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農作物の生産見通しを発表(豪州 2020年9月)

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 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は9月8日、2020/21年度(7月〜翌6月)夏作物の生産予測を発表するととともに、冬作物の生産予測の見直しを行った(注)。

(注)豪州の夏作物は、10月〜翌年1月に播種、3月〜6月に収穫を行う。冬作物は、3月〜6月に播種、10月〜翌年1月に収穫を行う。また、本発表の段階では、2020/21年度夏作物の播種前であり、2020/21年度冬作物の収穫前である(図)。
図

【夏作物】2020/21年度の主要作物生産量、大幅に回復する見込み

 これから播種を迎える2020/21年度夏作物の生産予測は次のとおりである。
 作付面積は、主産地であるクイーンズランド(QLD)州およびニューサウスウェールズ(NSW)州において、降雨により生産環境が改善していることから104万7000ヘクタール(前年度比193.9%増)となり、干ばつにより記録的な低水準となった前年度から2.9倍程度に回復すると見込んでいる(表1)。
 生産量は、作付面積が回復することに加え、単収が平年並みとなることから、316万3000トン(同259.0%増)と3.6倍、前々年度に比べ1.4倍程度にまで回復すると見込むものの、これは、2019/20年度までの10年間の平均値(379万3000トン)を16.6%下回る水準となる。
 主要品目別にみると、夏作物で最も生産量の多いソルガムは、春を通じて気候が良好であると見込まれること、ソルガム価格が良好であることのほか、春作物生産地域における休閑地の利用可能面積が大きいことから、作付面積が59万5000ヘクタール(同316.4%増)となることに加え、単収が平年並みに回復するとして、生産量が172万8000トン(同479.9%増)と5.8倍に回復すると見込んでいる。これは、2019/20年度までの10年間の平均値(153万8900トン)を12.3%上回る。
 次に多い綿実は、かんがい用水の供給量が増加することや降雨により生産環境が改善することから、作付面積が23万9000ヘクタール(同300.1%増)となり、生産量が64万5000トン(同240.9%増)と3.4倍に回復すると見込んでいる。なお、綿実の作付面積は、ソルガムのほか米などの作付状況に影響を受けるとみられる。
表1

【冬作物】2020/21年度生産量、NSW州を中心に前回より上方修正

 これから収穫を迎える2020/21年度冬作物の見直し後の生産見込みは次のとおりである。
 作付面積は、NSW州のほかQLD州などにおいて、降雨により生産環境が改善していることから2256万2000ヘクタール(前年度比22.8%増)と大幅に増加し、単収も大幅に増加すると見込んでいる(表2)。
 この結果、生産量は、前回(2020年6月)より339万9000トン上方修正され、4791万9000トン(同63.6%増)と、干ばつの影響で不作となった直近2年度と比較して大幅に増加すると見込んでいる。これは、2019/20年度までの10年間の平均値(4001万4000トン)を19.8%上回る水準となる。
表2
 主要品目別にみると、最大の生産量の小麦は、単収の増加により前回より223万6000トン上方修正され、2891万トン(同90.6%増)と大幅な増加を見込んでいる。これは、2019/20年度までの10年間の平均値(2370万1000トン)を22.0%上回る。干ばつの状況から回復したNSW州は、作付面積が前年度の2倍、単収が平年を大幅に上回ることから1026万トン(同390.9%増)と4.9倍となり最大の生産地となる。また、西オーストラリア(WA)州は、ほとんどの地域が生産環境に恵まれるため、作付面積が前年度より5.6%増加するとともに単収が平年を大幅に上回ることから860万トン(同48.3%増)となる。
 大麦は、干ばつの状況から回復したNSW州およびQLD州を中心に前回より65万8000トン上方修正され、1121万7000トン(同24.6%増)と大幅な増加を見込んでいる。これは、2019/20年度までの10年間の平均値(910万8000トン)を23.2%上回る水準となる。最大の生産地域であるWA州は、一部の生産地域において収益性の高い小麦への転作がみられたため作付面積が前年度より8.6%減少したものの、単収が増加することから生産量が395万トン(同2.6%増)と前年度をわずかに上回ると見込んでいる。また、NSW州は、小麦と同様に作付面積および単収が増加し、251万8000トン(同261.7%増)と前年度を大幅に上回ると見込んでいる。
 地域別生産量をみると、最大の生産地であるWA州は、2020年6〜7月の降水量が平均以下となり生育の遅れがみられたものの、8月に広い地域で降雨に恵まれたため平年以上の単収となり、1568万3000トン(同35.0%増)と大幅に増加すると見込んでいる(表3)。ただし、一部生産地域では、8月時点の土壌水分が平均以下のため、春の降雨が不可欠な状況にあるとしている。
 また、直近2年度に干ばつの影響で生産量が大きく落ち込んだNSW州は、前回より小麦を中心に274万9000トン上方修正され、1480万8000トン(同343.5%増)と4.4倍に増加し豪州全体の回復に大きく寄与すると見込んでいる。これは、播種・生育期に当たる3〜8月に、冬作物生産地域のほぼ全域において平均以上の降雨があり、生産環境が最適であったためである。同州の生産量は、4年ぶりに1000万トン台を回復し、2019/20年度までの10年間の平均値(995万4000トン)を48.8%上回る水準となる。
 なお、WA州およびNSW州以外の州においても前年を上回る生産量を見込んでいる。
表3
【井田 俊二 令和2年9月15日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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