事業者の41%が4月の1カ月間完全休業しており、 同年4月の売上高は、外食全体で22億9500万カナダドル(1836億円)と前年同月比61.4%減となった。
 4月の外食売上高を業態別に見ると、「レストラン」は、持ち帰りや配達を中心としたサービスに切り替えた店舗もあったものの、半数近くが完全休業したことから、前年同月比78.1%減となった。「ファストフード店」は、ショッピングモールの営業停止などに伴う完全休業が2割弱に留まったことに加え、営業を継続した店舗での持ち帰りや配達に下支えされたことから、同40.6%減と他業態と比べると売上高の落ち込みが小さかった。「学校給食、事業所給食、仕出し屋など」は、提供先の休校、休業に加え、多くのイベントが取り止めとなり、約半数が完全休業したことから、同74.7%減となった。「酒場(ナイトクラブ、バーなど)」は、持ち帰りや配達を中心としたサービスに切り替えることが難しく、約8割が完全休業したことから、同90.5%減と最も大きな影響を受けた(図3)。
図3

小売動向

 カナダ統計局(Statistics Canada)が公表している「Retail trade sales by industry」によると、2019年の小売業全体(非食品を含む)の売上高は、外食と同様、好景気や人口増加などを背景に、前年比1.6%増の6155億カナダドル(49兆2407億円)、うち「食品」(食品・飲料販売店全体)は同2.2%増の1283億カナダドル(10兆2673億円)といずれも過去最高を更新した(図4)。
図4
 2019年の小売業の売上高を業態別に見ると、「食料品店(スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど)」(以下「食料品店」という)は、5年前の2014年と比べて12.7%増加し、全体に占める割合は75%(2014年比1ポイント減)となった。また、「専門食品店(生鮮食品市場など)」(以下「専門食品店」という)は同30.5%増、「アルコール飲料販売店」は同19.3%増となった(図5)。
図5
 2020年4月の小売業全体(非食品を含む)の売上高を見ると、非食品部門が不調であったことから、342億7600万カナダドル(2兆7421億円)と前年同月比32.8%減となり、3月(同10.5%減)に続き2カ月連続で前年同月を大きく下回った。本調査によると、4月に一時休業した小売店は全体の約3分の1、平均休業期間は8営業日となっている一方、食品・飲料販売店全体(以下「食品全体」という)で4月に一時休業した小売店は、1割程度に留まっている。
 4月の小売業の売上高を業態別に見ると、「食品全体」は、外出制限などによる家庭での食事機会の増加により、前年同月比12.4%増となった。また3月には、「食品全体」に含まれるすべての業態が前年同月を上回ったが、4月には「食料品店」は同17.9%増と大幅に増加した一方、「専門食品店」は同4.8%減、「アルコール飲料販売店」は同4.6%減と前年同月をやや下回り、業態別の差が見られた(図6)。
図6
【河村 侑紀 令和2年7月15日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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